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MOTHER 3

糸井重里、HAL研究所、任天堂

まあまあ(10点)
2009年8月23日
ひっちぃ

家族旅行で祖父の山小屋に出かけた妻と子供たちを見送った父親だったが、山火事が起きて家族とは音信不通になる。森では動物たちが凶暴化しているとの不穏なうわさを聞き、父親は家族を助けに行くが、たどり着いたときに妻は亡くなり、息子のうちの双子の長男は行方不明になった。次男は兄の行方を探す旅に出るが、怪しい集団がうごめき始めていた。コピーライターをはじめマルチなことをやる糸井重里によるコンピュータRPGの第三弾。

第一作目はファミコンで、第二作目はスーパーファミコンで出ていて、第三作目はやはり任天堂のハードであるNintendo 64(のDD?)で出る予定だったが、延びに延びてゲームキューブでも出ずに結局ゲームボーイアドバンスで出た。その経緯は糸井重里が主催するほぼ日刊イトイ新聞で長い対談記事で語られたが、はっきりした理由が示されず関係者らがお茶を濁していた。

本来出るはずだった据え置き型のハードから携帯ゲーム機になったことで、きっとボリュームダウンしたんだろうな、と半ば興味が失せていたのだけど、確か秋葉原をうろついていたときに1,580円で新品で売っていたので買って遊んでみた。

日本の初期のコンピュータRPGというとドラゴンクエストとファイナルファンタジーが思い浮かぶ。このマザーシリーズの特徴は色々あるけれど、私にとって何より印象に残っているのは「電車」だった。ファンタジーや未来的な背景のゲームが多かった中で、ちょっとだけ昔だけどほぼ現代をモデルにした世界を扱った本シリーズは、素朴でコミカルな世界観を特徴としている。

ゲームシステムは懐かしい2Dのやや斜め見下ろし型のフィールド画面で構成され、敵と接触するとバトル画面になってコマンド入力で敵と戦うようになっている。一風変わっているのは、戦闘でダメージを受けてもその分のヒットポイントがドラムロール式にゆっくりと減っていき、もし普通なら死ぬほどのダメージを受けてもその前に回復させるか戦闘を終わらせるかすると助かるところだろうか。

全部で8つの章に分かれていて、最初は操作できる主人公がそれぞれ違っている。第一章は父親を操作して家族を助けに行く。第二章は泥棒一家の息子を操作して村の外れの古城を冒険する。第三章は打って変わって謎の組織の幹部にコキ使われるサルを操作する。そうしていくつかの側面からストーリーが語られていく。

正直最初の章は入っていきづらかった。なぜ父親なんか操作しないといけないんだろう、なぜこの一家の不幸を見せ付けられないといけないのだろう、とやる気がおきずに途中何度もセーブしてはゲームを中断した。

第二章で急に話が切り替わってまた戸惑ったが、ちょっとしたアドベンチャーになっていてやっと少し面白くなってきた。男っぽいヒメというベタな狙いどころの女の子も悪くなかった。

第三章は謎の組織の幹部が主人公の住む村に侵食していくさまを向こうの視点で見せてくれる。物々交換で成り立っていた村の生活に「カネ」を持ち込み、まるでテレビかパソコンと思しき「しあわせの箱」を人々に渡していく幹部。村の人々は次第にお金や豊かな生活に取り付かれていく。しまいには大都会に移住していく人々。この章が全体を通じて一番鋭くて考えさせられた。

一度離散してしまった同士たちと第四章を掛けて再会し、第五章でいよいよ反撃の狼煙を上げる。第六章がインターミッションになる。第七章で世界観が語られ、第八章で最後の戦いに入る。

この世界観が私は好きになれなかった。急に世界が一つの島であることが語られ、世界を救うためにあれをやれと唐突に言われる。しかもそれを語るのが七人のマジプシーと呼ばれるオカマたち。妙に説教臭いし。第七章からのストーリーがそっけなさすぎる。最後のボスも意味不明だったし、そこに至るまでの展開が支離滅裂すぎる。なにより致命的なのは、題にもなっているマザーつまり母親の存在感や最後の戦いがシラジラしすぎる。製作者側が感動させようとしている一方で、プレイしている私は冷めていた。

一方で、ゲーム途中のコミカルな描写やウィットなんかは結構センスが高いと思う。さすがにちょっとこの歳になるとクドく感じたりもするけれど、逆に言うと糸井重里の感性っていつまでも若いんだなあと感心した。特に最後のダンジョンって小学生ぐらいの子供が嬉々としてデザインしそうな感じ。多くの人に受け入れられる子供っぽさってなかなか発現しない。

この作品で一番素晴らしいのはなんといっても音楽だと思う。音楽だけHAL研究所のクレジットがあるのは、このマザーシリーズの音楽に欠かせない人がいるからだろうか。私はこの音楽が大好きで、前作MOTHER 2のサウンドトラックは購入している。今回も相変わらずなんというかミニマルでキャッチーな、60〜70年代っぽいオルガンやホーンやベースが印象的な曲が物語を彩っている。

バトル画面ではBGMに合わせてボタンを押すと連続攻撃が出来るようになっている。途中でやっとコツが分かってきたけれど、よくタイミングが分からずにもどかしい思いをすることが多かった。タイミングを合わせやすい単純なリズムの曲と、妙にズラしてある難しい曲なんかがあって、敵を寝かせるとベースとなるリズムが分かりやすくなったりと、なかなか考えられていて面白いのだけど、プレイアビリティをもうちょっと詰めて欲しかった。

それ以外は戦闘のバランスが結構よく考えられていて、ほどよく緊迫した戦いが出来た。というかちょっとキツめだった。ライトゲーマーには少し厳しいかも。割と経験値を稼ぎやすいので、腰を落ち着けてやれば普通にクリアできると思う。

さて、いまからこの作品を入手してプレイする価値はあるかというと、遊んでみてもいいんじゃない?ぐらいの出来ではあると思う。懐かしい感じがする。特に前作前々作を楽しめた人なら、少なくともガッカリはしないと思う。こまめにセーブできるしフィールド画面ならいつでもスリープに入らせて消費電力を落とすことができるので、移動中にプレイすることに配慮されているのも良かった。

(最終更新日: 2013年1月27日 by ひっちぃ)

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