マンガ
学園もの
エデンの檻
山田恵庸 (講談社 少年マガジンKC)
まあまあ(10点)
2015年9月23日
グアムへの修学旅行の帰り、横浜明協学園中等部の生徒たちの乗った飛行機は、謎の現象に遭って不思議な島に不時着する。その島には絶滅したはずの動物たちがいた。危険な肉食獣に命を狙われ、生徒や教員それに乗り合わせたヒトクセある一般客らが生き残りを掛けてサバイバルする。
ネットではこの作品は一般少年誌でまず使われない卑猥な単語が伏せ字なしに使われたことで一部の間で有名になったのだけど、それとは関係なく海外の反応系のブログを見ていて外人の一人がこの作品のことに触れていたのを見て面白そうだと思って読んでみた。まあどちらにせよステマ(ステルスマーケティング)の気がする。
主人公はバレー部の補欠でクラスの問題児だった仙石アキラ。トラブルメーカーでみんなから嫌われていたけれど、幼馴染で新体操部のエースで学年一のアイドル赤神りおんは不平不満を言いながらも彼の世話をするのだった。そんな彼がこの極限状態の中でみんなを引っ張るようになる。彼が元々持っていたリーダーシップ能力に気づいて成長していく。
仙石アキラのグループだけじゃなく、グアムの米兵相手にケンカで勝ってしまう超中学生級(笑)の不良を中心としたグループとか、精神的な安定のために「学校」を作る生徒会長と教員たちとか、予知能力を持った女子高生(?)を中心に集うグループとか、集団を恐怖で支配する社会人中心の集団とかが出てくる。
基本的には少年誌のノリなのだけど、色々エグい。凶悪な肉食獣に生徒たちがムゴたらしく殺される。危険なのは動物だけでなく人間自身であり、特に序盤なんかは利己的な人間同士が不信感の中でいがみあい、女を取り合ったり相手を服従させようとしたり殺しあったりする。
話の筋的には、どうやって助かるのか考え、この島の謎を探っていく。なぜ絶滅動物たちがいるのか。ところどころにある人工物は何のためにあるのか。島を脱出するには?危険な動物たちを避けていかに安全な居住スペースと水と食料を得るのか?次々と襲い来る危険に生徒たちが一人また一人と殺されていき、安住の地だと思っていた場所を打ち捨て、ひたすら放浪を続ける一行。
とまあ色々面白い要素がたくさんあるのだけど、全体的にすごく雑な感じがした。
挙げるとキリがないのだけど、序盤に出てきた謎の仮面をかぶった「ハデス」と名乗る生徒(?)は、あれだけ思わせぶりなことを言っておきながら結局最初と最後にチョイ役として出ているだけだった。バレー部の補欠だった主人公にとってひたすらまぶしい存在だった親友でエースの有田幸平との接触は大したドラマにならない。コトミとトオルとレイの三角関係はさっぱり理解できないまま終わってしまった。
一応話は完結しているのだけど、オチも雑としか言いようがなかった。雑だからつまらないわけじゃなくて、それなりに面白いのだけど、とにかく微妙な出来だと思う。
そもそもなぜ主人公の仙石アキラが嫌われものだったのかが分からない。中学生でいたずら好きでちょっとスケベなぐらいでそこまで嫌われるんだろうか。無人島のような場所でこそ彼の真価が活きるというのなら、たとえば正論を言っちゃうとか、表裏のない人間であるとか、いくつか考えられると思う。そんな彼とは正反対の人気者の有田幸平は、周りの空気を読んでみんなを代表して適当なことを言うだとか、決して本音は見せないだとか、そういった性格設定にして主人公と相対させることによって物語が面白くなるってもんじゃないだろうか。無人島という極限状態で暴かれるペラい関係、みたいな。そのへんのことを曖昧にしたままフワッと描いている。
この二人に限らず、色々個性的な面々が出てくるのだけど、いいのは最初だけで少し話が進むと人物造形や筋書の薄っぺらさが出てきて、手っ取り早く肉食獣に殺されておしまいみたいな展開が繰り返される。いい加減なのは味方陣営にも言えて、裏切るやつがちらほら出てくるけれどワンパターンだし、裏切らない人たちもモブ化して空気になるし。
けなしてばっかりなのもなんなので良かったと思う点も挙げていくと、まず絶滅動物の描写が素晴らしかった。ビジュアル的に独特でどれもとても印象に残った。絶滅動物であるがゆえにそれぞれ大きな弱点を抱えていて、その弱点を突いて危機を乗り越えていくところがとても説得力があって楽しめた。
なんだかんだでグロ描写が刺激的で良かった。男女関係なく無残に死んでいく。一方でエロはそんなに大したことはなかった。絵的にみんなそこそこかわいいのだけど、裸や下着姿はわりとあっさりした線で描かれていて大してエロさを感じない。
島の謎については、最後のオチだけは評価が分かれると思うけれど、途中までは割といい感じで楽しめた。
幼馴染の赤神りおんを横恋慕しようとした男に対して主人公の仙石アキラが「俺の女だ!」と言い、それを気絶したフリした赤神りおんがひそかに聞いていてニンマリするシーンがすごく良かった。でもこの状況を楽しむには多分想像力が必要だと思う。仙石アキラと赤神りおんのそれぞれの気持ちの描写が足りてないから。
というわけで、そんな雑な部分を補って楽しむ自信があるなら、あるいはあまり深く考えずに軽く読むのであれば、それなりに面白い作品ではあると思う。
ネットではこの作品は一般少年誌でまず使われない卑猥な単語が伏せ字なしに使われたことで一部の間で有名になったのだけど、それとは関係なく海外の反応系のブログを見ていて外人の一人がこの作品のことに触れていたのを見て面白そうだと思って読んでみた。まあどちらにせよステマ(ステルスマーケティング)の気がする。
主人公はバレー部の補欠でクラスの問題児だった仙石アキラ。トラブルメーカーでみんなから嫌われていたけれど、幼馴染で新体操部のエースで学年一のアイドル赤神りおんは不平不満を言いながらも彼の世話をするのだった。そんな彼がこの極限状態の中でみんなを引っ張るようになる。彼が元々持っていたリーダーシップ能力に気づいて成長していく。
仙石アキラのグループだけじゃなく、グアムの米兵相手にケンカで勝ってしまう超中学生級(笑)の不良を中心としたグループとか、精神的な安定のために「学校」を作る生徒会長と教員たちとか、予知能力を持った女子高生(?)を中心に集うグループとか、集団を恐怖で支配する社会人中心の集団とかが出てくる。
基本的には少年誌のノリなのだけど、色々エグい。凶悪な肉食獣に生徒たちがムゴたらしく殺される。危険なのは動物だけでなく人間自身であり、特に序盤なんかは利己的な人間同士が不信感の中でいがみあい、女を取り合ったり相手を服従させようとしたり殺しあったりする。
話の筋的には、どうやって助かるのか考え、この島の謎を探っていく。なぜ絶滅動物たちがいるのか。ところどころにある人工物は何のためにあるのか。島を脱出するには?危険な動物たちを避けていかに安全な居住スペースと水と食料を得るのか?次々と襲い来る危険に生徒たちが一人また一人と殺されていき、安住の地だと思っていた場所を打ち捨て、ひたすら放浪を続ける一行。
とまあ色々面白い要素がたくさんあるのだけど、全体的にすごく雑な感じがした。
挙げるとキリがないのだけど、序盤に出てきた謎の仮面をかぶった「ハデス」と名乗る生徒(?)は、あれだけ思わせぶりなことを言っておきながら結局最初と最後にチョイ役として出ているだけだった。バレー部の補欠だった主人公にとってひたすらまぶしい存在だった親友でエースの有田幸平との接触は大したドラマにならない。コトミとトオルとレイの三角関係はさっぱり理解できないまま終わってしまった。
一応話は完結しているのだけど、オチも雑としか言いようがなかった。雑だからつまらないわけじゃなくて、それなりに面白いのだけど、とにかく微妙な出来だと思う。
そもそもなぜ主人公の仙石アキラが嫌われものだったのかが分からない。中学生でいたずら好きでちょっとスケベなぐらいでそこまで嫌われるんだろうか。無人島のような場所でこそ彼の真価が活きるというのなら、たとえば正論を言っちゃうとか、表裏のない人間であるとか、いくつか考えられると思う。そんな彼とは正反対の人気者の有田幸平は、周りの空気を読んでみんなを代表して適当なことを言うだとか、決して本音は見せないだとか、そういった性格設定にして主人公と相対させることによって物語が面白くなるってもんじゃないだろうか。無人島という極限状態で暴かれるペラい関係、みたいな。そのへんのことを曖昧にしたままフワッと描いている。
この二人に限らず、色々個性的な面々が出てくるのだけど、いいのは最初だけで少し話が進むと人物造形や筋書の薄っぺらさが出てきて、手っ取り早く肉食獣に殺されておしまいみたいな展開が繰り返される。いい加減なのは味方陣営にも言えて、裏切るやつがちらほら出てくるけれどワンパターンだし、裏切らない人たちもモブ化して空気になるし。
けなしてばっかりなのもなんなので良かったと思う点も挙げていくと、まず絶滅動物の描写が素晴らしかった。ビジュアル的に独特でどれもとても印象に残った。絶滅動物であるがゆえにそれぞれ大きな弱点を抱えていて、その弱点を突いて危機を乗り越えていくところがとても説得力があって楽しめた。
なんだかんだでグロ描写が刺激的で良かった。男女関係なく無残に死んでいく。一方でエロはそんなに大したことはなかった。絵的にみんなそこそこかわいいのだけど、裸や下着姿はわりとあっさりした線で描かれていて大してエロさを感じない。
島の謎については、最後のオチだけは評価が分かれると思うけれど、途中までは割といい感じで楽しめた。
幼馴染の赤神りおんを横恋慕しようとした男に対して主人公の仙石アキラが「俺の女だ!」と言い、それを気絶したフリした赤神りおんがひそかに聞いていてニンマリするシーンがすごく良かった。でもこの状況を楽しむには多分想像力が必要だと思う。仙石アキラと赤神りおんのそれぞれの気持ちの描写が足りてないから。
というわけで、そんな雑な部分を補って楽しむ自信があるなら、あるいはあまり深く考えずに軽く読むのであれば、それなりに面白い作品ではあると思う。