ヘッドフォンだけならソニーと並び称されるオーディオ専業メーカーのオーディオテクニカが出しているミドルクラスの密閉型ヘッドフォン。

2002年10月21日に発売されてから息の長いモデル。2ちゃんねるでは高級ヘッドフォンへの登竜門的なモデルとの声も聞く。重低音重視の低コストモデルとは違い、上品な音造りをしている。万能型で聞き疲れしにくいとの評判も。

私は2008年10月に買ってかれこれ一年以上使っていた。いまになって評を書くのは、新たにsennheiser HD650という高級な部類のヘッドフォンを買ったので比較対象が出来たから。

良い製品だったと思う。この一年で一番聞いたのはポップスで、時々メタルやクラシックを聞いていた。どれも良く鳴っていたと思う。アンプにはmarantz PM-15S1を使い通しだった。DTMでミックスに使うためにわざと廉価なソニーのMDR-Z300という三千円台のヘッドフォンを買ったので聞き比べると、ATH-A900のほうが明らかに中高音がきらびやかで、MDR-Z300に換えてみると全体的に音がくぐもった感じがする。一方でATH-A900だと低音は抑えられるが小気味良く鳴っていたと思う。

2ちゃんねるの住人によると、オーディオテクニカのヘッドフォンは中高音域がキレイな反面、低音があまり出ない、または低音を無理に出そうとしたモデルはバランスが悪くなりがちだという。なんとなく私の感想とも一致している。この点、私が愛用しているマランツのアンプと特性が似ていて相性も良かったのかもしれない。

耳に掛けたときの感触もなかなか良かった。イヤーパッドがまるで高級な革のソファーみたいな素材で出来ている。しかしこの素材、とても薄くて、使っているうちに破けていってしまった。いまではスポンジが露出している。ちょっと弱すぎると思う。あと、ヘッドバンドではなくパッドが二箇所出ていて支えるようになっていて、自然な締め付け具合に貢献していると思うのだが、長時間つけていると髪がそのパッドのところだけへこんでしまってみっともなくなる。まあ普通のヘッドフォンでも髪型が崩れてしまうのだけど。

家で使うにはこの大きさが頼もしいのだけど、さすがに携行するのにはマイナスになってしまう。デザインは良いと思うのだけど、これ付けて電車に乗る勇気はないし、カバンにしまうのも厳しい。ちなみに2ちゃんねるの住人によるとこのクラスの大きさのヘッドフォンをつけて電車に乗っている人を見かけることもあるそうだ。

私は一年ちょっと前にビックカメラで19,800円で買った。いまもビックカメラやヨドバシなんかでは値段はこのままだった。しかし驚いたことにamazonだと13,068円で買える。ほかに価格コムを見ると安値が並んでいる。いくらポイントカードで一割ポイントをゲットでき試聴もし放題とはいえ、家電量販店は割高すぎないだろうか。今年の秋にビックカメラからお得意様用のクーポン券をもらったのだけど、その中にヘッドフォン3%引きのクーポンがあったことから、ヘッドフォンは家電量販店の中では割と余裕を持った価格設定で売られているのだと思った。そりゃテレビやDVD/HDD/Blu-rayレコーダーなんかでカツカツの価格競争をしていたらどこかで取り返したくなるのは分かるのだけど、せめて16,800円のポイント10%ぐらいで売ってくれないと家電量販店で買う気がしない。まあ買っちゃったんだけど、あとでこの事実を知ってガッカリした。だからついこの前もっと高いヘッドフォンを買ったときは家電量販店を使わなかった。

ついでに書くと、前にヨドバシでDVDレコーダーの値崩れ品を買ったときに、HDMIケーブルもセットで買うと安いと言われてついでに国産有名ブランドのケーブルも買ったのだけど、多分それでもケーブルで利益を足せているんだろうなと思った。

重低音が好きな人、携帯音楽プレイヤーで使いたい人、家にそれなりのアンプがない人、ヘッドフォンは耳が痛くなるという人には勧められないけど、それさえクリアできればこういう大型ヘッドフォンは満足度の高いアイテムだと思う。耳が疲れるという欠点はあるものの、普通の十万ぐらいするスピーカーを適当に鳴らすよりも音はいい（良い環境下でセッティングをうまくやればスピーカーのほうが良いだろうけど）。

どうせ買うなら最初にこのモデルぐらい良いものを買えばいい。重低音が好きな人なら重低音をしっとりと鳴らすモデルは他にもあるみたいだし、エネルギッシュさとかボーカル重視とか好みもあるだろうから色々検討してみるといいかもしれないけど、とにかくそんな難しくは考えたくないというような人ならばまずこれ買っちゃえ。アンプ持ってなければ、Dr.DAC2みたいにUSB-audioとDACとヘッドフォンアンプがあわさった製品が安くて手軽で良いと思う。