マンガ
エッセイマンガ
うちの妻ってどうでしょう? 1巻
福満しげゆき (双葉社)
傑作(30点)
2008年7月29日
売れない低学歴の漫画家が行動原理のよく分からない自分の妻の生態を中心に描いたエッセイマンガ。
なんかのっけからひどい紹介をしてしまったが、作者は自分で自分の生活や性格や経歴を客観視して淡々と描いている。おおげさだが天性のエッセイストかも。
この作品の何が面白いって、四コママンガっぽく同じ大きさのコマが並んでいるが、起承転結どころか四コマですらなく、1〜数コマ分使って大小いくつかの小話が唐突に始まって突然終わるのがウケる。
たとえばこんな感じ。
――最近妻より先に寝ることが多い。
――朝起きてテレビをつけると
――高い確率でテレビ東京になっている(…まただ)
「12チャンネルが好きな妻」おわり
淡々と出来事を説明してからテキトーに題をつけて話を切り上げるセンスが素晴らしい。これだけなのに何度も声を出して笑ってしまった。
「何か食べている…でもそれが何かわからない妻」おわり
おい!と思わず突っ込みたくなる。
この妻というのは、吾妻ひでおが帯に書いているようにまさに野生動物という形容がぴったりくる。天然といえば天然なのだが、おっとりしているかと思ったら妙なところで怒ったり傷ついたり、かと思ったらコロリと忘れて違うことをしていたりする。妙なところにこだわりを見せたり。
こんな相方がいたら作家だったら喜んで面白おかしく紹介するところだろうが、この作者は極めて落ち着いて描いている。面白いものを紹介するときって紹介する人間が先に笑ったら興ざめすることがあるけど、そういうのが微塵も感じられないところがいい。
それでいて妙に鋭い考察をしていたりする。女は成長すると胸が大きくなってバカになる、と映画の中で誰かが言っているのを聞いてなるほどとうなずき、女はそうじゃなきゃバカ男の誘いに警戒するので繁殖の妨げになると納得してみせた上で、自分も若い頃モテたかったなあと卑下して熱くなってみせる。「僕の思い込み」シリーズも冗談ながら半分本気だろうなあ。
絵に味がある。自画像がいい感じに冴えない男になっている。妻もなんかリアルな存在感で絶妙な具合でかわいさを感じられる。
結構ナンセンスギャグ寄りなので万人に勧めるのは難しいだろうが、描かれている内容は誰にでも分かる普通の生活や感覚に近いのに、分かる人には分かる強力な爆発力があると思う。
なんかのっけからひどい紹介をしてしまったが、作者は自分で自分の生活や性格や経歴を客観視して淡々と描いている。おおげさだが天性のエッセイストかも。
この作品の何が面白いって、四コママンガっぽく同じ大きさのコマが並んでいるが、起承転結どころか四コマですらなく、1〜数コマ分使って大小いくつかの小話が唐突に始まって突然終わるのがウケる。
たとえばこんな感じ。
――最近妻より先に寝ることが多い。
――朝起きてテレビをつけると
――高い確率でテレビ東京になっている(…まただ)
「12チャンネルが好きな妻」おわり
淡々と出来事を説明してからテキトーに題をつけて話を切り上げるセンスが素晴らしい。これだけなのに何度も声を出して笑ってしまった。
「何か食べている…でもそれが何かわからない妻」おわり
おい!と思わず突っ込みたくなる。
この妻というのは、吾妻ひでおが帯に書いているようにまさに野生動物という形容がぴったりくる。天然といえば天然なのだが、おっとりしているかと思ったら妙なところで怒ったり傷ついたり、かと思ったらコロリと忘れて違うことをしていたりする。妙なところにこだわりを見せたり。
こんな相方がいたら作家だったら喜んで面白おかしく紹介するところだろうが、この作者は極めて落ち着いて描いている。面白いものを紹介するときって紹介する人間が先に笑ったら興ざめすることがあるけど、そういうのが微塵も感じられないところがいい。
それでいて妙に鋭い考察をしていたりする。女は成長すると胸が大きくなってバカになる、と映画の中で誰かが言っているのを聞いてなるほどとうなずき、女はそうじゃなきゃバカ男の誘いに警戒するので繁殖の妨げになると納得してみせた上で、自分も若い頃モテたかったなあと卑下して熱くなってみせる。「僕の思い込み」シリーズも冗談ながら半分本気だろうなあ。
絵に味がある。自画像がいい感じに冴えない男になっている。妻もなんかリアルな存在感で絶妙な具合でかわいさを感じられる。
結構ナンセンスギャグ寄りなので万人に勧めるのは難しいだろうが、描かれている内容は誰にでも分かる普通の生活や感覚に近いのに、分かる人には分かる強力な爆発力があると思う。