マンガ
学園もの
ちょっとかわいいアイアンメイデン
原作:深見真 漫画:α・アルフライラ (角川書店 角川コミックス・エース・エクストラ)
まあまあ(10点)
2016年3月20日
小中高一貫のお嬢様学校の中等部に入学した武藤結月は、少女同士の恋愛に憧れる変わった少女だった。早速魅力的な先輩に声を掛けられたが、誘われた先は「拷問部」という秘密の部活だった。少年マンガ。
百合もの(女同士の同性愛を扱った作品)と学園ものとSMものが好きな自分にとって夢のような作品がここにあったので、その存在を知ると同時に即行手を出して読んだ。…まあいいんじゃないかと思う。
ベースはギャグマンガになっていて、一応常識人枠の主人公の少女が、わけもわからずなんでも「拷問」にしてしまう「拷問部」の面々に振り回される話が展開される。一見上品そうな良家のお嬢様やかわいい妹系の後輩の少女なんかが、平気な顔をして拷問具なんかについて話をするのを見て、主人公の少女がドン引きする。
拷問部というのはそもそもどんな部活なのかというと、戦前の日本に実際にあったスパイ養成学校として有名な陸軍中野学校に、架空の女子部があってそれが前身となっている学園に秘密裏に受け継がれてきた団体で、生徒会の依頼で学園の自治を裏で支えるとともに、日本の裏社会に優秀な人材を輩出しつづけているという設定になっている。活動内容は、自白させる拷問技術を磨くこと。男子はいない(?)。
どうやって練習するかというと、基本的には部員同士で役割を決めて実際に拷問しあう。それと、たまに生徒会から依頼されて実際に被疑者を拷問する。拷問というと肉体的に痛めつけてしまうのでそんな活動成り立つのかと思うところなのだけど、実際にやるのは体を拘束してせいぜいムチで叩くぐらい。
拷問はSMとは異なるのだけど、行為自体は互いに似ているので、取り違えることをギャグにしている。拷問の技術を磨く活動なのに、ムチで叩いているうちに興奮してきたり、逆におねえさまに叩かれたいと想像して恍惚としたりする。主人公も最初は引いていたけれど、実際にムチで先輩を叩いてみたら何か目覚めそうになってて笑った。
エロマンガなんじゃないの?と思うところだけど、そんなにエロいシーンは出てこない。素っ裸ではなくて最低でも水着を着ているし、SMじゃないので着衣のほうが多いと思う。また、登場人物に露骨なサディストはおらず、せいぜい隙のない先輩に毎回返り討ちに遭う程度か。
そもそも扱っている内容が内容だけに、作者は意識してセーブしていると思う。拷問シーンの描写は1コマかそこらで切り上げて省略され、すぐに話が進むことが多い。あくまでこの作品はギャグマンガなので、エロ需要を満たすようには作っていないみたい。
拷問部のライバルとして「洗脳部」が出てくる。そっちのほうが科学的で実用的な感じではあるけれど、どっちもダメじゃん的なところがウケる。互いに部員を拉致ってちょっかい掛け合う。生徒会の会長派と副会長派のそれぞれ手駒となっているけれど、そんなに大きな話はいまのところ展開されていない。
サブカルチャーというかマンガや小説のネタがちょこちょこ出てくる。でもニヤリとさせられるというよりも、ここでこの作品が出てくるんだ、と割と冷めた感じで受け止めることが多かった。
なんていうか、一言で言うと色々つたないと思う。自分にとってどのあたりが気になるのかちょっと分析してみたところ、出てくる登場人物がみんな安易に変態に描かれていて、いまいち愛着が持てないのが大きいと思う。基本的に4コママンガなので毎回毎回オチに持っていくことの繰り返しになるからなのか、全体的にハイテンションで自分はついていきにくかった。そんなに毎回主人公の少女に大声で突っ込ませなくてもいいんじゃないのと思ったり。あと、誰と誰とは好き同士といった人間関係が濃すぎて詰め込み過ぎな感じがして食傷気味だった。
完全に巻き込まれ型のかわいそうな少女を一人用意して毎回被害に遭うみたいな感じにすれば割と鉄板な気がするんだけど、禁じ手にでもしたんだろうか。えびはら武司「まいっちんぐマチコ先生」ほど主人公の少女は被害に遭わないし。
この作品のすごいところは、「SM的な要素」ではなく「拷問」そのものを扱っちゃってるところだと思う。拷問やSM的なものの魅力は、「まいっちんぐマチコ先生」でのイタズラみたいなものでも表現できると思うし、そのほうが一般受けすると思うのだけど、そこをあえてなのかよほど拷問文化が好きなのか、作者がストレートに拷問を扱っているところにこだわりがある。とはいっても本物の拷問を扱いたければそういう作品を描けばいいわけで、三浦建太郎「ベルセルク」でグリフィスが受けたようなただ苦痛を与えるためだけの拷問を描くのもあると思うのだけど(あれには引いた)、そういうものを描きたいのではないみたいで、なんというか学術的な紹介が近い。それが作品として面白いかどうかは置いておいて、描きたいものを描いているんだなあと思った。
絵は正直好みではなかった。なんだろう、ちょっとバランスが悪いというか、率直に言うと安っぽいエロマンガ的な絵だと思う。でも主人公の少女は表情豊かでまあまあかわいい。あと、なんだかんだでたまに練習台になる先輩が色っぽい。
とまあそんなわけで、この手の作品がよっぽど好きになれそうな人でない限り、まったく触れないでいい作品だと思う。自分も正直出会わなくてもいい作品だと思った。でも応援はしたい。
百合もの(女同士の同性愛を扱った作品)と学園ものとSMものが好きな自分にとって夢のような作品がここにあったので、その存在を知ると同時に即行手を出して読んだ。…まあいいんじゃないかと思う。
ベースはギャグマンガになっていて、一応常識人枠の主人公の少女が、わけもわからずなんでも「拷問」にしてしまう「拷問部」の面々に振り回される話が展開される。一見上品そうな良家のお嬢様やかわいい妹系の後輩の少女なんかが、平気な顔をして拷問具なんかについて話をするのを見て、主人公の少女がドン引きする。
拷問部というのはそもそもどんな部活なのかというと、戦前の日本に実際にあったスパイ養成学校として有名な陸軍中野学校に、架空の女子部があってそれが前身となっている学園に秘密裏に受け継がれてきた団体で、生徒会の依頼で学園の自治を裏で支えるとともに、日本の裏社会に優秀な人材を輩出しつづけているという設定になっている。活動内容は、自白させる拷問技術を磨くこと。男子はいない(?)。
どうやって練習するかというと、基本的には部員同士で役割を決めて実際に拷問しあう。それと、たまに生徒会から依頼されて実際に被疑者を拷問する。拷問というと肉体的に痛めつけてしまうのでそんな活動成り立つのかと思うところなのだけど、実際にやるのは体を拘束してせいぜいムチで叩くぐらい。
拷問はSMとは異なるのだけど、行為自体は互いに似ているので、取り違えることをギャグにしている。拷問の技術を磨く活動なのに、ムチで叩いているうちに興奮してきたり、逆におねえさまに叩かれたいと想像して恍惚としたりする。主人公も最初は引いていたけれど、実際にムチで先輩を叩いてみたら何か目覚めそうになってて笑った。
エロマンガなんじゃないの?と思うところだけど、そんなにエロいシーンは出てこない。素っ裸ではなくて最低でも水着を着ているし、SMじゃないので着衣のほうが多いと思う。また、登場人物に露骨なサディストはおらず、せいぜい隙のない先輩に毎回返り討ちに遭う程度か。
そもそも扱っている内容が内容だけに、作者は意識してセーブしていると思う。拷問シーンの描写は1コマかそこらで切り上げて省略され、すぐに話が進むことが多い。あくまでこの作品はギャグマンガなので、エロ需要を満たすようには作っていないみたい。
拷問部のライバルとして「洗脳部」が出てくる。そっちのほうが科学的で実用的な感じではあるけれど、どっちもダメじゃん的なところがウケる。互いに部員を拉致ってちょっかい掛け合う。生徒会の会長派と副会長派のそれぞれ手駒となっているけれど、そんなに大きな話はいまのところ展開されていない。
サブカルチャーというかマンガや小説のネタがちょこちょこ出てくる。でもニヤリとさせられるというよりも、ここでこの作品が出てくるんだ、と割と冷めた感じで受け止めることが多かった。
なんていうか、一言で言うと色々つたないと思う。自分にとってどのあたりが気になるのかちょっと分析してみたところ、出てくる登場人物がみんな安易に変態に描かれていて、いまいち愛着が持てないのが大きいと思う。基本的に4コママンガなので毎回毎回オチに持っていくことの繰り返しになるからなのか、全体的にハイテンションで自分はついていきにくかった。そんなに毎回主人公の少女に大声で突っ込ませなくてもいいんじゃないのと思ったり。あと、誰と誰とは好き同士といった人間関係が濃すぎて詰め込み過ぎな感じがして食傷気味だった。
完全に巻き込まれ型のかわいそうな少女を一人用意して毎回被害に遭うみたいな感じにすれば割と鉄板な気がするんだけど、禁じ手にでもしたんだろうか。えびはら武司「まいっちんぐマチコ先生」ほど主人公の少女は被害に遭わないし。
この作品のすごいところは、「SM的な要素」ではなく「拷問」そのものを扱っちゃってるところだと思う。拷問やSM的なものの魅力は、「まいっちんぐマチコ先生」でのイタズラみたいなものでも表現できると思うし、そのほうが一般受けすると思うのだけど、そこをあえてなのかよほど拷問文化が好きなのか、作者がストレートに拷問を扱っているところにこだわりがある。とはいっても本物の拷問を扱いたければそういう作品を描けばいいわけで、三浦建太郎「ベルセルク」でグリフィスが受けたようなただ苦痛を与えるためだけの拷問を描くのもあると思うのだけど(あれには引いた)、そういうものを描きたいのではないみたいで、なんというか学術的な紹介が近い。それが作品として面白いかどうかは置いておいて、描きたいものを描いているんだなあと思った。
絵は正直好みではなかった。なんだろう、ちょっとバランスが悪いというか、率直に言うと安っぽいエロマンガ的な絵だと思う。でも主人公の少女は表情豊かでまあまあかわいい。あと、なんだかんだでたまに練習台になる先輩が色っぽい。
とまあそんなわけで、この手の作品がよっぽど好きになれそうな人でない限り、まったく触れないでいい作品だと思う。自分も正直出会わなくてもいい作品だと思った。でも応援はしたい。