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るろうに剣心 10巻まで

和月伸宏 (ジャンプ・コミックス)

まあまあ(10点)
2007年8月26日
ひっちぃ

明治維新を経て侍がいなくなりつつある日本で、新たに台頭してきた金儲けや権力にしか目がない勢力や、新たな時代に取り残され見捨てられた勢力を前に、自分の信念に従って生きようとする主人公・緋村剣心と彼が出会っていく人々の遭遇する事件を描いた作品。

私はこの作品と雑誌連載中に出会っていた。しかし早々に見切りをつけて読み飛ばしていた。その後、この作品が大人気となっていることを知ったが、そのときは既に雑誌が手元になく、かといって単行本で読み直すほどのものでもなかったので、まあいいかと思って流した。

時は流れてこのマンガ作品をアニメ化したものの一つが海外でかなり高い評価を得ていることを知り、そんなにすごい作品なのかと気になってきたので、今回改めて単行本を一巻から読んでみることにした。

週刊少年ジャンプの王道を行くような作品である。なぜ当時読み飛ばしたのか不思議なほど普通に読めた。だがこれといって新味のないストーリーやキャラクターは期待はずれだった。

主人公の剣心は普段はフヌケな性格をしていて、気の強いヒロインの尻に敷かれている。しかしひとたび本気を出すと凄腕の暗殺者だった頃の彼が戻ってくる。こういうキャラは私も好きなはずなのだが、私はどうしても剣心が好きになれなかった。剣心の哲学が意外に複雑で分かりにくい。だから私には彼が身勝手で説教臭く感じる。

おまけページで作者が創作の舞台裏を語っている。なかなか興味深い内容で良かった。ただ、ここまで語っちゃっていいのかと思う内容が多かった。少年誌にどんな作品を作っていくのか、ということを臆面もなく語るには、少なくともこの場所ほど不適切な場所はないだろう。それも手伝ってか、特に剣心の弟分の少年のキャラとストーリーが終始作り物臭く感じて楽しめなかった。

さらにアニメスタッフへの原作者としてのメッセージは読むに堪えなかった。私もマンガ作品のアニメ化に対してはかなり言いたいことを持っているほうだが、原作者がここまで言ってしまって大丈夫なんだろうか。単純に文句を言っているのではなく、ちゃんと理由を述べたり、出来がいい時は賞賛したりしているので、批評として間違ってはいないと思うのだが、原作者という立場が一番の問題ではないだろうか。

とまあネガティブなことを書いてきたが、作品としてはそこそこよく出来ているし、作者の欄外メッセージもサービス精神だと思えば稀有で価値を見出すことが出来る。

私はこの人の性格と作品があまり好きではないけれども、一般には大ヒットした作品だし、いまでも十分な評価を得ている作品を描いているということを最後に述べておく。

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