マンガ
学園もの
あの娘にキスと白百合を 7巻まで
缶乃 (KADOKAWA MFコミックスアライブシリーズ)
まあまあ(10点)
2017年10月14日
中高大一貫校のお嬢様学校である清蘭学園の高等部に通う白峰あやかは、人望があり定期テストもずっと学年トップだったが、高等部から編入してきた黒沢ゆりねに定期テストで負けてしまう。負けず嫌いの彼女は猛勉強して次は必ず勝つと誓うが、黒沢ゆりねは涼しい顔をしてトップを取り続けるのだった。学力だけでなく運動神経も抜群な彼女は天才であり、猫のように自由に生きてはいたが友達はいなかった。百合もの(女の子同士の恋愛)マンガ。
百合ものが大好きな自分は常にアンテナを張っていて、それに引っかかった作品を読んでいるのだけど、この作品についてはもっと前に読んでいたのにそのときはレビューを書く気になれなかった。ちょっと計り知れないところがあるというのが三割だけど、なんかヘンじゃないかと思ってレビューしづらいなあというのが七割あった。続刊を読む前にもう一度一巻から再読したので今回紹介することにする。
まずは最初に紹介した白峰あやかと黒沢ゆりねの話。いわゆる秀才と天才の愛憎を描いた物語で、天真爛漫な天才に対して最初秀才は敵意を持つのだけど、そんな秀才に対して天才が逆にベタベタしてくるという甘い話。…それはいいのだけど、その過程で天才黒沢がいきなり黒い部分を見せるところに引いた。天才でこういうキャラっておかしくない?結局黒沢は秀才白峰を大好きになるのだけど、自分をいずれ負かせてくれるかもしれないからという理由のまま引っ張っていく。と同時に、彼女を天才由来の孤独から友達の輪に導いていく人も現れるけれど、それは秀才白峰ではなく別の人なのだった。ともかく、天才黒沢が二つのテンプレートを強引に張り合わせたかのような合板キャラで、読んでいてずっとモヤモヤした。
次は陸上部でボーイッシュなモテキャラの瀬尾瑞希とマネージャーですごく女の子っぽい二階堂萌の話。この二人は外見とは違ってボーイッシュな瀬尾瑞希が弱気キャラで、ガーリッシュな二階堂萌が基本的に振り回す側という、今野緒雪「マリア様がみてる」で言うところの黄薔薇姉妹を思わせるギャップがある。選手の瑞希をマネージャーの萌が世話をするというのが普通の関係なのだけど、萌が瑞希に走る意味づけから与えているというのがこの二人の特徴。また、瑞希は前述の秀才白峰のいとこでありルームメイトでもあるため、先輩なのに内弁慶な年下の白峰からもボコられるというのがウケるしかわいい。でも、ボーイッシュなキャラが好きな自分でもそんなに好きになれなかった。こいつがボーイッシュなのは外見だけだからだろうか。弱気なポイントっておいしいはずなのに。多分こいつが一体何をしたいのかあまり見えていないから好きになれないのだと思う。萌のために走るとか萌えの横にいたいとか言っているけれど、萌のことが好きという感情がいまいち自分には感じられなかった。でこいつは物語が進むと萌離れをしようとする(黄薔薇姉妹とは逆パターンだ)。熱狂的な百合好きの人たちだったらこの二人の描写だけで色々と想像するのかもしれないけれど、自分にはそこまで出来なかった。
続いて天文部の先輩後輩たち。外部の大学に進学しようとする先輩と、そんな先輩とまだ一緒にいたくて内部への進学を願う後輩がいたり、素直に先輩を見送れない後輩に対して一方的に絡んでくる中等部の自分勝手だけど熱いところもある女の子がいたりと、基本的には一対一の関係が語られるのだけどオムニバスというか連作短編で登場人物が連鎖して作品世界が広がっていく。でも話は薄くなっていくのだった。
まだまだ登場人物の輪が広がっていくのだけど、やっぱりこの作品は物語の筋がヘンだと思う。最初の登場人物である秀才白峰からして、テンプレート的に一位じゃないと意味がないみたいな感じで母親から育てられていてそれに縛られているというのが不自然でしょうがない。そんなに母親だけから好かれたいんだったら、クラスメイトの世話なんかしないで一人黙々と勉強しそうなものだし、普段みんなの前で笑っているなんてことはないと思う。陸上部のマネージャーの二階堂萌がいきなり叫ぶシーンも意味不明だった。園芸部の二人の話も、永遠がどうとか意味ありげでよく分からないことを言い出すし。
一方で、広報委員のヤンデレ妹・西河いつきとお気楽姉・伊藤紗和のコンビの話はちょっとした謎かけと展開が良かった。また、女の子はみんなかわいくて、どの話も筋と関係ないところでキャッキャしているだけの流れのときは大体楽しめた。色んな温度で繰り広げられるさまざまな百合(同性愛)の描写は美しかった。話の筋なんてオマケでしかないのかもしれない。
マンガの技法として気になったのが、時々普通の矢印を使って動きを表現していて、すっとぼけた味があって良かった。他の作家さんで使っている人もたまに見るけれど、この人は割と頻繁に使っているほうだと思う。
ちぐはぐな筋書きを流せる人ならば、魅力的なキャラたちの日常ものとして楽しめるし、なにより百合好きにとっては盛り上がるシーンがあっていいと思う(百合が嫌いな人はこれも流さないといけないけれど)。
百合ものが大好きな自分は常にアンテナを張っていて、それに引っかかった作品を読んでいるのだけど、この作品についてはもっと前に読んでいたのにそのときはレビューを書く気になれなかった。ちょっと計り知れないところがあるというのが三割だけど、なんかヘンじゃないかと思ってレビューしづらいなあというのが七割あった。続刊を読む前にもう一度一巻から再読したので今回紹介することにする。
まずは最初に紹介した白峰あやかと黒沢ゆりねの話。いわゆる秀才と天才の愛憎を描いた物語で、天真爛漫な天才に対して最初秀才は敵意を持つのだけど、そんな秀才に対して天才が逆にベタベタしてくるという甘い話。…それはいいのだけど、その過程で天才黒沢がいきなり黒い部分を見せるところに引いた。天才でこういうキャラっておかしくない?結局黒沢は秀才白峰を大好きになるのだけど、自分をいずれ負かせてくれるかもしれないからという理由のまま引っ張っていく。と同時に、彼女を天才由来の孤独から友達の輪に導いていく人も現れるけれど、それは秀才白峰ではなく別の人なのだった。ともかく、天才黒沢が二つのテンプレートを強引に張り合わせたかのような合板キャラで、読んでいてずっとモヤモヤした。
次は陸上部でボーイッシュなモテキャラの瀬尾瑞希とマネージャーですごく女の子っぽい二階堂萌の話。この二人は外見とは違ってボーイッシュな瀬尾瑞希が弱気キャラで、ガーリッシュな二階堂萌が基本的に振り回す側という、今野緒雪「マリア様がみてる」で言うところの黄薔薇姉妹を思わせるギャップがある。選手の瑞希をマネージャーの萌が世話をするというのが普通の関係なのだけど、萌が瑞希に走る意味づけから与えているというのがこの二人の特徴。また、瑞希は前述の秀才白峰のいとこでありルームメイトでもあるため、先輩なのに内弁慶な年下の白峰からもボコられるというのがウケるしかわいい。でも、ボーイッシュなキャラが好きな自分でもそんなに好きになれなかった。こいつがボーイッシュなのは外見だけだからだろうか。弱気なポイントっておいしいはずなのに。多分こいつが一体何をしたいのかあまり見えていないから好きになれないのだと思う。萌のために走るとか萌えの横にいたいとか言っているけれど、萌のことが好きという感情がいまいち自分には感じられなかった。でこいつは物語が進むと萌離れをしようとする(黄薔薇姉妹とは逆パターンだ)。熱狂的な百合好きの人たちだったらこの二人の描写だけで色々と想像するのかもしれないけれど、自分にはそこまで出来なかった。
続いて天文部の先輩後輩たち。外部の大学に進学しようとする先輩と、そんな先輩とまだ一緒にいたくて内部への進学を願う後輩がいたり、素直に先輩を見送れない後輩に対して一方的に絡んでくる中等部の自分勝手だけど熱いところもある女の子がいたりと、基本的には一対一の関係が語られるのだけどオムニバスというか連作短編で登場人物が連鎖して作品世界が広がっていく。でも話は薄くなっていくのだった。
まだまだ登場人物の輪が広がっていくのだけど、やっぱりこの作品は物語の筋がヘンだと思う。最初の登場人物である秀才白峰からして、テンプレート的に一位じゃないと意味がないみたいな感じで母親から育てられていてそれに縛られているというのが不自然でしょうがない。そんなに母親だけから好かれたいんだったら、クラスメイトの世話なんかしないで一人黙々と勉強しそうなものだし、普段みんなの前で笑っているなんてことはないと思う。陸上部のマネージャーの二階堂萌がいきなり叫ぶシーンも意味不明だった。園芸部の二人の話も、永遠がどうとか意味ありげでよく分からないことを言い出すし。
一方で、広報委員のヤンデレ妹・西河いつきとお気楽姉・伊藤紗和のコンビの話はちょっとした謎かけと展開が良かった。また、女の子はみんなかわいくて、どの話も筋と関係ないところでキャッキャしているだけの流れのときは大体楽しめた。色んな温度で繰り広げられるさまざまな百合(同性愛)の描写は美しかった。話の筋なんてオマケでしかないのかもしれない。
マンガの技法として気になったのが、時々普通の矢印を使って動きを表現していて、すっとぼけた味があって良かった。他の作家さんで使っている人もたまに見るけれど、この人は割と頻繁に使っているほうだと思う。
ちぐはぐな筋書きを流せる人ならば、魅力的なキャラたちの日常ものとして楽しめるし、なにより百合好きにとっては盛り上がるシーンがあっていいと思う(百合が嫌いな人はこれも流さないといけないけれど)。