フィクション活字
ファンタジー
新フォーチュン・クエスト4,5 真実の王女
深沢美潮 (電撃文庫)
傑作(30点)
2008年3月8日
悪徳消費者金融会社に騙されたキットンを助けるために偶然近くで失踪していた王女の名を騙って騙し返してお金を取り返した一行だったが、今度はなんとその本物の王女と接触することになる。彼女に手助けを頼まれた一行は、追っ手をしりぞけながら彼女の故国を目指す。人気和製パロディファンタジー小説。
名もなき冒険者たちだった一行が、なんだかんだでついに小国ながらも本物の王女を助ける冒険をする。とはいっても彼らにはまだそんな実感はない。これまでもホワイトドラゴンやらブラックドラゴンと仲良くなったりしてきたのだから、特別な一行なのだろう。だんだんこの頃から一行のリーダーで戦士のクレイが美形だとか、主人公の詩人パステルが一人称の叙述トリックでごまかされてきたが実は魅力的な女の子なのだということなんかが明らかになっていく。うーん。まあこういうのも悪くはないのだけど、こうである必要はなかったと思うなぁ。ちょっといやらしくなってきているように思えてならない。
この巻の目玉はなんと三つある。まず主人公パステルが自分の非力さに悩み、冒険者をやめようかと考えるところ。次に前々回から登場していた魔法戦士ギア・リンゼイが主人公パステルに露骨に好意をぶつけてきて、それに対してパステルが色々悩みながら自分の結論を出そうとするところ。もう一つは、これまでなんだかんだと一行を助けてくれていた詐欺師の少女マリーナが、自分の本当の気持ちをパステルにぶつけるところ。
あとがきで作者が書いているように、この巻で終わる一連の三部作(2〜5巻)ではパステルの心の成長が描かれている。このさりげない描写がとてもいい感じだと思う。中途半端とは言わないでほしい。冒険者を続けていこうとする気持ちの整理はそんなにキッチリはついていないし、魔法戦士ギア・リンゼイへの対処方法はまだまだ未熟だったし、マリーナとの友情だって結局彼女の気持ちにきっちり応えたとは言いがたいのだが、この中途半端さが17歳という設定で実に実にリアルだと私は思う。
ストーリー展開のほうは、前半は追跡を逃れる旅路で、後半は王家の塔を攻略するダンジョン探検となっている。異国風の剣士ダンシング・シミターの妙なコミカルさや、大臣の息子の中途半端にスカしたり真面目だったりする描写がいまいちに思えた。だが終盤になって大きく盛り上がってまとまって気持ちいい。
マリーナの想いに感動した。人の持つ傷ってのは美しいなぁ。こんなになんでもできて明るい大人びたキャラが、実は心の奥底では複雑な感情を抱えていたということに泣けた。安易に死と結びつけた暗い過去や恋愛と結びつけたウソくさい感情が量産されている昨今、人と人との関係の中で生まれた不幸が
作品から迫ってきてゾクゾクした。と言っても一人称の限界もあってそんなに詳しくは描写されていないのだけど。想像力で補って欲しい。
表題にもなっている王女の描写がウソくさくなければもっと良かったのになぁ。
名もなき冒険者たちだった一行が、なんだかんだでついに小国ながらも本物の王女を助ける冒険をする。とはいっても彼らにはまだそんな実感はない。これまでもホワイトドラゴンやらブラックドラゴンと仲良くなったりしてきたのだから、特別な一行なのだろう。だんだんこの頃から一行のリーダーで戦士のクレイが美形だとか、主人公の詩人パステルが一人称の叙述トリックでごまかされてきたが実は魅力的な女の子なのだということなんかが明らかになっていく。うーん。まあこういうのも悪くはないのだけど、こうである必要はなかったと思うなぁ。ちょっといやらしくなってきているように思えてならない。
この巻の目玉はなんと三つある。まず主人公パステルが自分の非力さに悩み、冒険者をやめようかと考えるところ。次に前々回から登場していた魔法戦士ギア・リンゼイが主人公パステルに露骨に好意をぶつけてきて、それに対してパステルが色々悩みながら自分の結論を出そうとするところ。もう一つは、これまでなんだかんだと一行を助けてくれていた詐欺師の少女マリーナが、自分の本当の気持ちをパステルにぶつけるところ。
あとがきで作者が書いているように、この巻で終わる一連の三部作(2〜5巻)ではパステルの心の成長が描かれている。このさりげない描写がとてもいい感じだと思う。中途半端とは言わないでほしい。冒険者を続けていこうとする気持ちの整理はそんなにキッチリはついていないし、魔法戦士ギア・リンゼイへの対処方法はまだまだ未熟だったし、マリーナとの友情だって結局彼女の気持ちにきっちり応えたとは言いがたいのだが、この中途半端さが17歳という設定で実に実にリアルだと私は思う。
ストーリー展開のほうは、前半は追跡を逃れる旅路で、後半は王家の塔を攻略するダンジョン探検となっている。異国風の剣士ダンシング・シミターの妙なコミカルさや、大臣の息子の中途半端にスカしたり真面目だったりする描写がいまいちに思えた。だが終盤になって大きく盛り上がってまとまって気持ちいい。
マリーナの想いに感動した。人の持つ傷ってのは美しいなぁ。こんなになんでもできて明るい大人びたキャラが、実は心の奥底では複雑な感情を抱えていたということに泣けた。安易に死と結びつけた暗い過去や恋愛と結びつけたウソくさい感情が量産されている昨今、人と人との関係の中で生まれた不幸が
作品から迫ってきてゾクゾクした。と言っても一人称の限界もあってそんなに詳しくは描写されていないのだけど。想像力で補って欲しい。
表題にもなっている王女の描写がウソくさくなければもっと良かったのになぁ。