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フォーチュン・クエスト7,8 隠された海図

深沢美潮 (角川スニーカー文庫)

いまいち(-10点)
2008年2月25日
ひっちぃ

RPGのパロディのようなファンタジー世界を舞台に、初心者パーティのちょっと間の抜けた精一杯の冒険を描いたシリーズで、今回は海がテーマとなっている。重要な書類の運搬の仕事を頼まれた一行は、海路でそれを運ぼうとするが、彼らのあとを謎の一味が追いかけて襲ってくる。

例によって本シリーズを再読中の私だが、この作品の内容はほとんど覚えていなかった。あまり印象に残らなかったんだなあ。読み返してみてやっぱりいまいちに感じた。

一言で言えば甘っちょろい。一行を追いかけてくる一味もドジでマヌケだし、途中で出てくる海賊船長のキャラ設定が生ぬるい。途中で奇妙な小動物が仲間に入り、初読の私はこういうペット風のしゃべるキャラが好きだったのだが、いま読んでみるとどこが気に入っていたのかよくわからなかった。ディビーの成長も分かりにくいし。

やっぱこのシリーズは再読してはいけなかったのかなあ。たぶん子供が好きそうな趣向が特にこの巻には詰め込まれていたのだろう。

良いところもある。主人公の少女パステルがいよいよ真剣にマリーナに引け目を感じてしまうところや、普段は軽口ばかり叩く盗賊トラップが本気になってパステルの行方を心配するところ。人間関係が変わりはじめる最初(二番目?)のフリがこの巻に描かれている。

その後、この妙な恋愛感情(?)が原因となってパーティの雲行きが怪しくなってきて、それがまた緊張感があっていい展開になるのだが、作者はそれを「暗い」と言って読者に申し訳なく思っているようなことをあとがきで書いていた。まあそれはのちの巻のときに言うことにする。

本シリーズは商業的にはこの巻でいったん終わりになり、なぜか初期の電撃文庫に新シリーズとして移籍する。当時の状況とかは私にはよく分からない。新シリーズ最初の巻のあとがきには色々あったが前と同じスタッフが集まれたと書いてあったので何かあったのだろう。と同時に外伝的に過去のエピソードを描くLシリーズに枝分かれする。

ともかく、この巻で最初のシリーズが締めくくられる必然性はそれほどなく、一応区切りはつけてあるが読者が納得しそうにない状態で終わってしまう。

ぐちぐち言ってしまったが、大人になって読んだ私が悪いのであって、この作品は子供向けの特にRPGが好きな人にとっては面白いと思う。なんかトゲがある言い方になってしまうな。書いていてやっぱりちょっと恥ずかしいのだと思う。こういう作品を好きだった自分が。いや、そりゃ、こんな楽しい仲間たちと一緒に都合のいい冒険をしたいっていう思いは今でもあるのだけど。

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