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新フォーチュン・クエスト3 偽りの王女

深沢美潮 (電撃文庫)

傑作(30点)
2008年3月2日
ひっちぃ

ファンタジーにそんなものがあるのかという消費者金融に騙されて多大な借金を背負わされたキットンを助けるために、一行は逆に相手を騙し返そうと、詐欺師の少女マリーナとその相棒アンドラスと仲間たちの助けを借りて、近くで行方不明になった小国の王女の名を騙って逆にその消費者金融のボスから金を出させようとする話。

作者があとがきで解説なしにコンゲームという言葉を使っているが、これは騙し合って金を奪うジャンルのこと。きっと作者はミステリー大好きなんだろうな。ちょっと調べてみたらConfidence Gameの略みたいで、ジェフリー・アーチャーの「百万ドルを取り返せ!」なんかで一般的になったらしい。この本、人から借りたけど結局読まなかったなあ。海外のミステリーは冗長すぎてどうも好きになれない。

とてもよく出来たストーリーで、読んでいてうまいなあと思う。それに主人公パステルが自分と同世代の少女マリーナの大人びた詐欺師としての振る舞いに感動する描写があり、私もマリーナに魅力を感じた。ただ、演技偏重で、相手のまぬけさに依存し、絵に描いたような話を信じさせるところには多少無理を感じる。それでも面白いのは、ところどころで誰かがヘマをしてバレそうになって緊張感があるからだろうし、最後に主人公パステルの成長が絡むところはかなり盛り上がる。素晴らしい。

それともう一つの要素として、前回に引き続いて出ている痩身の戦士ギア・リンゼイが、一人で傭兵をするまえに組んでいたパーティのことを主人公パステルに話して聞かせるところ。死を出してちょっと卑怯だけどウルッとくる。一つの悲しいエピソードとしてだけでなく、舞台世界の危険さ、団結の大切さ尊さを伝えていて重要だと思う。バランスの悪い主人公たち一行にとって一方的に都合のいい物語になっているのをいくらか中和してくれている。

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