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T60RP

FOSTEX (フォスター電機)

最高(50点)
2019年1月28日
ひっちぃ

日本のオーディオ機器メーカーのフォスター電機が、自社ブランドFOSTEXで2017年末に売り出したリスニング向けヘッドフォン。高級品に採用されることが多い平面駆動型を採用しているが、古くから製造販売してきた同社のノウハウとOEM販売も含めた膨大な生産量が可能とした量産効果により、三万円以下で手に入るコストパフォーマンスの高い一品。

平面駆動型というと最近ではアメリカのAUDEZEとか中国のHifimanなんかが知られており、ポータブルオーディオにハマっている自分としては少しでもいい音で音楽を聴きたいので常にアンテナを張っていた。しかしいままで試聴してきたHifimanのEdition XやSUNDARAはパッとせず、Shangri-Laはすごく良かったけれど値段が高すぎ(数百万)、SUSVARAも値段ほどの価値(五十万ぐらい)を見出すことができなかった。ちょっと試聴したぐらいではその価値が分かりにくいのかと思い、なにかしら所有して聴き込んでみたほうがいいんじゃないかと思ったけれど、ポンと十万以上するものを買う気になれなかった。

その後「わだぺん。」という人が描く「ミミヨリハルモニア」というマンガを読んで、そもそも平面駆動型のヘッドフォンを古くから開発していたフォスター電機という会社が日本にあり、T50RPシリーズみたいに海外で改造品が出回るくらいに大ヒット(?)したモデルがあるのを知り、それらは決して高くないことが分かった。しかし十万以上するヘッドフォンやイヤホンに慣れてしまった自分の耳が満足できる音を出すとは思えなかったので手を出すには至らなかった。

そんな自分が結局このT60RPを買うに至った理由は、最近よく読んでいるオーディオブログSandal Audioでこのモデルを十万クラスと比べられるほどの音だと持ち上げてられていたからだった。2018年はイヤホンなら結構買ったのだけどそういえばヘッドフォンは何も買わなかったので、三万ぐらいだしちょっと買ってみるかと思ってヨドバシのネット通販でポチッた。

うちで一番いい音を出すヘッドフォンアンプは多分C.E.C.のDX71mk2というDACのヘッドフォン端子なので、まずはそいつにつなげて聴いてみたところ、平面駆動型の特徴なのか爽快な音が出てきたのでまずはホウと感心した(上から目線)。でも、そのあと比較のために普段使っているBeyerdynamic T1(初代)に切り替えたところ、あーなんかT60RPはやっぱりちょっと音が軽いな、面白い音は出るけれどしょせん三万クラスの域は出ないなとちょっとガッカリした。まあでも使い分けは出来るし、これはこれでいい音だからまずまずいい買い物だったなと思いつつ、さすがT1ドイツの科学力はやっぱり世界一だな(?)と思ったのだった。

しかしそのあと他のヘッドフォンアンプとかにつないで色々試しているうちに、RME Fireface UCとつないだら相性抜群なのかすごく分かりやすくて気持ちいい音が出たのでびっくりした(そういえばRMEもドイツのメーカーだな)。Sandalさんが言うにはT60RPでいい音を出すには結構強力なアンプが必要とのことで、この人は確か三十万以上するヘッドフォンアンプにつないで聴いていたみたいだった。Firefaceはヘッドフォン出力の評判はいいもののそもそも音楽制作用のDACなのでパワーが強いとは思えない。まあヘッドフォンの駆動に必要な電力なんてたかが知れているし回路次第なので実はこいつも強力なのかもしれないけれど、独自のDSPによってDAコンバートされる同社の機器の仕組みと相性が良かったんじゃないだろうか。こいつにT1をつないでも大していい音にならないし。とにかくこの組み合わせがうちで一番いい音のヘッドフォンになった。

T60RPの最大の特徴は、高い解像度(分解能)だと思う。高域がこもらず伸びていながらそんなに刺さっていないことが、音の正確さを証明していると思う。といってもそれほど繊細な感じはしない。独特のシャカシャカ感というかクセを常に感じてしまう。この音のクセも音響的に心地よいので楽しいのだけど、自分にとっては長く聴き続けたいとは思えなかった。それとも、もっとパワーのあるアンプで鳴らすと抑えられるんだろうか。

ジャンル的には70年代のギターサウンドなんかと合いそうな気がする。オーディオテクニカのATH-ADX5000の劣化版みたいな感じ。平面駆動型はコイルを平面に敷き詰めているため、振動板を正確に揺らすのは得意みたいだけど、力が弱いせいか低域がいまいちだった。

ポータブルで鳴らすにはちょっと厳しいと思う。Fiio X7 mk2 + AM5のほかに、つい最近アメリカのアマゾンで699ドルで投げ売りされていて衝動買いしてしまったCowonのPLENUE Sという本来20万円ぐらいするデジタルオーディオプレイヤーで聴いてみてもRME Firefaceほどの音は出なかった。CHORD Mojoはパワーがあるせいかそこそこいい感じだったけれどFirefaceにはやはり及んでいない感じ。というかそれ以前にこいつはセミオープン型なので外で聴くと多分音漏れするし騒音で音も悪くなるから家専用だと思う。まあクローズ型でもノイズキャンセリング機能がないと厳しいだろうし。

というわけでこのT60RPは高コスパだけどマニア向けのヘッドフォンなので、普通の人には勧めづらい。同じ三万出すならいまだとちょっと高くなるけれどSonyのWH-1000XM3あたりが一番いいんじゃないかと思う(試聴したことないけど)。メジャーなメーカー製で、ワイヤレスかつダントツのノイズキャンセリング性能の上に、sennheiser HD25と比べられるぐらい音がいいらしい。まあHD25なら二万以下で手に入るんだけど、初代1000Xを買ったのにほとんど聴いていない自分にはちょっと信じがたい。ただ、そいつを買ったあとでいいヘッドフォンアンプを買い足すことがあってもほとんど音がよくならないので、将来的にもっといい音で聴きたいのであればこのT60RPもアリだと思う。とはいっても重低音には期待できないけど。

(最終更新日: 2019年4月29日 by ひっちぃ)

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