コンピュータソフト
ロールプレイングゲーム
バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海
ナムコ モノリスソフト トライクレッシェンド
まあまあ(10点)
2007年10月27日
森で倒れていたところを村人に助けられた少年・カラスは、再び森へ向かってそこで謎の少女と出会い、森の奥で太古の昔の伝説で知られる邪神の一部を目覚めさせてしまう。邪神の力を利用しようとする帝国の手を逃れながら、帝国に先んじて邪神の力の源を渡さないようにするが…。独特の趣のあるファンタジー世界を舞台に繰り広げられるカード指向コンピュータロールプレイングゲーム。
発売元はナムコだが、開発したのはのちに任天堂に買収されたモノリスソフトとトライクレッシェンドが行っている。
舞台となる世界には浮島と呼ばれる大陸が空に浮かんでおり、人々の背中には心の翼というものが生えている。でも別に空が飛べるわけじゃない。この世界には海がないので、昔の伝説として海がかつて存在したことが人々の思慕と共に語り継がれている。実のところこれらの世界設定は物語と大して関連がないので単に世界観を彩っているだけである。
何でもかんでもカードを使ったシステムが採用されている。まず戦闘がカード式になっている。攻撃するのもカードなら、防御するのもカード。プレイヤーが操るキャラクターが何人かいて、キャラクターごとに使えるカードと使えないカードがある。カードには番号がついていて、番号を特定の規則にしたがって揃えて使うと効果が高くなる。
面白いことに戦闘中に特定の組み合わせでカードを使うと新たなカードが生まれる。生肉とファイアストームを順に使うとビーフジャーキーになったりする。こうやってHP回復用カードをどんどん作っていって戦闘を有利に運ぶことが出来る。しかしカードの中には時間と共に変化していくものがあり、ビーフジャーキーも時間がたつと腐った肉になってしまう。カードの持ち物欄に腐った食べ物類がどんどん増えていくのはちょっと鬱だ。捨てればいいんだけど。元はHP回復用だった食べ物のカードが腐って攻撃用になったりする。
だから戦闘は飽きない。いやさすがに最後の方は飽きたけど、余裕な戦闘でも常にカード合成のチャンスがあるので頭を使う。カードには相反する属性があって、たとえば火のカードと水のカードを同じターンで使うと効果が相殺してしまう。カードは手札を使っていくと順次デッキ(山札)から補充されていく。デッキは持っているカードから決まった枚数だけ選んでおく。典型的なトレーディングカードゲームの仕組みを踏襲している。とはいってもマナを場に出さないと重いカードが使えないということはなく、その代わり一枚目からは出せないカードとか五枚目以降じゃないと出せないカードなんてのがあって一応制限がある。じゃあデッキ構築には頭を使うかというとそうでもなくて、割と単純に強いカードを集めていけばそのまま戦いが有利になるので、複雑なシステムは何もない。攻撃用と防御用と回復用のカードの比率を考えるぐらいか。
イベントで使用するアイテムもカードになっている。マグナスというこの世界の力で物体をなんでもカードにしまっておける。フィールドでたとえばりんごやミルクを見つけるとそれをカードにして持っていくかどうかダイアログが出て訊いてくるので好きに持っていくことが出来る。このカードも時間がたつと変わったり無くなったりする。こういう仕組みは面白いのだけど、時間の縛りがあるのでちょっとプレッシャーが掛かって私は集中できなかった。
グラフィックスが素晴らしい。定点カメラでの静止画のマップは3DCGと手書きのぬくもりが融合している。これが微妙にライティングとか風とかでアニメーションする。背景だけでなく人物画にも力が入っている。主人公らがちょっとやぼったいけど独自性があって悪くない。各種3Dエフェクトも美しく、炎が立ち上ったり氷が砕けたり光が舞ったりと、この分野で独走していたスクウェアの特にファイナルファンタジーシリーズと比べて勝っている面が多いように思った。
音楽は思ったより使い回しが多いので同じ曲がところどころで掛かるが総じて良い雰囲気である。高揚する盛り上がりシーンの曲、異国情緒たっぷりの曲、のんびりした幻想的な曲など。耳に残るキャッチーな曲はなかったが、ゲームを彩る良い曲が多いと思った。
というわけでこの作品はロールプレイングゲームの大作としてとてもよく作りこまれていると思う。脚本を除いては。
プレイヤーは主人公カラス少年の心の中に宿る精霊ということになっている。だから少年が画面に向かって語りかけてくる。精霊の名前はプレイヤーの名を入力するようになっていて、私も自分の名前を入れてプレイした。この趣向は後半に入って物語が転換するところやエンディングで生きてきてあっと驚かされる。それはいいのだが、この趣向のせいで序盤があっさりしすぎていていまいち物語に入っていけなかった。邪神のバラバラの体を捜すという目的があるのだが、後半の大転換のための前振りのせいで中途半端すぎる。
登場人物はどれもそれなりに魅力的ではあるのだが、みんないつのまにか仲間になったという感じで必然性が薄い。ヒロインのシェラという少女との出会いはまあお約束だからいいだろう。漁師ギバリも途中の障害を乗り越えるために協力してくれた縁ということでまずまずである。しかし帝国の外交官のリュードでシラケた。残り二人との出会いもなにこれって感じ。主人公たちと世界とのつながりも距離感が掴みにくい。ジャコモら帝国の追っ手も色々説明不足な上に勝手に盛り上がっているようにしか思えない。すべてが分かったあとでならなんとなく分かるのだが、最初に物語を追っているときはなにがなにやら分からない。策士、策に溺れるといったところではないだろうか。それにこう言ってしまうと身もフタもないが、すべての仕掛けが分かってもそのストーリー自体が中途半端に作られた質の低いもので、立派なのは趣向だけなのだ。特に特殊部隊関連の泣きを狙った小話が腹立つほど出来が悪い。正直何度も放り出したくなった。
それでもなんとかクリアまでたどり着けたのは、戦闘がそれなりに楽しかったからだろう。私がそもそもこのゲームに手を出そうと思ったきっかけは、2ちゃんねるのまとめサイトで戦闘システムが面白いRPGを紹介するスレで一番に挙げられていたからだ。その評判はしっかり当たっていた。
脚本がマズいことを除けばこの作品はRPG大作であると言っていいと思う。おまけ的な要素も色々あって、星座集めとか、特にクズマーン一家の人々を集めるサブクエストは趣があって良かった(最後笑える)。総プレイ時間は私の場合六十時間で、その時間中まあちょっとお使い的に退屈なときもあったがおおむね普通にプレイできた。あ、戦闘が多分ほかのゲームと比べて長いんだろうな。
いまからこのゲームをプレイする価値があるかというと、人によると思う。物語を楽しみたい人は当然手を出さないほうがいいと思う。ゲームとして楽しみたい人とは相性がいいだろう。トータルで見ればちょっと微妙。いまだとWiiの影響でゲームキューブのソフトはほとんど売っていないので、店頭で見かけることは困難だろう。私は色々探し回ったあげく、秋葉原の高架付近のゲームソフト屋の人がほとんど上がってこないフロアで新品で1,580円で発見して大喜びで買った。私の個人的な思いとしては、カードを使ったシステムが好きなのと、3Dの特殊効果がとてもうまくてキレイで参考になったのとで、プレイして一応良かったとは思っている。
発売元はナムコだが、開発したのはのちに任天堂に買収されたモノリスソフトとトライクレッシェンドが行っている。
舞台となる世界には浮島と呼ばれる大陸が空に浮かんでおり、人々の背中には心の翼というものが生えている。でも別に空が飛べるわけじゃない。この世界には海がないので、昔の伝説として海がかつて存在したことが人々の思慕と共に語り継がれている。実のところこれらの世界設定は物語と大して関連がないので単に世界観を彩っているだけである。
何でもかんでもカードを使ったシステムが採用されている。まず戦闘がカード式になっている。攻撃するのもカードなら、防御するのもカード。プレイヤーが操るキャラクターが何人かいて、キャラクターごとに使えるカードと使えないカードがある。カードには番号がついていて、番号を特定の規則にしたがって揃えて使うと効果が高くなる。
面白いことに戦闘中に特定の組み合わせでカードを使うと新たなカードが生まれる。生肉とファイアストームを順に使うとビーフジャーキーになったりする。こうやってHP回復用カードをどんどん作っていって戦闘を有利に運ぶことが出来る。しかしカードの中には時間と共に変化していくものがあり、ビーフジャーキーも時間がたつと腐った肉になってしまう。カードの持ち物欄に腐った食べ物類がどんどん増えていくのはちょっと鬱だ。捨てればいいんだけど。元はHP回復用だった食べ物のカードが腐って攻撃用になったりする。
だから戦闘は飽きない。いやさすがに最後の方は飽きたけど、余裕な戦闘でも常にカード合成のチャンスがあるので頭を使う。カードには相反する属性があって、たとえば火のカードと水のカードを同じターンで使うと効果が相殺してしまう。カードは手札を使っていくと順次デッキ(山札)から補充されていく。デッキは持っているカードから決まった枚数だけ選んでおく。典型的なトレーディングカードゲームの仕組みを踏襲している。とはいってもマナを場に出さないと重いカードが使えないということはなく、その代わり一枚目からは出せないカードとか五枚目以降じゃないと出せないカードなんてのがあって一応制限がある。じゃあデッキ構築には頭を使うかというとそうでもなくて、割と単純に強いカードを集めていけばそのまま戦いが有利になるので、複雑なシステムは何もない。攻撃用と防御用と回復用のカードの比率を考えるぐらいか。
イベントで使用するアイテムもカードになっている。マグナスというこの世界の力で物体をなんでもカードにしまっておける。フィールドでたとえばりんごやミルクを見つけるとそれをカードにして持っていくかどうかダイアログが出て訊いてくるので好きに持っていくことが出来る。このカードも時間がたつと変わったり無くなったりする。こういう仕組みは面白いのだけど、時間の縛りがあるのでちょっとプレッシャーが掛かって私は集中できなかった。
グラフィックスが素晴らしい。定点カメラでの静止画のマップは3DCGと手書きのぬくもりが融合している。これが微妙にライティングとか風とかでアニメーションする。背景だけでなく人物画にも力が入っている。主人公らがちょっとやぼったいけど独自性があって悪くない。各種3Dエフェクトも美しく、炎が立ち上ったり氷が砕けたり光が舞ったりと、この分野で独走していたスクウェアの特にファイナルファンタジーシリーズと比べて勝っている面が多いように思った。
音楽は思ったより使い回しが多いので同じ曲がところどころで掛かるが総じて良い雰囲気である。高揚する盛り上がりシーンの曲、異国情緒たっぷりの曲、のんびりした幻想的な曲など。耳に残るキャッチーな曲はなかったが、ゲームを彩る良い曲が多いと思った。
というわけでこの作品はロールプレイングゲームの大作としてとてもよく作りこまれていると思う。脚本を除いては。
プレイヤーは主人公カラス少年の心の中に宿る精霊ということになっている。だから少年が画面に向かって語りかけてくる。精霊の名前はプレイヤーの名を入力するようになっていて、私も自分の名前を入れてプレイした。この趣向は後半に入って物語が転換するところやエンディングで生きてきてあっと驚かされる。それはいいのだが、この趣向のせいで序盤があっさりしすぎていていまいち物語に入っていけなかった。邪神のバラバラの体を捜すという目的があるのだが、後半の大転換のための前振りのせいで中途半端すぎる。
登場人物はどれもそれなりに魅力的ではあるのだが、みんないつのまにか仲間になったという感じで必然性が薄い。ヒロインのシェラという少女との出会いはまあお約束だからいいだろう。漁師ギバリも途中の障害を乗り越えるために協力してくれた縁ということでまずまずである。しかし帝国の外交官のリュードでシラケた。残り二人との出会いもなにこれって感じ。主人公たちと世界とのつながりも距離感が掴みにくい。ジャコモら帝国の追っ手も色々説明不足な上に勝手に盛り上がっているようにしか思えない。すべてが分かったあとでならなんとなく分かるのだが、最初に物語を追っているときはなにがなにやら分からない。策士、策に溺れるといったところではないだろうか。それにこう言ってしまうと身もフタもないが、すべての仕掛けが分かってもそのストーリー自体が中途半端に作られた質の低いもので、立派なのは趣向だけなのだ。特に特殊部隊関連の泣きを狙った小話が腹立つほど出来が悪い。正直何度も放り出したくなった。
それでもなんとかクリアまでたどり着けたのは、戦闘がそれなりに楽しかったからだろう。私がそもそもこのゲームに手を出そうと思ったきっかけは、2ちゃんねるのまとめサイトで戦闘システムが面白いRPGを紹介するスレで一番に挙げられていたからだ。その評判はしっかり当たっていた。
脚本がマズいことを除けばこの作品はRPG大作であると言っていいと思う。おまけ的な要素も色々あって、星座集めとか、特にクズマーン一家の人々を集めるサブクエストは趣があって良かった(最後笑える)。総プレイ時間は私の場合六十時間で、その時間中まあちょっとお使い的に退屈なときもあったがおおむね普通にプレイできた。あ、戦闘が多分ほかのゲームと比べて長いんだろうな。
いまからこのゲームをプレイする価値があるかというと、人によると思う。物語を楽しみたい人は当然手を出さないほうがいいと思う。ゲームとして楽しみたい人とは相性がいいだろう。トータルで見ればちょっと微妙。いまだとWiiの影響でゲームキューブのソフトはほとんど売っていないので、店頭で見かけることは困難だろう。私は色々探し回ったあげく、秋葉原の高架付近のゲームソフト屋の人がほとんど上がってこないフロアで新品で1,580円で発見して大喜びで買った。私の個人的な思いとしては、カードを使ったシステムが好きなのと、3Dの特殊効果がとてもうまくてキレイで参考になったのとで、プレイして一応良かったとは思っている。