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女騎士さん、ジャスコ行こうよ 2巻まで

伊藤ヒロ (KADOKAWA メディアファクトリー MF文庫J)

まあまあ(10点)
2017年2月20日
ひっちぃ

異世界から来たというお姫様と女騎士が、日本のド田舎の高校生・瀬田麟一朗のもとに居候しているのは、祖国を蹂躙されて亡命してきたからだった。同じ町内にはなぜか色んな異世界から亡命者が集まり、宇宙人やファンタジーの世界の住人らが時にいがみあいながら仲良く暮らしているのだった。ライトノベル。

女騎士というファンタジー世界の魅力的な住人を、日本の代表的なショッピングセンターだったジャスコに連れていくという、意味不明ながらも惹かれる題が気になって手に取った。まあまあ面白かった。

高校生の瀬田麟一朗は祖母と二人暮らしをしているのだけど、この祖母というのがちゃっかりしたばあさんで、あれやこれやと言いくるめて居候の女騎士をこき使っているのが面白い。女騎士クラウは戦いになると非常に強い力を発揮するのだけど、世間知らずで真面目なので簡単にだまされる。また、瀬田麟一朗と接することで初めて異性を意識するようになったせいか、色々と混乱して色欲をヘンな方向で満たそうとする。最近の作品にこういう変わった女キャラが増えていて面白いのだけど、この作品に関して言えば針が振れ過ぎていていまいちだと思った。たぶん作者はギャグ重視で書いているのだけど、自分は異性キャラの魅力的な奇行を楽しみたかったので期待が外れた。

お姫様は幼女なのだけどいち早くこの世界になじみ、ネットなどの現代の知識に詳しくなっている。わがままでお調子者なので周りを振り回す。特に女騎士クラウはお姫様に忠誠を誓っているので苦労している。王族なのにちゃっかりしているというかスケールが小さいところが面白い。

幼馴染の宮藤みやの家には、銀河広域軍事帝国ハーストゥールの残党が第八皇女を擁して居候していたり、クラスメイトに海底国家アトランティスの美女(?)がいたりと、人口800人程度の過疎の村を賑やかにしている。村に大型のショッピングセンターを誘致しようとして戦争になるのがウケる。各勢力の中に自由フランス国民会議という現実にあった勢力が紛れ込んでいて、弱すぎてネタにされているところが笑った。

ド田舎あるあるの中に宇宙人などの異世界人たちが平然と溶け込んでいるのがこの作品の面白いところで、二巻では村おこしに便乗して宇宙のテレビ局がやってきて好き放題やったりする。ギャグのためならなんでもやるっていう感じ。感動とか恋愛とかの要素はほとんど期待しないほうがいいと思う。二巻では生き別れのなになにが出てくるのだけど、ぴくりとも感動できなかった。感動要素それ自体をもギャグに結び付けたいんだと思う。

読んでいて面白いのは確かなんだけど、女騎士クラウにもっと萌えたかったなあとか、ここでは感動させてほしかったなあとか、作品の方向性なんだろうから仕方ないんだろうけど、欲求不満になることが多かった。ギャグもすごく面白いわけでもなくて、笑えるなあという程度なので、これ以上読み進めてもしょうがないと思って2巻でやめた。

題からすると、世間知らずの女騎士とショッピングセンターでデートする、みたいな話を期待してしまうのだけど、そんなシーンは全然なかった。

お姫様と女騎士が王国から逃げてくる日のシーンが挿入されるのだけど、あまりの中二病な描写っぷりにちょっとクラっときた。この作品が全力ギャグでこれが全部前フリだと分かって納得した。

なんでもアリのドタバタ劇を楽しみたい人には勧められるけれど、それ以外の要素でも楽しみたいという人は読んでも肩透かしだと思うので、別の作品を当たった方がいいと思う。

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