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ワールド・カップにみる文明の小児病

西部邁 (わしズム 創刊2号)

駄作(-30点)
2002年9月3日
ひっちぃ

一言で言うと、このまえのサッカーワールドカップのお祭り騒ぎを切り捨てる文章。

ああもう私の大嫌いな種類の文章なんだけど、この手の文章は下手をすると欧米人の独壇場になりそうなので、ここらで西部邁という後継者が出て思想好きの若者のハートをガッチリ押さえてくれるんならどんどん書いてちょうだい。

題名に「文明の小児病」とあり、これは文明社会の中にポッカリと子供っぽい意味不明のイベントが行われたことを指しているのだろうが、ではこれは伝統に根ざした日本古来の祭りとどこが違うのか。

つまらぬ気晴らしを求めたがる欲望、粗野なセンセーションの追求、巨大な見世物にたいする喜び、盛んなクラブ精神とそれに伴う記章、決まった型の手の動かし方、合言葉、スローガン、歩調を合わせた行列行進、ユーモア感覚の欠如、誇張された反応の仕方、物事へのたちまちの同意、他人の思想への不寛容、自己愛や集団意識に媚びるイリュージョンに取り憑かれやすいこと、これらを小児病的特長だとするホイジンガというおそらく思想家の言葉を引用しているのだが、このほとんどが民族的な祭りにも当てはまってしまわないか。私ならありきたりながら違う結論を導き出す。人類は依然として祭りを求めているのだと。

続いて作者は、サッカーの出自に触れ、もともと卑しいスポーツだったのだからワールドカップが荒れるのは当たり前だと言う。ならば、政治だってもともとは占いが元になっているわけだし、化学は卑金属から金を作るための浅ましい欲望が元になっている。それだけで現代の政治や化学を貶めてよいのか。

以下はどれも正論のようでありながらおかしい。

1. イングランドが勝って喜んだ不思議な日本人

イングランドが勝って喜んだのはむしろ日本人が高度な精神性を持っているかもしれないと考えることはできなかったか。というのは極端にせよ、このあとナショナリズムを批判しているのになぜナショナリズムとは無縁の行動をここで非難するのか。

2. 欧米人の猿真似をする選手たち(やるならちょんまげを結え)

欧米人のマネを非難しているが、自分たちが気に入ったものを取り入れるのはどこが悪いのか。それが日本の誇るべきところだと言う人もいる。むしろ、マネだからやらない、といった精神性の方が幼稚だ。スーツはイギリス人しか着るべきではないのか。

3. 「日本人としての美しさを捨てているのはもったいない」

イタリアの女優が言ったのだそうだが、そんなものは余計なお世話だ。外国人からの指摘を取り上げる方がよほど自分たちに自信がないのではないか。日本人を不安にさせているのはこういう言葉を盛んに紹介する人間だ。

4. 奥さんは亭主のサッカー狂いをもっと非難すべき

女が現実的だというステレオタイプに頼った情けない言葉。

5. ルールを知らずに応援して熱狂するな

たとえば自分の子供がよくわからないことに打ち込んでいたら、それを理解せずに応援したり熱狂したりするのはよくないのか。アメフトなんてルールが複雑だからアメリカの母親全員が理解しているとは思えないのだが。

6. 外国人に国籍取らせて熱狂するナショナリズムは歪んでいる

では帰化した人や在日朝鮮人なんかを一切排除してチームを作れというのか。

この手の人たちは、一体世界がどうあってくれれば満足するのだろうか。

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