コンピュータソフト
ストラテジーゲーム
Empire Earth (日本語版)
Stainless Steel Studio, SIERRA, CAPCOM
まあまあ(10点)
2002年5月8日
Microsoft から発売されて大ヒットしたリアルタイム戦略ゲーム Age of Empires シリーズ。そのリードデザイナーが独立して作ったのがこの Empire Earth である。古代から現代そして未来での文明間の戦争をやるゲームである。
私はまず大きく失望した。というのは、Empire Earth つまり地球全体を背景にしたゲームであるはずなのに、出てくるものがことごとくヨーロッパと北米なのである。特に、このゲームにはヒーローと呼ばれる実在の人物をもとにした特殊ユニットが出てくるのだが、ナポレオン、クロムウェル、ビスマルク、などなど、ほとんどヨーロッパ系である。かろうじてギルガメッシュなどが古代のヒーローとなっている。また、空想上の未来世界の英雄はロシア出身の人物になっており、誰の目にも明らかな現代のアジアと中国の優位を完全に無視している。
Age of Empires シリーズでは、インドこそなかったが、ペルシア、中国、日本、それになんと拡張パックでは朝鮮まであった。付属シナリオには、秀吉の朝鮮出兵を朝鮮の立場から阻止するというものがあった。ひょっとすると、リードデザイナーは本当はヨーロッパ主体で作りたかったのだろうが、北米とヨーロッパにつぐ市場を持つ日本、それにネットワークゲームの市場の大きい韓国のユーザを取り込みたいという営業上の戦略により、あまり乗り気ではなかったが入れておいたということだったのだろうか。それを今回はようやく自分で会社を作って好き勝手にできると羽根を伸ばしたのだろうか。
Age of Empires シリーズには後継を争うソフトが二つあり、一つがこの Empire Earth で、もう一つがリードデザイナーの古巣 Ensemble Studio が Microsoft の元で出す予定の Age of Mythology であるとされる。このもう一方の Age of Mythology も、ギリシア神話やその周辺の地中海世界やヨーロッパのみを扱うゲームのようなので、ヨーロッパ回帰が非常に強い。
なぜこういうことになってしまうのだろうか。答えは一つしかない。いまだにヨーロッパや北米では、ヨーロッパの歴史を中心とした歴史を世界史として子供たちに教えているからだろう。彼らは、いかにイスラムが自分たちの文明に寄与したのかを隠そうとし、東アジアや南アジアはあってないがごとく扱い、世界はヨーロッパの中で完結して発展してきたかのように教えているのではないだろうか。
ゲーム自体の話に入ろう。
今回はグラフィックスがすべて 3D になっている。とはいっても、視点をグルグル変えて楽しむことはできず、マウスのホイールなどを操作して拡大縮小をするだけである。また、拡大するとゲームにならないので、大抵の場合遠景だけしか使わないので、3D の利点はといえばかろうじて画面の上部と下部で遠近感を感じられるくらいだろうか。また、沢山のユニットが画面上に並ぶことを考慮してか、ユニット一つ一つがとても少ないポリゴンで作られてる。キャンペーンで遊んでいるときに、歴史上の人物が少ないポリゴンなのに拡大して表示されると、非常にまぬけである。
日本語版は、バイオハザードシリーズやロックマン、鬼武者、ビートマニアなどでおなじみのカプコンがやったらしい。オリジナル版が 2001年11月に発売されたというのに、なぜ日本語版が延期の末 2002年4月になってようやく発売になったのかよく分からない。この 5カ月のあいだに一体なにをやったというのだろうか。日本語版で変わったことといえば、画面上の説明や文章が日本語に変わっただけ。日本語の文字は大きいので、文字を拡大するためにレイアウトをいじったりしているうちに収拾がつかなくなったのかもしれない。それ以外にまったく理由が思いつかない。ネット上ではこの間、英語版を手に入れてプレイしはじめたグループがあり、彼らはそれなりに楽しんだのだろう。しかし日本語版を 4月まで待って手に入れた人たちは、もう完全に先行されていることもあり、いったいどのくらいの人が遊んでいるのか分からない。検索エンジンに最初にあらわれた、日本最大のファンサイトを名乗るサイトの、なんとトップページが Not Found だというのだからあきれた。
ゲームの中身は、だいぶ大味になっているように見える。私は、一人プレイでのキャンペーンを半分攻略しただけなので、まだランダムマップも対戦もやったことがないのだが、ゲームのセンスが光る部分を感じることはできなかった。Age of Empires シリーズの煩雑さが緩和されてシンプルになったのは評価できるのだが、先史時代からナノテク自体まで沢山の区切りがあって間延びした感がある。あらゆる時代が用意されているのはいいが、一つのゲームで一つのシステムで扱う意義が見いだせない。Civilization という名作ゲームもやはり先史時代から宇宙開発競争までを一気に扱っているのだが、この Empire Earth の場合は時代の進化によるゲームの奥行きがほとんど感じられない。
この Empire Earth に限らず、リアルタイム戦略ゲームと呼ばれるタイプのゲームは、リアルタイムなのでどうしてもアクションゲーム化してしまうという欠点がある。戦略と名乗っていても、二カ所三カ所に拠点を作って部隊を展開するとゲームにならないのである。いま私はドイツキャンペーンをやっていて、第一次世界大戦を戦っているのだが、敵の臼砲が砲弾を打ってきたら、自軍の歩兵たちをわざわざ操作して弾を回避させなければダメなのである。それをおこたると、ドーンという着弾の音と共に歩兵たちの体力ゲージが真っ赤になり、全員瀕死の状態になる。それに気づかずに第二撃をくらってしまうと、兵士たちが無残な断末魔の声をあげて 8人ぐらい一気に死んでしまう。これのどこが戦略ゲームなのだろうか。戦術ゲームと言うのも苦しいくらいである。一応フォーメーションを設定できるので、砲弾が来ることが分かっていたら散開させればいいのだが、自律して動いてくれるわけではない。
色々なユニットが出てくるが、結局はジャンケンのような有利不利と時代進化による強弱しかない。飛行機は目新しかったが、戦闘機を生産するのを忘れると知らないうちに制空権をとられたりするので、面倒なだけのような気がしなくもない。
プレイヤーの手をわずらわせない戦略ゲームが出ないものかと思う。
なお、Age of Kings ではコンピュータの思考 AI を作れたが、この Empire Earth では見たところ簡単なパラメータいじりくらいしかできないようである。
このゲームは将棋盤だと思えばいい。あるいは雀卓と牌だと思えばいい。人間同士の対戦は多分それなりに面白いだろう。
私はまず大きく失望した。というのは、Empire Earth つまり地球全体を背景にしたゲームであるはずなのに、出てくるものがことごとくヨーロッパと北米なのである。特に、このゲームにはヒーローと呼ばれる実在の人物をもとにした特殊ユニットが出てくるのだが、ナポレオン、クロムウェル、ビスマルク、などなど、ほとんどヨーロッパ系である。かろうじてギルガメッシュなどが古代のヒーローとなっている。また、空想上の未来世界の英雄はロシア出身の人物になっており、誰の目にも明らかな現代のアジアと中国の優位を完全に無視している。
Age of Empires シリーズでは、インドこそなかったが、ペルシア、中国、日本、それになんと拡張パックでは朝鮮まであった。付属シナリオには、秀吉の朝鮮出兵を朝鮮の立場から阻止するというものがあった。ひょっとすると、リードデザイナーは本当はヨーロッパ主体で作りたかったのだろうが、北米とヨーロッパにつぐ市場を持つ日本、それにネットワークゲームの市場の大きい韓国のユーザを取り込みたいという営業上の戦略により、あまり乗り気ではなかったが入れておいたということだったのだろうか。それを今回はようやく自分で会社を作って好き勝手にできると羽根を伸ばしたのだろうか。
Age of Empires シリーズには後継を争うソフトが二つあり、一つがこの Empire Earth で、もう一つがリードデザイナーの古巣 Ensemble Studio が Microsoft の元で出す予定の Age of Mythology であるとされる。このもう一方の Age of Mythology も、ギリシア神話やその周辺の地中海世界やヨーロッパのみを扱うゲームのようなので、ヨーロッパ回帰が非常に強い。
なぜこういうことになってしまうのだろうか。答えは一つしかない。いまだにヨーロッパや北米では、ヨーロッパの歴史を中心とした歴史を世界史として子供たちに教えているからだろう。彼らは、いかにイスラムが自分たちの文明に寄与したのかを隠そうとし、東アジアや南アジアはあってないがごとく扱い、世界はヨーロッパの中で完結して発展してきたかのように教えているのではないだろうか。
ゲーム自体の話に入ろう。
今回はグラフィックスがすべて 3D になっている。とはいっても、視点をグルグル変えて楽しむことはできず、マウスのホイールなどを操作して拡大縮小をするだけである。また、拡大するとゲームにならないので、大抵の場合遠景だけしか使わないので、3D の利点はといえばかろうじて画面の上部と下部で遠近感を感じられるくらいだろうか。また、沢山のユニットが画面上に並ぶことを考慮してか、ユニット一つ一つがとても少ないポリゴンで作られてる。キャンペーンで遊んでいるときに、歴史上の人物が少ないポリゴンなのに拡大して表示されると、非常にまぬけである。
日本語版は、バイオハザードシリーズやロックマン、鬼武者、ビートマニアなどでおなじみのカプコンがやったらしい。オリジナル版が 2001年11月に発売されたというのに、なぜ日本語版が延期の末 2002年4月になってようやく発売になったのかよく分からない。この 5カ月のあいだに一体なにをやったというのだろうか。日本語版で変わったことといえば、画面上の説明や文章が日本語に変わっただけ。日本語の文字は大きいので、文字を拡大するためにレイアウトをいじったりしているうちに収拾がつかなくなったのかもしれない。それ以外にまったく理由が思いつかない。ネット上ではこの間、英語版を手に入れてプレイしはじめたグループがあり、彼らはそれなりに楽しんだのだろう。しかし日本語版を 4月まで待って手に入れた人たちは、もう完全に先行されていることもあり、いったいどのくらいの人が遊んでいるのか分からない。検索エンジンに最初にあらわれた、日本最大のファンサイトを名乗るサイトの、なんとトップページが Not Found だというのだからあきれた。
ゲームの中身は、だいぶ大味になっているように見える。私は、一人プレイでのキャンペーンを半分攻略しただけなので、まだランダムマップも対戦もやったことがないのだが、ゲームのセンスが光る部分を感じることはできなかった。Age of Empires シリーズの煩雑さが緩和されてシンプルになったのは評価できるのだが、先史時代からナノテク自体まで沢山の区切りがあって間延びした感がある。あらゆる時代が用意されているのはいいが、一つのゲームで一つのシステムで扱う意義が見いだせない。Civilization という名作ゲームもやはり先史時代から宇宙開発競争までを一気に扱っているのだが、この Empire Earth の場合は時代の進化によるゲームの奥行きがほとんど感じられない。
この Empire Earth に限らず、リアルタイム戦略ゲームと呼ばれるタイプのゲームは、リアルタイムなのでどうしてもアクションゲーム化してしまうという欠点がある。戦略と名乗っていても、二カ所三カ所に拠点を作って部隊を展開するとゲームにならないのである。いま私はドイツキャンペーンをやっていて、第一次世界大戦を戦っているのだが、敵の臼砲が砲弾を打ってきたら、自軍の歩兵たちをわざわざ操作して弾を回避させなければダメなのである。それをおこたると、ドーンという着弾の音と共に歩兵たちの体力ゲージが真っ赤になり、全員瀕死の状態になる。それに気づかずに第二撃をくらってしまうと、兵士たちが無残な断末魔の声をあげて 8人ぐらい一気に死んでしまう。これのどこが戦略ゲームなのだろうか。戦術ゲームと言うのも苦しいくらいである。一応フォーメーションを設定できるので、砲弾が来ることが分かっていたら散開させればいいのだが、自律して動いてくれるわけではない。
色々なユニットが出てくるが、結局はジャンケンのような有利不利と時代進化による強弱しかない。飛行機は目新しかったが、戦闘機を生産するのを忘れると知らないうちに制空権をとられたりするので、面倒なだけのような気がしなくもない。
プレイヤーの手をわずらわせない戦略ゲームが出ないものかと思う。
なお、Age of Kings ではコンピュータの思考 AI を作れたが、この Empire Earth では見たところ簡単なパラメータいじりくらいしかできないようである。
このゲームは将棋盤だと思えばいい。あるいは雀卓と牌だと思えばいい。人間同士の対戦は多分それなりに面白いだろう。