コンピュータソフト
ロールプレイングゲーム
太閤立志伝V
コーエー
傑作(30点)
2011年10月9日
歴史系ゲームの老舗・大手のコーエーが、「信長の野望」「三国志」などの正統派なシミュレーションゲームとは少し違ったロールプレイングゲーム風の要素を持ち込んで、豊臣秀吉の立身出世物語という形で一人の武将に焦点を当てて作ったシリーズの第五弾。数百人の登場人物がマップ上を動き回ってそれぞれの役目を果たしているシミュレーションゲーム的な基盤の上で、プレイヤーは木下藤吉郎(秀吉)を若い頃から操って能力を磨かせ、信長のもとで立身出世させて最終的に天下人にする。
三国無双シリーズなどアクションゲームや大規模ネットゲームやさらには恋愛シミュレーションなど現在は手広く広げている大手ゲームソフトハウスのコーエーテクモゲームスが出してきたゲームの中で、本シリーズは同社一番の傑作だと推す声がネットでよく見られるほどの通好みの作品。私は本シリーズの第一弾からプレイしていて、自由度が高いシステムに惚れ、一時期自分でもこんなゲームを作ってみたいと思ってちょっとコードまで書いてみたことさえある。
本シリーズ一番の特徴とは、大名などの各勢力の動きが、末端の武将たちの動きの集合で成り立っていることだ。たとえば普通のシミュレーションゲームの場合、AIは自勢力の状況を見てトップダウンで意志決定して行動を起こす。しかし本シリーズでは、各人物に性格や能力が設定されており、大名が意志決定するときに家臣が意見を具申したり反対したりしてくることがあるほか、決定した方針を具体的にブレイクダウンしてたとえば軍備増強なら鉄砲を買おうとかの行動を一人一人の武将が命じられて行うことになる。そうするとその武将は城を出て町に鉄砲を買い付けに行くためにマップ上を動き回る。プレイヤーは主人公を操ってその武将に話しかけることができ、話すといま何をやっているところか教えてくれたりする。敵国の武将に接触していきなり襲い掛かって暗殺することもできる。
大名家に仕えると、定期的に評定(会議)があってトップの意志決定に参加できるほか、トップの方針に沿う形で様々な作業指示を受ける。特定のスキルを持っているとそのスキルに合った仕事を命じられる。より大きな仕事をこなすことで主君からの覚えがめでたくなってどんどん出世していく。偉くなるにつれて命じられる仕事も増えていき、最初はコメを売って来いとかから始めて、外交交渉なんかを任されたりもするようになり、最終的には城を任されて部下も与えられ、どこそこの国や勢力を攻略しろという指示を与えられるようになる。
四作目からカードの要素が全面的に採用され、あらゆるゲーム内要素がカードであらわされるようになった。主人公が身につける能力やアイテムやさらには観光名所といったものまでカードになっていてわかり易いほか、コレクション的な要素もあって一枚一枚収集していくと数百枚ごとにゲームの新しい要素が追加されるようになっている。それぞれの登場人物ごとに一枚ずつカードがあり、とても親密になったり特定のイベントを発生させるとその人物のカードをもらえ、そうするとその人物でゲームを始めることが可能になる。とはいってもほとんどの登場人物には秀吉のような固有イベントが設定されていないので実際にやってみると味気ないゲームになるだろう。
秀吉でプレイすると、かの有名な桶狭間の戦いで信長が今川義元を破るイベントに始まり、墨俣一夜城や美濃攻め、果ては本能寺の変といったイベントが次々と起こる。
プレイヤーは本シリーズの主人公である秀吉以外にも、他の大名や武将や浪人、服部半蔵などの忍者、商人、海賊でもプレイ可能で、さらに副業として剣豪や医者や鍛冶屋や茶人といった職業につくこともできる。それぞれにクリア条件が設定されており、能力を磨いて何かを成し遂げることが目的となっている。
さて批評に入る。
シリーズ第五弾ということで、ゲームシステムもますます円熟していて安心して遊べた。しかし良くも悪くもあまり変わりばえしないように思った。武力などの基本能力値、開墾や弁舌などのスキル、さらにはそれぞれのスキルごとに技があり、武将ごとの個性が出ている。能力値が高くてもスキルがなければ個々の作業で成果を上げられないし、スキルがあっても覚えている技もあれば覚えていない技もあって差が出てくる。特定の人物や場所で修行しないと覚えられない技なんかがあって奥が深い。…奥が深いのだけど、結局やることはミニゲームをやって身に着けることだけ。きっと最終的に多くの人がほとんどのスキルを身につけることになるだろう。
ほぼ月に一回の評定(会議)で仕事を命じられてそれをこなすとあとは自由時間となり、勝手に町に行ったり他の武将に会いに行ったりして自分のスキルを磨くことに時間を当てるようになるのだけど、この時間が圧倒的に長くてだんだん飽きてくる。一周目つまり最初秀吉でプレイするときには、ゲームシステムがよく分かっていない状況から手探りで始めて、なるほどこのスキルはこの場所で覚えればいいのか、このスキルは他の武将と仲良くなって教えてもらわないといけないのか、といったことが徐々に分かってくる面白さがあっていい。二周目で他の主人公からまた再スタートとなると、大体やることが分かっているので、今度はいかに効率よくゲームを進めるかといったことを考えるのが楽しい。でも楽しいのはそこまでで、これに飽きてしまうとあとは単なる作業となる。あとはどう工夫しても成果に差がほとんどなくなってしまうか、またはそんな工夫自体がバカらしく思えてきてしまう。意外に奥が深いのでやるべき工夫がそれなりに用意されているのだけど、だからどうしたの?って感じがしてしまって萎えた。時間が腐るほどあった学生の頃だったらもっとやりこんでいたかもしれないけれど、いまはただゲームの間延び感が気になってしまった。
そんなわけで私は、当初は忍者と商人と海賊それぞれ一通りクリアしてみようと思っていたのだけど、忍者の途中ですっかり飽きてしまった。忍者の中でも服部半蔵はイベント豊富とネットで見たのだけど、体感的にほとんどイベントは発生しなかった。商人プレイも楽しみにしていたのだけど、きっとまた同じ作業の繰り返しなんだろうなと思ってやらなかった。
ゲーム展開が不安定なのは今回も一応引き継いでいるみたいで、私は一回半しかクリアしていないのでよく分からないけれど、最初に秀吉でプレイしたときは上杉家が強くなりすぎて北陸からガンガン攻めてきて、本能寺の変の発生条件の一つである越前の「北の庄城」が攻め取られてしまったので、姫路城に配属されたのにわざわざそっち方面に遠征する羽目になった。特にこのような現象は初代で著しく、真面目にコツコツやっているのに歴史どおりに進まないのが逆にマニア心をくすぐって笑いのタネになっている。下手にシステムに不自然に介入されるよりも、むしろ放置されているこのほうが、いかにゲームシステムが複雑に成り立っているのかの証明になっていて面白い。
ミニゲームがどれも割とよく出来ていて面白い。特に私が面白いと感じたのは、開墾の水路つなぎ、医術の薬調合、礼法のスライドパズルだろうか。逆につまらなくて苦痛なものもあって、数種類の茶器を暗記する茶道、人物当てクイズの忍術、単に札をめくるだけの鉱山なんかは嫌だった。
私なんかは本シリーズを確か五作中四作遊んでいて、さすがにシナリオ的には毎回やることが同じなので最初からその点については飽きてしまっているのだけど、このシリーズが始めての人ならきっと存分に楽しめると思う。主君に仕えて成果を上げて立身出世していくというサラリーマン的な楽しみを味わえる数少ないゲームでもあるし。同社の「信長の野望」が絶えず新たなシステムに入れ替えて新鮮さを保ちながら賛否両論でてしまうのに比べると、本シリーズはほとんどの人から文句が出ないよう着実な進化を遂げている。チュートリアルがとても親切なので安心して遊ぶことが出来て、完成度についてはほとんど言うことがない。しかし、完成度を突き詰めていった結果として、ゲームを遊んでいて楽しいと思える何かが少しずつこぼれ落ちていったような気がしてならない。初代を遊んでいて秀吉で信長に謀反を起こしたときの快感を再び味わうことはもう無理なのだろうか。今回も謀反や辻斬りが出来るのだけど、システムに逆らうスリリングさを感じられなくなってしまった。まあそれはプレイヤーである自分のせいというのが大きいのだろうけれど、きっと本シリーズの昔からのファンは大体似たようなことを思っている気がする。なんでもかんでも出来るにしても全部手のひらの上で遊ばされている感が強くてしょうがなかった。このシリーズにいま必要なのは、せっかく高度なゲーム基盤があるのだから、不思議のダンジョンシリーズみたいな「製作者も予想のつかなかった攻略法」が成り立つような奔放さだと思う。
三国無双シリーズなどアクションゲームや大規模ネットゲームやさらには恋愛シミュレーションなど現在は手広く広げている大手ゲームソフトハウスのコーエーテクモゲームスが出してきたゲームの中で、本シリーズは同社一番の傑作だと推す声がネットでよく見られるほどの通好みの作品。私は本シリーズの第一弾からプレイしていて、自由度が高いシステムに惚れ、一時期自分でもこんなゲームを作ってみたいと思ってちょっとコードまで書いてみたことさえある。
本シリーズ一番の特徴とは、大名などの各勢力の動きが、末端の武将たちの動きの集合で成り立っていることだ。たとえば普通のシミュレーションゲームの場合、AIは自勢力の状況を見てトップダウンで意志決定して行動を起こす。しかし本シリーズでは、各人物に性格や能力が設定されており、大名が意志決定するときに家臣が意見を具申したり反対したりしてくることがあるほか、決定した方針を具体的にブレイクダウンしてたとえば軍備増強なら鉄砲を買おうとかの行動を一人一人の武将が命じられて行うことになる。そうするとその武将は城を出て町に鉄砲を買い付けに行くためにマップ上を動き回る。プレイヤーは主人公を操ってその武将に話しかけることができ、話すといま何をやっているところか教えてくれたりする。敵国の武将に接触していきなり襲い掛かって暗殺することもできる。
大名家に仕えると、定期的に評定(会議)があってトップの意志決定に参加できるほか、トップの方針に沿う形で様々な作業指示を受ける。特定のスキルを持っているとそのスキルに合った仕事を命じられる。より大きな仕事をこなすことで主君からの覚えがめでたくなってどんどん出世していく。偉くなるにつれて命じられる仕事も増えていき、最初はコメを売って来いとかから始めて、外交交渉なんかを任されたりもするようになり、最終的には城を任されて部下も与えられ、どこそこの国や勢力を攻略しろという指示を与えられるようになる。
四作目からカードの要素が全面的に採用され、あらゆるゲーム内要素がカードであらわされるようになった。主人公が身につける能力やアイテムやさらには観光名所といったものまでカードになっていてわかり易いほか、コレクション的な要素もあって一枚一枚収集していくと数百枚ごとにゲームの新しい要素が追加されるようになっている。それぞれの登場人物ごとに一枚ずつカードがあり、とても親密になったり特定のイベントを発生させるとその人物のカードをもらえ、そうするとその人物でゲームを始めることが可能になる。とはいってもほとんどの登場人物には秀吉のような固有イベントが設定されていないので実際にやってみると味気ないゲームになるだろう。
秀吉でプレイすると、かの有名な桶狭間の戦いで信長が今川義元を破るイベントに始まり、墨俣一夜城や美濃攻め、果ては本能寺の変といったイベントが次々と起こる。
プレイヤーは本シリーズの主人公である秀吉以外にも、他の大名や武将や浪人、服部半蔵などの忍者、商人、海賊でもプレイ可能で、さらに副業として剣豪や医者や鍛冶屋や茶人といった職業につくこともできる。それぞれにクリア条件が設定されており、能力を磨いて何かを成し遂げることが目的となっている。
さて批評に入る。
シリーズ第五弾ということで、ゲームシステムもますます円熟していて安心して遊べた。しかし良くも悪くもあまり変わりばえしないように思った。武力などの基本能力値、開墾や弁舌などのスキル、さらにはそれぞれのスキルごとに技があり、武将ごとの個性が出ている。能力値が高くてもスキルがなければ個々の作業で成果を上げられないし、スキルがあっても覚えている技もあれば覚えていない技もあって差が出てくる。特定の人物や場所で修行しないと覚えられない技なんかがあって奥が深い。…奥が深いのだけど、結局やることはミニゲームをやって身に着けることだけ。きっと最終的に多くの人がほとんどのスキルを身につけることになるだろう。
ほぼ月に一回の評定(会議)で仕事を命じられてそれをこなすとあとは自由時間となり、勝手に町に行ったり他の武将に会いに行ったりして自分のスキルを磨くことに時間を当てるようになるのだけど、この時間が圧倒的に長くてだんだん飽きてくる。一周目つまり最初秀吉でプレイするときには、ゲームシステムがよく分かっていない状況から手探りで始めて、なるほどこのスキルはこの場所で覚えればいいのか、このスキルは他の武将と仲良くなって教えてもらわないといけないのか、といったことが徐々に分かってくる面白さがあっていい。二周目で他の主人公からまた再スタートとなると、大体やることが分かっているので、今度はいかに効率よくゲームを進めるかといったことを考えるのが楽しい。でも楽しいのはそこまでで、これに飽きてしまうとあとは単なる作業となる。あとはどう工夫しても成果に差がほとんどなくなってしまうか、またはそんな工夫自体がバカらしく思えてきてしまう。意外に奥が深いのでやるべき工夫がそれなりに用意されているのだけど、だからどうしたの?って感じがしてしまって萎えた。時間が腐るほどあった学生の頃だったらもっとやりこんでいたかもしれないけれど、いまはただゲームの間延び感が気になってしまった。
そんなわけで私は、当初は忍者と商人と海賊それぞれ一通りクリアしてみようと思っていたのだけど、忍者の途中ですっかり飽きてしまった。忍者の中でも服部半蔵はイベント豊富とネットで見たのだけど、体感的にほとんどイベントは発生しなかった。商人プレイも楽しみにしていたのだけど、きっとまた同じ作業の繰り返しなんだろうなと思ってやらなかった。
ゲーム展開が不安定なのは今回も一応引き継いでいるみたいで、私は一回半しかクリアしていないのでよく分からないけれど、最初に秀吉でプレイしたときは上杉家が強くなりすぎて北陸からガンガン攻めてきて、本能寺の変の発生条件の一つである越前の「北の庄城」が攻め取られてしまったので、姫路城に配属されたのにわざわざそっち方面に遠征する羽目になった。特にこのような現象は初代で著しく、真面目にコツコツやっているのに歴史どおりに進まないのが逆にマニア心をくすぐって笑いのタネになっている。下手にシステムに不自然に介入されるよりも、むしろ放置されているこのほうが、いかにゲームシステムが複雑に成り立っているのかの証明になっていて面白い。
ミニゲームがどれも割とよく出来ていて面白い。特に私が面白いと感じたのは、開墾の水路つなぎ、医術の薬調合、礼法のスライドパズルだろうか。逆につまらなくて苦痛なものもあって、数種類の茶器を暗記する茶道、人物当てクイズの忍術、単に札をめくるだけの鉱山なんかは嫌だった。
私なんかは本シリーズを確か五作中四作遊んでいて、さすがにシナリオ的には毎回やることが同じなので最初からその点については飽きてしまっているのだけど、このシリーズが始めての人ならきっと存分に楽しめると思う。主君に仕えて成果を上げて立身出世していくというサラリーマン的な楽しみを味わえる数少ないゲームでもあるし。同社の「信長の野望」が絶えず新たなシステムに入れ替えて新鮮さを保ちながら賛否両論でてしまうのに比べると、本シリーズはほとんどの人から文句が出ないよう着実な進化を遂げている。チュートリアルがとても親切なので安心して遊ぶことが出来て、完成度についてはほとんど言うことがない。しかし、完成度を突き詰めていった結果として、ゲームを遊んでいて楽しいと思える何かが少しずつこぼれ落ちていったような気がしてならない。初代を遊んでいて秀吉で信長に謀反を起こしたときの快感を再び味わうことはもう無理なのだろうか。今回も謀反や辻斬りが出来るのだけど、システムに逆らうスリリングさを感じられなくなってしまった。まあそれはプレイヤーである自分のせいというのが大きいのだろうけれど、きっと本シリーズの昔からのファンは大体似たようなことを思っている気がする。なんでもかんでも出来るにしても全部手のひらの上で遊ばされている感が強くてしょうがなかった。このシリーズにいま必要なのは、せっかく高度なゲーム基盤があるのだから、不思議のダンジョンシリーズみたいな「製作者も予想のつかなかった攻略法」が成り立つような奔放さだと思う。