ノンフィクション
国際
米イラク攻撃の謎を解く
田中宇 (田中宇の国際ニュース解説)
まあまあ(10点)
2002年9月17日
アメリカがイラクを表向きの理由を適当にこじつけてでも攻撃したいのは、石油利権ではなく周辺秩序、特にイスラエルのためではないかという分析。
アメリカと石油会社は、これまで中東諸国の王室と手を結び、石油利権を手にしてきた。中東に王制の国が多いのも、王制なら交渉相手が王様や王族だけで済むからだと大胆に分析する人もいる。ところが、王室は親米でも、民衆の間では反米が渦巻いている。王室ばかりがいい思いをする時代後れの王制が、イスラム原理主義と合わさって打倒される日が近づいているのだろう。
王制が倒れるのは時間の問題だから、王制が倒れたあとの秩序をいまから準備しておいて、親米勢力を中東に育てておかなければならない。とここまではこの文章を読んで私が勝手に補完したことなのでそれを断っておこう。アメリカはイラクを転覆させて親米政権を建てることによって、周辺諸国も一気にひっくり返してしまおうと考えているのではないかと作者は言っている。この考え方は、文中に紹介されているように、英ガーディアン紙の記事が元となっている。
そしてなぜ今になってそういうことができるのかというと、対テロ戦争でロシアと仲良くなって石油を輸入できるようになったからだとか、アフガンのパイプラインでカスピ海の油田を開発できるようになったからとか、そもそもアメリカ自体が産油国でなんとでもなるだとか言われている。
もちろんそれは一時的なことであり、すべてが終わってみたら中東には民主主義の親米政権がゴロゴロできていました、で終わるということなのだろう。これも私の勝手な補完だ。
なにしろ言いたいことがよく分からない。二カ月前には、アメリカはイラクの石油が欲しいんだ、と言っている。しかし今回の文章では、石油ではなくイスラエルを守りたいからじゃないか、と曖昧に結論している。ブッシュ政権は石油政権じゃなかったのか。それがいまや「ネオコン(ネオ・コンサバティブつまり新保守主義派)」が台頭しているという。
週刊アカシックレコードで知られる佐々木敏は、親イスラエル派は民主党に限ると断言しており、共和党のいわゆる保守本流はイスラエルなんてむしろ切り離したいとさえ考えていると主張している。佐々木敏の明確な視点と分析に比べると、田中宇の見方は歯切れも悪くしっかりした結論が出ていない。
そこでまたまた私が補完すると、ネオコンというのは、アメリカの強大な軍事力をアフガン戦争などであらためて認識した人々が、あまり言うことを聞かないアラブの王族なんかとちんたら話をして石油を確保してきた保守本流を一歩抜け出て、圧倒的な軍事力でどうにかしちゃったほうが早いのではないかという、一種過激派的な考え方を持った一派を形成したとでもいうことだろうか。
ネオコンが親イスラエルではないかと分析する理由については、続編に書かれている。しかしそれを読んでもいまだによくわからない。イラクはいいとして、イスラエルの仇敵であるシリアを牽制することの意味を私が理解できていないからだろうか。イラクは十分封じ込められており、イスラエルにとって事態がいま以上に好転することなどあるのだろうか。それとも、イスラエルはいま以上に過激な侵略を行う予定なので、そのときイラクが万一核や化学兵器による抑止を宣言するのを潰すためなのだろうか。
続編の記事では、前半でイラクとヨルダン王室とイスラエルの関係や謀略について説明している。しかしこちらは、イラクを逆に王制に戻すという筋書きが進んでいることになっている。ますます分からない。イラクから秩序をひっくり返すのではないのか? 王制に戻すのだったら、現状の戦略になんら変更はないではないか。
個々の事実や報道の掘り起こしは非常に興味深い。しかし、全体を貫く分析やストーリーがよくわからない。作者自ら、最後にこんな弱気なことを書いている。「(中略)…、私の現在の解析力ではまだ難しい。今後さらに研鑚を積み、いずれ続編を書きたい。」 もうちょっとまとめてほしい。
アメリカと石油会社は、これまで中東諸国の王室と手を結び、石油利権を手にしてきた。中東に王制の国が多いのも、王制なら交渉相手が王様や王族だけで済むからだと大胆に分析する人もいる。ところが、王室は親米でも、民衆の間では反米が渦巻いている。王室ばかりがいい思いをする時代後れの王制が、イスラム原理主義と合わさって打倒される日が近づいているのだろう。
王制が倒れるのは時間の問題だから、王制が倒れたあとの秩序をいまから準備しておいて、親米勢力を中東に育てておかなければならない。とここまではこの文章を読んで私が勝手に補完したことなのでそれを断っておこう。アメリカはイラクを転覆させて親米政権を建てることによって、周辺諸国も一気にひっくり返してしまおうと考えているのではないかと作者は言っている。この考え方は、文中に紹介されているように、英ガーディアン紙の記事が元となっている。
そしてなぜ今になってそういうことができるのかというと、対テロ戦争でロシアと仲良くなって石油を輸入できるようになったからだとか、アフガンのパイプラインでカスピ海の油田を開発できるようになったからとか、そもそもアメリカ自体が産油国でなんとでもなるだとか言われている。
もちろんそれは一時的なことであり、すべてが終わってみたら中東には民主主義の親米政権がゴロゴロできていました、で終わるということなのだろう。これも私の勝手な補完だ。
なにしろ言いたいことがよく分からない。二カ月前には、アメリカはイラクの石油が欲しいんだ、と言っている。しかし今回の文章では、石油ではなくイスラエルを守りたいからじゃないか、と曖昧に結論している。ブッシュ政権は石油政権じゃなかったのか。それがいまや「ネオコン(ネオ・コンサバティブつまり新保守主義派)」が台頭しているという。
週刊アカシックレコードで知られる佐々木敏は、親イスラエル派は民主党に限ると断言しており、共和党のいわゆる保守本流はイスラエルなんてむしろ切り離したいとさえ考えていると主張している。佐々木敏の明確な視点と分析に比べると、田中宇の見方は歯切れも悪くしっかりした結論が出ていない。
そこでまたまた私が補完すると、ネオコンというのは、アメリカの強大な軍事力をアフガン戦争などであらためて認識した人々が、あまり言うことを聞かないアラブの王族なんかとちんたら話をして石油を確保してきた保守本流を一歩抜け出て、圧倒的な軍事力でどうにかしちゃったほうが早いのではないかという、一種過激派的な考え方を持った一派を形成したとでもいうことだろうか。
ネオコンが親イスラエルではないかと分析する理由については、続編に書かれている。しかしそれを読んでもいまだによくわからない。イラクはいいとして、イスラエルの仇敵であるシリアを牽制することの意味を私が理解できていないからだろうか。イラクは十分封じ込められており、イスラエルにとって事態がいま以上に好転することなどあるのだろうか。それとも、イスラエルはいま以上に過激な侵略を行う予定なので、そのときイラクが万一核や化学兵器による抑止を宣言するのを潰すためなのだろうか。
続編の記事では、前半でイラクとヨルダン王室とイスラエルの関係や謀略について説明している。しかしこちらは、イラクを逆に王制に戻すという筋書きが進んでいることになっている。ますます分からない。イラクから秩序をひっくり返すのではないのか? 王制に戻すのだったら、現状の戦略になんら変更はないではないか。
個々の事実や報道の掘り起こしは非常に興味深い。しかし、全体を貫く分析やストーリーがよくわからない。作者自ら、最後にこんな弱気なことを書いている。「(中略)…、私の現在の解析力ではまだ難しい。今後さらに研鑚を積み、いずれ続編を書きたい。」 もうちょっとまとめてほしい。