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Regza Tablet AT3S0/35D

東芝

最高(50点)
2012年6月10日
ひっちぃ

7インチサイズのタブレットPC。B5ノートの半分くらいの大きさ(ってB6じゃん)で400g弱という文庫本二冊分くらいの重さにも関わらず、ハイビジョン動画を再生したりフルブラウザでネットサーフィンしたり、Google Androidに対応したアプリケーションが使える小型マシン。タッチパネルつまり画面に指で触ることで操作するのでキーボードもマウスもない。

だいぶ前からタブレットPCというものは存在していたのだけど、あくまで法人が組み込みシステムで使うのが主流で、個人向けの製品も一部のマニアしか使っていなかった。その理由としてはたぶん、現在PC向けに圧倒的なシェアを持つOSであるMicrosoft WindowsがほぼIntelの86系のCPUにしか対応しておらず、このCPUが電力を食うのでバッテリーの持ちが悪くてあまり実用的じゃなかったからだと思う。発熱も大きいし。近年ようやくバッテリーの技術の向上もあって長時間使えるノートPCも当たり前になってきたけれど、それでもまだ無駄が多い。それにタッチパネルはマウスカーソルを使ったユーザインタフェースとは若干異なっているため、指で操作するのに合うようソフトウェア側で対応する必要がある。

Palm PCという手のひらサイズの携帯情報端末が流行ったりもしたが、当時はCPUが非力だったしネットにもつなげなかったので、デスクトップPCと同期するスケジュール帳が主な用途で、それ以外には小さい画面でも実用になるアクセサリやゲームぐらいしか使い道がなかった。日本でもシャープがザウルスシリーズという独自の携帯情報端末を開発し、最終的にはLinux ZaurusというLinuxを搭載してネットにもつなげられるほとんどいまのAndroidに近いものまで出たが、通信事情や知名度が悪くてマニアのおもちゃの域を出なかった。

日本では携帯電話がメールやカメラや挙句にはテレビ(ワンセグ)や電子マネー(おさいふ携帯)といった独特な高機能化を遂げたため、パソコンなどの情報機器とはまるで縁のなさそうな(失礼ながら)あまり頭の良くない人たちまで電子メールを器用に使い出した。海の向こうではAppleのiPhoneやそれ以前にBlackberryやらSymbianなんかが出てきた。これらはARMやSHなど電力消費の少ないCPUが使われている。

話がずいぶん大回りになってしまったけれど、iPhoneを大ヒットさせたAppleのスティーブ・ジョブズが、その優れたセンスによって従来のタブレットPCを生まれ変わらせたのが、ここ最近のiPadやそのパクりAndroid Tabletにあたる。これらはスマートフォン用だったOSを拡張したものが使われており、従来のPCとは系統が違っている。そのため、パソコン用のOSと比べてシンプルに出来ていて、複雑で小回りの利いたことは出来ないものの、直感的な操作を実現している。

というわけでタブレットPCはiPadやその亜流によって生まれ変わったのだが、片手で持って使うには大きすぎた。特に日本だとサラリーマンが通勤電車の中で使うのは厳しい。そこで各社から7インチサイズのタブレットPCがいくつか発売された。しかしそれらは解像度が低く、日本語の細かい漢字やマンガといった電子書籍や高精細なハイビジョン動画を見ることは出来なかった。

そんな状況の中で発売されたのがこの東芝のRegza Tablet AT3S0だった。7インチで1280×800という高解像度を持ったタブレットPCは他になかった。私はスペックだけ見て購入を決め、発売日前から予約して手に入れた。

それまで私はパナソニックのレッツノートRをカバンに入れていた。重量は930g程度なので、カバンに入れて持ち運ぶ分にはそんなにストレスはなかったけれど、さすがに電車の中で立って使うことは出来なかった。それがこのAT3S0だと重量が400g以下なので片手で持って使えた。これは大きい。画面サイズは10インチから7インチに小さくなったけれど、まったく見にくくはなかった。解像度は1024×768が1200×800に多少広がった。まあ書籍はこの横長の画面にはあまりフィットしないのだけど。キーボードやマウスを使うことなくタッチパネルに触るだけなので手軽になった。他社のほとんどの製品は1024×600とか800×480とかなので文字がつぶれて見にくい。

動画はテレビ録画したものをエンコード(変換)すれば持ち運べる。ただし地上波デジタル放送はそのままだと著作権保護が掛かっている。一番簡単なのは同じ東芝製のブルーレイレコーダーから転送することだけど、私はPT2という脱法機器を使ってmpeg4に変換している。ただしbaselineプロファイルじゃないと重すぎて再生できない。CPUのtegra2の限界だろう。Highやmainプロファイルが使えなくてもファイルが大きくなるだけで画質には影響しないので割り切れば問題ない。ハイビジョンのいわゆる720pつまり1280×720の解像度で再生できるので画質は非常にきれいだ。地上波は1440×1080だから少し小さくしていることになるけれどほとんど遜色ない。

ネットサーフィンはもちろんフルブラウザが使えるのでまったく問題ない。といっても解像度が高すぎるのでリンクが小さすぎて手で押しにくいことがある。その場合は一時的に表示を拡大して対処する。iOSやWindows PhoneにないAdobe Flashに対応しているのもいい。ただし一部見れないサイトなんかもあった。

液晶は画質最高と言われるIPSなので非常にきれい。ただし最近は有機ELを搭載した機器が目立つ。現に事実上の後継機AT570も有機ELになってさらにきれいになったらしい。だが有機ELには問題があって、一番大きいのは焼付けという現象が起こること、そして発色ムラがあること。だからIPS液晶はいまでもバランス的には遜色ないと思う。

褒めてばかりなので欠点も言うと、最大の欠点はCPUが非力なことだと思う。非力といっても普通に使っている分には問題ない。しかし、ネットサーフィンで重いページを見ると表示に時間が掛かる。特にアフィリエイトブログみたいな画像いっぱいのサイトだとストレスを感じる。さらにバックグラウンドで何枚も同時に開くと当然さらに遅くなり、ブラウザがもしかしてフリーズしたんじゃないかとダイアログを出してくることもある。CPUの非力さは前述のとおり動画再生にも当てはまる。新しいiPadならmpeg4のhighプロファイル4.1まで再生できる。こうなるとほとんどパソコンと変わらない。ためしにこのAT3S0でhighやmainプロファイルでエンコードした動画を再生してみたらコマオチなんていうレベルじゃなく紙芝居状態になった。

デザインがダサいと言っている人がネットで結構いたのだけど、私はそうは思わなかった。確かにやぼったいフォルムをしているのだけど、家電的でがっしりしていてむしろ安心感がある。とはいうものの、店頭で他の製品と見比べると確かにあんまりかっこよくはないよなあと思う。背面のゴム素材もすべりどめになっていて実用的なんだけどなあ。

USBにホスト機能がついていない。つまりUSB機器をコントロールすることができない。要はマウスやキーボードや外付けHDDなんかが利用できない。実用上それほど不満はないのだけど、あれやこれややってみたかったこともあったので少し残念だった。AT3S0の元になったAT300という10インチの製品にはこの機能がついていたので省かれた格好になる。しかしAT3S0の事実上の後継機AT570には復活した。ただし今度はmini-HDMIが省かれた。ちなみにUSBにホスト機能がなくても代わりにbluetooth機器が使える。

東芝が独自に開発した高画質・高音質の機能があるのだけど、ネットでは評判がよくない。私自身も全部切っている。

プリインストール機器がアンインストールできない。プライバシーが漏れそうなソフトを消したかったのだけど無理だった。

バッテリーの持ち時間が微妙。感覚的に四時間程度か。朝出かけて30分ネットサーフィンして一時間近く動画を再生して家に帰るとバッテリーが70%を切る感じ。次の日の朝になると60%ちょっとになる。その日も同じ程度しか使わないと家に帰る頃には大体30%台になる。だから大体二日に一回充電している。使いすぎた日はその日のうちに充電する。充電自体は四時間ぐらいあれば終わる。充電池は交換できないから、毎日充電すると早く寿命がきてしまう。こういう機器は二三年ぐらい使いたいので、もう少しバッテリーがもってくれればいいなと思う。まあバッテリー満タンで出かけると途中で切れる心配はないので十分かなとも思うのだけど。

GPSが弱い。平均的な携帯電話より弱い。ネットによる位置情報のアシストがないと衛星を見つけにくい。

電源ケーブルが太すぎてかさばる。持ち運びしにくい。というか持ち運んでいない。たぶん2Aで充電するから太いケーブルが必要なのだと思うけれど、単にコストカットのためじゃないかともネットでは言われていた。これだけ評判悪いのに後発の機器でも改善されていないらしい。

内蔵スピーカーの位置が縦側になっている。動画を見るときは横にして使うのだから、それにあわせて横側につければいいのに。電子書籍を見るときなんかは縦にするんだけど、縦で使う用途のときに音は聴かないもんなあ。

OSがGoogle Androidであることは利点でありつつも欠点でもある。SDK(ソフトウェア開発キット)がJava主体なせいか重い。NDKというネイティブコードで開発できる環境もあるのだけど、それをやりだすといろんなCPUに対応しなければならないし技術的なハードルもあがるせいか、ゲーム以外の普通のソフトではあんまり使われていないように思う。そのせいかiOS(iPhoneやiPodやiPad)と比べて動作がもっさりしている。

Androidはセキュリティが甘いのでコンピュータウイルスや個人情報抜き取りソフトに引っかかりやすいと言われている。でもiOSと比べてソフトウェア開発と公開のコストが低いのでソフトの数が多い。私はあんまりソフトを物色していないのでなんとも言えないのだけど、2ちゃんねるの専用ブラウザだったら2chmateなどのあるAndroidの勝ちだと思う。iOSだとなかなか思うような機能がついたソフトがなかったり、小額ながら有料だったりして思うようなソフトがなかったのだけど、twincleが無料化してからかなり快適になった。それまでは2tchを使っていたけれど、ブックマークが百を超えると使ってられないくらいに動作が重くなったり、掲示板のログをdatとして持ちたいのに内部形式でしか保存していないみたいだった。

新しいiPadが10インチで2048×1536という恐ろしい解像度で登場した。当然こちらも発売日前に予約して購入した。ここでは詳しいことはあまり書かないけれど、あまりの完成度の高さに驚いた。iPodのときも思ったけれど、Apple製品は本当に素晴らしい。ハードウェア自体はパーツのほとんどが韓国製と日本製らしいのだけど、ソフトウェアは言うに及ばずハードウェアも競合製品と比べて段違いだと思う。重いから家でしか使ってないんだけど、これの7インチが出たら速攻乗り換えるんだろうなあ。ただ、スティーブ・ジョブズは7インチのiPadを出さないとはっきり言っていたらしい。ところが今年iPad miniという7インチのiPadが出ると言われている。ジョブズが死んで方針転換でもしたのだろうか。しかしこの7インチのiPadはどちらかというと廉価版という位置づけで出すらしい。iPad 2みたいに1024×768の解像度で二万円台ぐらいになりそうで残念だ。1920×1200あたりを7インチで出してきたら神なんだけどなあ。

既に何度も書いているように、この製品には最近になって後継機AT570が出ているのだけど、いまのところ私は購入していない。いまのAT3S0でも十分使えるから買い換える必要はないと思っている。でもやっぱりCPUが速くなっているし発色もいいらしいから欲しいことは欲しい。値段が落ち着いた頃にでも買うかなあ。

これから買う人は、このAT3S0もまだ店頭にあるけれど、そんなに投売りされていないのでやはり新しいAT570のほうがいいと思う。ネットでいくつか悪い評判も見られるけれど、そんなに致命的な悪評はなく、むしろ良い評判の方が多い。CPUが速くなって動作がキビキビしているみたいだし、バッテリーも長持ちし、さらに重量が50g以上軽くなっている。デザインもよくて有機ELで発色もよく、これだけパワーアップしているのにそんなに価格差がない。

兄弟製品として、10インチのAT500/700や13インチのAT830なんかもあるけれど、目的がはっきりしているのならともかくAT570が一番バランスがよくて完成度が高くて競合製品が少ないのでいいと思う。あ、SamsungのGalaxyタブの7インチの新しいやつのほうが一万円ぐらい安いらしいので、価格重視ならそっちでもいいと思う。あるいはさらに小さく5インチのGalaxy Noteなんかもなんと解像度が1280×720らしいので、目が疲れやすい人でなければ検討してみるといいと思う。

AT3S0
Androidのマスコットキャラをロック画面にしてみた。

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