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涼宮ハルヒの戸惑

バンダイナムコゲームズ 原作:谷川流

まあまあ(10点)
2010年8月29日
ひっちぃ

平凡な一生を送るなんてありえない、と世の中の不思議を探して面白おかしく生きることを願い積極的に行動するエキセントリックな女子学生の涼宮ハルヒが、そのために高校にでっちあげた無認可サークルSOS団で、今度はゲームを作ろうと言い出す。自分の意志を知らないうちに実現させてしまう不思議な能力を持った彼女の周りには、彼女にバレないよう宇宙人、未来人、超能力者が集う。そんな中でまったくの一般人である語り部の男子学生通称キョンが巻き込まれる。ライトノベルが原作で様々な形にメディアミックスされた人気作のゲーム化されたうちの一作品。

たぶんジャンル分けするとなるとこのゲームはアドベンチャーゲームになるのだと思う。プレイヤーは語り部のキョンを操作して、本ゲームの目的であるゲーム作成を成し遂げるために、団長の涼宮ハルヒや他の団員をスケジュール表でコントロールして、ゲーム作成のために必要な各種要素たとえばイラスト絵や音楽やスクリプトなどのポイントを獲得することを目指す。

涼宮ハルヒの超高飛車な声をひさしぶりに聞いて私はこのキャラクターへの愛着を思い出した。ああいいなあ。一度冷静になってみると結構腹が立つことを平気でやっているのだけど、それでも私はこの涼宮ハルヒというキャラクターが大好きなんだなあと改めて思った。やたら解説好きな古泉一樹や無表情な長門有希にも魅力を感じる。朝比奈みくるはちょっと趣味じゃないけど、キョンが心の中で崇拝する部分も含めるとなかなか楽しい。

原作が休筆中なのでファンは新たなエピソードに飢えている。ファンの中には自らSS(ショートストーリー)を書いたりする人まで出ているのだけどやはり原作とは質が違う。そんな中で本作品は、ゲームというジャンルの違いはあるものの、プロの手によって書かれた一種の同人みたいな作品としてネットでそこそこ評判が良かったので、廉価版が発売されていたのを見つけて買ってみた。買ってみたのはいいのだけどその後一年以上放置していた。

ちょっとゲームシステムが難しい。特に何もしなくてもそのままゲームが進んでいくというとっつきやすさはあるのだけど、なにをどうしたらよりよくなるのかが把握しづらい。画面に結構情報が出ていて親切なのだけど、それぞれの要素がどういった条件でどれだけ効果があるのか、どれとどれがトレードオフになっているのか、なにがどうなれば良い方向に進むのか、これを上げたらどんないいことがあるのか、が分かりにくい。一言で言えば散漫な感じ。

条件を満たすとイベントが発生する。さらにその後にイベントが連鎖する場合がある。どういったときにイベントが連鎖するのか、親切にもヘルプで教えてくれるのだけど、一周目のプレイでは連鎖させる方法がよくわからなくて、連鎖イベントの最初のやつだけを見て回ることしか出来なかった。連鎖の方法はちゃんと説明書にも書いてあるし、画面のヘルプ見れば分かりそうなものなのだけど、どうもいま一歩説明が足りてないように思う。必ず連続させなければならず、スケジュール表上の矢印でつながっていなければ連鎖が切れてしまうのが納得いかない。やりこみたい人のための情報は豊富なのに、とっつくためのガイドが出来ていないので、これらの情報をどうやって生かせばいいのかわからずにイライラした。

よそ見システムといって、人物との会話シーンでどの人物に視点をあわせるかで好感度みたいなものが変わってくる。最初は面白い趣向だと思ったけど、だんだん面倒くさく感じるようになる。

展開の選択がほぼスケジュール表の操作だけで出来るのは良かった。会話中に選択肢が出てくることは日曜日の特殊イベントぐらいだった。あ、そうだ、プレイヤーキャラクターがどの人の作業を手伝うのかをよそ見システムで選択する必要はある。

ゲーム内時間は一ヶ月で終わる。ただしゲームの出来が悪いと何度でもループする。一応スタッフロールが出てエンディングにはなるけど。一日は昼休みと放課後に分かれている。スケジュール表は一週間ごとになっている。一ヶ月の中では作業内容が異なるだけでメリハリに乏しいように思う。やっているうちに作業感がつのってくる。

一ヶ月を終えるとゲームが完成する。ミニゲームみたいな出来ながら最後プレイしなければならない。これをクリアしないとギャラリーモードで完成させたゲームとして登録されない。ゲームは六ジャンルあってどれが完成するか分からない。攻略サイトを見ると獲得ポイントによって条件分岐があるらしい。私が完成させた育成ゲームは遊んでみるとあっさりゲームオーバーになった。攻略サイトを見るとクリアするのが結構難しそうだった。プレイがたるかった。製作中の獲得ポイントが少なかったり変なイベントを起こしていると、完成させたゲームの部分部分に変な箇所が出てきて、それを登場人物たちが周りで突っ込んだりする。

アドベンチャーゲームというジャンルでやりこみプレイをしたい人にとっては、必要な情報が画面に豊富に出ていて充実したプレイが楽しめそうではあるのだけど、もっと気楽に楽しめないものかと思う。メタな情報が画面に出すぎで逆に混乱する。攻略サイトを見てみると、キャラクターごとの疲労度とか分野別習熟度みたいな本来画面に表示すべきものが隠されているのも納得がいかない。ゲームのシステム自体はかなりしっかり出来ているのに、見せ方が悪いように思う。

原作やアニメのファンなら遊んで損はないと思う。あとはゲーム製作の流れを知りたい人なんかにもいいかもしれない。話を軽く追いたいだけのライトゲーマーと、全イベント網羅を狙うアドベンチャーゲームマニアにも向いていると思う。ただ、その中間層のプレイヤーにとっては、このゲームは欲求不満をつのらせてしまうんじゃないかと思う。

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