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父親たちの星条旗

クリント・イーストウッド監督

いまいち(-10点)
2013年12月3日
ひっちぃ

太平洋戦争中に米軍は、日本軍が立てこもる硫黄島に上陸し、激戦の末に攻め取った。その戦いのさなかで、小高い丘を占領したときに彼らはアメリカ国旗である星条旗を立てて、そのときの写真が新聞を飾った。その象徴的な一コマがもとで、旗を立てた五人の兵士は英雄と称えられ、帰還後に戦争債券の宣伝のために全米各地を連れまされる。硫黄島の戦いを日本軍の側から切り取った「硫黄島からの手紙」と合わせたクリント・イーストウッド監督による戦争もの二部作のうちの一つ。

先に「硫黄島からの手紙」を見てそこそこ面白く思い、なにかで読んだ映画評によるとこの「父親たちの星条旗」のほうが社会派でいい作品だということなので、いずれ見てみたと思っていたらテレビで放映していたので録画して見た。

結論から言うとつまらなかった。

硫黄島に立てられた星条旗の写真はピューリッツァー賞を受賞し、世界最強の軍隊であるアメリカ海兵隊は硫黄島での戦いの勝利を軍創立以来最大の戦果として今でも誇りに思っている。しかしその裏にはいくつものウソがあった。そのときたまたま旗の近くにいた三人の兵士は、英雄として祭り上げられ、全米各地の集会で人々の歓呼を受ける。張りぼてで再現された丘の上に登って旗を立てる小劇までやらされる。そんな虚飾にまみれた舞台と、激しい戦闘でのシーンの数々が、交互に展開されることで両極端な世界の対比が描かれる。戦争の裏側を描いている点では素晴らしい作品だと思う。…でも本当にそれだけの作品だった。

登場人物にあまり思い入れることができなかった。一番主役っぽいインディアン出身の兵士が、お笑い芸人コンビ・オードリーのでかい方(春日)にとてもよく似ていた。こいつが一番苦悩するのだけど、伝わってこないんだよなあ。映画「ランボー」でベトナム帰還兵であるランボーが最後泣き出すのを見たときのしらけた感覚と似ている。極限状態とか仲間の死とかって、共感しづらいんだよなあ。なにせ自分が体験したことないだけに。もっとじっくりと描かれていればよかったのかもしれない。帰還後のシーンに時間が割かれて、硫黄島でのシーンも戦闘が多く占められている。行軍とか野営での仲間との交流がもっと出てきていたら、うーん、それだけじゃダメかなあ。

戦争の裏側の一つの形を描いた作品として、ただその点だけを見て楽しめる自信があるならば見るとよいと思う。それも映画の楽しみ方の大きな一つなのだろう。そうでなければ見ないほうがいい。

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