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P7 Wireless

Bowers & Watkins

まあまあ(10点)
2017年7月29日
ひっちぃ

スピーカーで有名なイギリスの音響機器メーカーB&W(Bowers & Watkins)が、最近になってヘッドフォンを作り始めた。その中の上位機種P7を、Bluetoothによる無線接続に対応させたのがこのモデル。スピーカーで培った技術をつぎ込み、黒い牛革とシルバーの金属パーツで大人っぽく仕上げている。

急にワイヤレスヘッドフォンが欲しくなったところへ、ちょうどフジヤエービックのセールでこのモデルが安く出ていたので衝動買いした。以前TBS「マツコの知らない世界」のヘッドフォン特集で取り上げられており、マツコデラックスが家でB&Wのスピーカーを使っていたせいかマツコが絶賛していたほか、自分もかつてB&Wのスピーカーの入門モデルCDM1NTを愛用していたこともあって気になっていた。

下位機種のP3やP5はオンイヤー型つまり耳に当てるタイプで、まるでハンペンのようなイヤーパッドがかっこ悪く、音も良くなさそうに見えたのでノーマークだった。しかしこのP7はオーバーヘッド型つまり耳を包み込むタイプで、正直デザインはまだいまいちだったけれど、音は良さそうな感じがしたので気になっていた。最近よく読んでいる個人ブログSandal Audioでの好意的な紹介も後押しした。

正直そんなに音質には期待していなかったのだけど、五万クラスのヘッドフォンにしては十分すぎるほど音がいいと思う。Sennheiser HD650やAKG K701といったちょっと前までの定番の上位モデルよりもそつのない良い仕上がりだと思う。HD650は解像度が高いけれど中低域が不自然に厚い上に高域が伸びないだとか、K701はアコースティックな音をきれいに鳴らしてくれるけれどノイズ系の音が不自然だとか、そういった目立った欠点がこのP7にはないと思う。十万クラスのBeyerdynamic T1を聴いたあとでもそれほど聴き劣りしないし。ちょっと特定の周波数に偏りがあるかなという程度で、おおむねフラットに鳴っていると思う。特に高域が伸びていて気持ちいい(ちょっとシャリついている感はあるけれど)。中域はK701のように若干音を響かせている感じがしていて気持ちよく、かといってそれほど不自然ではない。よくチューニングされている感じがする。

ウリであるBluetoothによる無線接続だと多少音質が落ちるけれど、そんなに変わらないと思う。Bluetoothはデジタル信号を無線で送るので、専用のDACとアンプがヘッドフォン側に内蔵されていることになるのだけど、これまた十分にチューニングされているのかいい音で鳴ってくれる。当然iPhoneとかスマートフォンのヘッドフォン端子なんかよりもずっといい音がする。ヘタなデジタルオーディオプレイヤーを使うよりも、普段持ち歩くiPhoneやスマホでBluetooth接続して聴いたほうがかさばらないし安くつくのでいいと思う。まあちょっと聴き込むとイコライジングなんかで多少無理して音を作っている感じが伝わってくるのだけど、逆に言うとメーカー側でセッティングしてくれているわけであり、それほどまでには気にならない。なにせ専用のアンプなのだし。

Bluetoothで接続すると、音以外にも遠隔操作ができる。右耳のハウジングの後ろ側に物理ボタンが三つついていて、上と下でボリュームの上下、真ん中のボタンで一時停止と再開、曲送りなんかができる。なにげに便利で良かった。

ただ、自分が最初に試したスマホSamsung Galaxy S6 edge (SCV31つまりau版)だとペアリング(接続)は出来ても音が出なかった。不良品かと思って購入した店のフジヤエービックに持って行って見てもらったのだけど、店にあった同じモデルのP7 Wirelessでもやはり音が出なかった。店員さんは私のスマホ(Galaxy S6 edge)が悪いのではないかと言っていたのだけど、店にあったaudio-technicaのBluetoothヘッドフォンでは音が出たし、後日SONY MDR-1000Xでも試したけれどやはり問題なく音が出た。

販売店のフジヤエービックにメーカーとのやりとりを頼んだのだけど、お客様の環境がこまごまとしているから直接メーカーとやりとりしてくれと言われた。家電量販店以下の対応にガッカリする。まあこの店はとにかく安いので手厚いサポートを期待してはいけないのだろう。そこで仕方なく言われたとおりにメーカーのページから症状を送信したところ、3営業日以内に連絡するという自動返信のメールが届いたのだが、なんと一週間たっても音沙汰がなかった。

そこでちょうどポタ研というイベントが中野サンプラザであったのでメーカーのブースに行き、代理店の社員に直接伝えたところ、すぐサポートに連絡するという。すると週明けにようやくメールで返事が来て、Galaxyシリーズで音が出ないことを確認したのでB&Wの本部に連絡して対応について回答待ちとのこと。…それからもう二週間以上経っているのだけど全然連絡が来ない。

B&Wというと数十万とか数百万もするスピーカーを売っている世界的な高級オーディオメーカーであり、その日本での代理店をやっているD&MホールディングスもDENONとMarantzという大手ブランドを抱えているこの分野での巨人なのだけど、世界で一番売れているスマホGalaxyシリーズで音が出ないという症状を確認しておきながらこの対応は本当にあきれる。

メーカーからの正式な回答がこないと分からないのだけど、おそらくこのモデルはコンテンツ保護に対応していないから音が出ないんだと思う。代理店の社員さんによる非公式な情報によると、どうやら日本のGalaxyだけ問題が出ているらしい。それは多分日本のスマホだけワンセグ(テレビ)を搭載していて、本来ワンセグの音声だけコンテンツ保護の対象になるはずなのに、それ以外の音までコンテンツ保護の対象になってしまっているから音が出ないんじゃないだろうか。であればauが悪いことになる。しかし仮にそうだとしても日本市場で売る以上はコンテンツ保護に対応しなければならず、実際に日本のSONYやaudio-technicaはちゃんと対応している。まあ以上は私の憶測なので正式な回答を待ちたい。

イヤーパッドやヘッドバンドには牛革が使われており、とても質感がいい。感触がいいだけでなく丈夫そうな感じがする。ただ、有線接続と無線接続を切り替えるためにはイヤーパッドをいったん取り外してからケーブルを着脱しなければならず、イヤーパッドを手で持って引っ張るたびに革が痛みそうな感じがする。ちなみにイヤーパッドは磁石の力で本体とそこそこ強い力でくっついている。

イヤーパッドを外したところ
中にあるジャックに付属コードを差す

付属品として他に専用のレザーケースがついている。本体を折りたたんで収納できるのだけど、P7は折りたたんでもそんなに小さくはならない。ただし空のレザーケース自体は折りたたんでぺったんこに出来るので、使用中の持ち運びは楽。逆にSONYのMDR-1000Xの場合は耳当ての部分が横に回転するので本体を薄く収納できるけれど、ケースはハードタイプなのでかさばる。

ノイズキャンセリング機能はついていないので、密閉型なのだけど通勤電車とくに地下鉄で使うのは厳しい。それまでカナル型の耳栓のようなタイプのイヤホンを使っていたので、ヘッドホンの密閉型がここまで遮蔽性が低いとは思わなかった。

というわけで、スピーカーの名門企業もハイテクには疎いようなので、Bluetooth接続にこのような罠があることを考慮しなければならないし、サポートもいまいちなので何かあったときに困ることがあるかもしれない。それを承知でならば、価格以上の満足を得られるいい製品だと思う。iPhoneしか使わない人だったら何の問題もないし。

[参考]
http://
www.bowers-wilkins.jp/Headphones/
Wireless-Headphones/
Wireless-Headphones/
P7-Wireless.html

(最終更新日: 2017年7月29日 by ひっちぃ)

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