マンガ
ナナのリテラシー
鈴木みそ (エンターブレイン BEAM COMIX)
まあまあ(10点)
2016年11月13日
高校生女子のナナこと許斐七海が、職場体験としてコンサルタント事務所に行くと、寝具にくるまった全裸の男が床に寝転がっていた。その男・山田仁五郎に導かれて、出版社やゲーム会社の内幕について知り、一緒に打開策を見つけていく。少年マンガ。
ゲームやデジタル関係に強いルポマンガのベテラン作家・鈴木みそが、最近の電子書籍やスマホゲームの現状と未来について物語仕立てで描いた作品。自分はこの人の作品が大好きなのですぐ手に取った。相変わらず面白かった。でも最後は打ち切りになったらしい。
ちなみに最近、電通の新入社員が過労で自殺した問題で、電通の宴会芸のエグさについてこの作者がもう十年以上前に描いた作品が2ちゃんねる(巨大掲示板)なんかで注目されていて、作者のなんにでも切り込んでいく姿勢にあらためて感服した。
主人公のナナが、ちょっと生意気なショートカットのクール系美女で、大人の社会に戸惑いながらも自信を持ってグイグイと踏み込んでいく。作者はいくらでも萌え絵を描ける人なのに、いまどきの売れ線の萌えヒロイン像なんて無視して描くところがかっこいい。自分はこういうクールでたまにつまずくヒロインが大好きだから良かった。
業界話がとにかく面白い。電子書籍が今度こそ拡大していっていることをちゃんと数字を示しながら解説しているし、その中で架空の「鈴木みそ吉」先生が何をやってどの程度成功したのかをきわめて具体的に描いている。epub形式のファイルの作り方からAmazonを介しての販売の仕方まであけすけに。もう出版は誰にでもできるようになったけれど、話題性がなければ人々の目に触れることなく埋もれてしまうという現実を突き付ける。
電子書籍編がひと段落つくと次はゲーム会社編になる。スマートフォン向けのゲームがこれまでのゲーム開発とどう違うのか、というところから丁寧に分かりやすく解説し、その中で新旧の価値観が衝突する架空のゲーム会社での騒動が描かれる。お金で攻略できるゲームの不毛さを嘆くベテランと、多くの人がすぐに楽しめるスマホゲームの手軽さを良さとして訴える若手。
ここまではすごく面白かったのだけど、以降つまらなくなっていく。政治の話になり、日本はこれからどうするべきかみたいな話になるのは興味深いのだけど、物語としては面白くない。個人的には、日本だけ縮小し続けているゲーム市場の問題点やこれからについてもっと踏み込んでほしかった。あれだけ面白いものを作っていた人たちはどこへ行って何をしているのだろう?
ナナが自分の今後のことを考えて動きだすのだけど、ここまで読んできてナナがどういう人間なのかが自分にはよくわからなかった。たとえばこういう女の子はこういう性格だと生きにくいはずであり、そんな彼女の健気な物語みたいなものが欲しかったんだと思う。じゃないと、どうして彼女がこの道に進みたいのか感情移入できないし、彼女のことを好きになれないから。
所長の仁五郎が変わり者の天才なのだけど、なんだかんだで無害(最初下着を覗くけど)な人なので単なる天才アピールにしかなってない。突拍子もないことを言うのかと思ったら、クライアント(顧客)のことを考えて発言をオブラートに包んでみせるし、若さゆえに極論に走り勝ちなナナをたしなめる役割をになっている。頭の固い常識人の助手に支えさせて当人は暴走したほうが面白かったんじゃないだろうか。経理と事務をやってるお姉さんが出てくるのだけど話にあんまり絡んでこない。まあそもそもコンサルタントなんてものが変わり者の天才には向いていない職業なので、最初から設定自体に無理があったのかもしれない。
そんなわけで、物語を楽しみたい人にはあまり勧められないけれど、電子出版やゲーム業界について興味がある人はぜひ読んで欲しい。
ゲームやデジタル関係に強いルポマンガのベテラン作家・鈴木みそが、最近の電子書籍やスマホゲームの現状と未来について物語仕立てで描いた作品。自分はこの人の作品が大好きなのですぐ手に取った。相変わらず面白かった。でも最後は打ち切りになったらしい。
ちなみに最近、電通の新入社員が過労で自殺した問題で、電通の宴会芸のエグさについてこの作者がもう十年以上前に描いた作品が2ちゃんねる(巨大掲示板)なんかで注目されていて、作者のなんにでも切り込んでいく姿勢にあらためて感服した。
主人公のナナが、ちょっと生意気なショートカットのクール系美女で、大人の社会に戸惑いながらも自信を持ってグイグイと踏み込んでいく。作者はいくらでも萌え絵を描ける人なのに、いまどきの売れ線の萌えヒロイン像なんて無視して描くところがかっこいい。自分はこういうクールでたまにつまずくヒロインが大好きだから良かった。
業界話がとにかく面白い。電子書籍が今度こそ拡大していっていることをちゃんと数字を示しながら解説しているし、その中で架空の「鈴木みそ吉」先生が何をやってどの程度成功したのかをきわめて具体的に描いている。epub形式のファイルの作り方からAmazonを介しての販売の仕方まであけすけに。もう出版は誰にでもできるようになったけれど、話題性がなければ人々の目に触れることなく埋もれてしまうという現実を突き付ける。
電子書籍編がひと段落つくと次はゲーム会社編になる。スマートフォン向けのゲームがこれまでのゲーム開発とどう違うのか、というところから丁寧に分かりやすく解説し、その中で新旧の価値観が衝突する架空のゲーム会社での騒動が描かれる。お金で攻略できるゲームの不毛さを嘆くベテランと、多くの人がすぐに楽しめるスマホゲームの手軽さを良さとして訴える若手。
ここまではすごく面白かったのだけど、以降つまらなくなっていく。政治の話になり、日本はこれからどうするべきかみたいな話になるのは興味深いのだけど、物語としては面白くない。個人的には、日本だけ縮小し続けているゲーム市場の問題点やこれからについてもっと踏み込んでほしかった。あれだけ面白いものを作っていた人たちはどこへ行って何をしているのだろう?
ナナが自分の今後のことを考えて動きだすのだけど、ここまで読んできてナナがどういう人間なのかが自分にはよくわからなかった。たとえばこういう女の子はこういう性格だと生きにくいはずであり、そんな彼女の健気な物語みたいなものが欲しかったんだと思う。じゃないと、どうして彼女がこの道に進みたいのか感情移入できないし、彼女のことを好きになれないから。
所長の仁五郎が変わり者の天才なのだけど、なんだかんだで無害(最初下着を覗くけど)な人なので単なる天才アピールにしかなってない。突拍子もないことを言うのかと思ったら、クライアント(顧客)のことを考えて発言をオブラートに包んでみせるし、若さゆえに極論に走り勝ちなナナをたしなめる役割をになっている。頭の固い常識人の助手に支えさせて当人は暴走したほうが面白かったんじゃないだろうか。経理と事務をやってるお姉さんが出てくるのだけど話にあんまり絡んでこない。まあそもそもコンサルタントなんてものが変わり者の天才には向いていない職業なので、最初から設定自体に無理があったのかもしれない。
そんなわけで、物語を楽しみたい人にはあまり勧められないけれど、電子出版やゲーム業界について興味がある人はぜひ読んで欲しい。