マンガ
エッセイマンガ
僕の小規模な生活 1巻
福満しげゆき (講談社)
最高(50点)
2008年10月8日
小心者でひねているが正直で思ったことをあけすけに書いてしまう駆け出しの若くて気の弱い漫画家が、自分の妻のことや出版社との仕事のやりとりなんかをストレートにおずおずと大胆に描いたエッセイマンガ。青林工藝社「僕の小規模な失敗」とやや重なるが続きになっている。
どうやら青林工藝社やその他のマイナーな出版社での作者の仕事に目を付けた編集者が講談社にいたようで、いきなりメジャーなマンガ週刊誌モーニングで始まったのがこの連載のようだ。
モーニングといえば青木雄二「ナニワ金融道」なんかが連載されていたようにメジャーなマンガ雑誌の中では絵よりも内容重視の方向性に特徴がある。
読者アンケートでは嫌いランキングの上位に入っていると実にあけすけに作者と編集者とのやりとりが紹介されているが、嫌いランキングのほうでもランクインしているだけ逆に受け入れられているということになるらしい。
「僕の小規模な失敗」と比べると、コマがおおぶりになり、内容が妻と出版社ネタの二本柱に大きくまとまって読みやすくなっている。もちろん作者のしみったれているけど鋭い観察眼も随所で光る。一言で言えば洗練された。
妻のほうは女性的な性格の典型例に独自の個性が加わってそれをねちっこくリアルに描写している。怒りだすと手がつけられなくなるとか、いつまでもいつまでも怒っていることもあれば、ころっと機嫌がよくなったり、泣いて手がつけられなくなったりする。ものすごく頼もしく思う場面があったり。こう言ってしまうと大げさになるかもしれないが、女というものをここまでリアルに媚びずにありのままに描いた作品というのはほかにないんじゃないだろうか。
出版社のほうはなんと誤解から仕事がバッティングしたときの編集者たちとのやりとりを、綱引きとか怒りや謝罪まで包み隠さず描いている。掲載誌の編集者の人間性や結構シャレにならない仕事上のやりとりまで描いていて、しかもそんなことまでネタにしていいことになっているという編集者の方針それ自体をも描いている。度量の大きい編集部だとアピールする狙いもあるらしい。あざとさもあるがよくぞここまで認めたものだと感心する。そのとおりにしてしまう作者も作者である。あとお金がらみの話も書いている。
作者の作品だけでなく境遇までも洗練された分、人生の闇の中でもがいているといった要素は少なくなってきて、胸をえぐるような切迫感とそれに伴う感動といったものはだいぶ薄れてしまったが、作者はそんな新たなステージでもこれまでと変わらず戦い続けていていて(見えない敵と?w)、これまでとはまた違った面白さと人生の発見がある。前作を楽しめた人なら本作も絶対そのまま手にとるべきだろう。
ところで作者の単行本が初めて店頭に並んだとき、地元の本屋には置いていなかったので都心まで出てきたという描写があったが、P.57の絵を見るとこの本屋は吉祥寺のブックス・ルーエじゃないだろうか。作者はこの少し前に吉祥寺に住んでいたはずだし、アーケードはサンロードっぽいし、入ってすぐ右手に階段があるところや、やたらマンガやライトノベルなんかのサブカルチャー系の品揃えが豊富で力を入れている点が合致する。とは言うものの、この本屋は作者の福満しげゆきのコーナーを作っていただけで、自分の店がまえが描写されているといった宣伝は無かったので違うのかもしれない。
どうやら青林工藝社やその他のマイナーな出版社での作者の仕事に目を付けた編集者が講談社にいたようで、いきなりメジャーなマンガ週刊誌モーニングで始まったのがこの連載のようだ。
モーニングといえば青木雄二「ナニワ金融道」なんかが連載されていたようにメジャーなマンガ雑誌の中では絵よりも内容重視の方向性に特徴がある。
読者アンケートでは嫌いランキングの上位に入っていると実にあけすけに作者と編集者とのやりとりが紹介されているが、嫌いランキングのほうでもランクインしているだけ逆に受け入れられているということになるらしい。
「僕の小規模な失敗」と比べると、コマがおおぶりになり、内容が妻と出版社ネタの二本柱に大きくまとまって読みやすくなっている。もちろん作者のしみったれているけど鋭い観察眼も随所で光る。一言で言えば洗練された。
妻のほうは女性的な性格の典型例に独自の個性が加わってそれをねちっこくリアルに描写している。怒りだすと手がつけられなくなるとか、いつまでもいつまでも怒っていることもあれば、ころっと機嫌がよくなったり、泣いて手がつけられなくなったりする。ものすごく頼もしく思う場面があったり。こう言ってしまうと大げさになるかもしれないが、女というものをここまでリアルに媚びずにありのままに描いた作品というのはほかにないんじゃないだろうか。
出版社のほうはなんと誤解から仕事がバッティングしたときの編集者たちとのやりとりを、綱引きとか怒りや謝罪まで包み隠さず描いている。掲載誌の編集者の人間性や結構シャレにならない仕事上のやりとりまで描いていて、しかもそんなことまでネタにしていいことになっているという編集者の方針それ自体をも描いている。度量の大きい編集部だとアピールする狙いもあるらしい。あざとさもあるがよくぞここまで認めたものだと感心する。そのとおりにしてしまう作者も作者である。あとお金がらみの話も書いている。
作者の作品だけでなく境遇までも洗練された分、人生の闇の中でもがいているといった要素は少なくなってきて、胸をえぐるような切迫感とそれに伴う感動といったものはだいぶ薄れてしまったが、作者はそんな新たなステージでもこれまでと変わらず戦い続けていていて(見えない敵と?w)、これまでとはまた違った面白さと人生の発見がある。前作を楽しめた人なら本作も絶対そのまま手にとるべきだろう。
ところで作者の単行本が初めて店頭に並んだとき、地元の本屋には置いていなかったので都心まで出てきたという描写があったが、P.57の絵を見るとこの本屋は吉祥寺のブックス・ルーエじゃないだろうか。作者はこの少し前に吉祥寺に住んでいたはずだし、アーケードはサンロードっぽいし、入ってすぐ右手に階段があるところや、やたらマンガやライトノベルなんかのサブカルチャー系の品揃えが豊富で力を入れている点が合致する。とは言うものの、この本屋は作者の福満しげゆきのコーナーを作っていただけで、自分の店がまえが描写されているといった宣伝は無かったので違うのかもしれない。