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ダーリンは外国人

小栗左多里

傑作(30点)
2003年9月27日
ひっちぃ

外国人と結婚した女性が、連れを面白おかしく描写する作品。

このトニーという外国人がとにかく面白い。天然ボケキャラのように描かれている。彼は特別変わった人間ではないのだが、普通の日本人から見るととても変わった人に見え、そのギャップをうまく描き出している。正確のおっとりした、ヒゲもじゃもじゃの草食動物のような、でも自己主張はキッチリするという、愛されるべきキャラだ。

絵がいい。私はこの絵が気に入った。この絵の入ったマグカップがあったら買ってしまいそうだ。作者は私から見れば無名の、少なくともマンガ雑誌にバリバリ描いているような人ではなく、普通の雑誌にちょこちょこマンガを描いている人のようだ。美大出の、少し前までブラブラしていた人らしい。その点もこの作品で少しだけ語られている。私は作品中に描かれるこの人自身のキャラも好きになった。

代表的なエピソードは、結婚までの家族の描写だろう。最初外国人と結婚すると聞いて怪訝な顔をしていた母親が、トニーに会って交流していくうちに、ついには実の娘に対して「トニーにひどいことしたら許さないよ」とまで言ってしまうほど惚れ込んでしまうに至るのだ。

トニーの使うおかしな日本語もいい。本の帯びにも書かれているのでここに書くのも差し支えないだろうから書くが、まんじゅうが日持ちするかどうか訊かれて「あんこがタフ」と言ったりするのだそうだ。まあ多少なりとも英語を知っていると、この表現は別に大したことなかったりするが、語感で笑ってしまった。

もともとイラストレーターなのかなと思って読んでいたが、マンガとしてとてもしっかりしていることに感心した。シンプルなのに、マンガの技法をきっちり押さえてある。というかシンプルだから分かるのだ、コマ運びや構図やオノマトペが優れていることが。

一言注文をつけるとすれば、もう少しまとめてほしかったと思う。作者にとっては、これからも続いていく共同生活なのだから、まとめようがないのかもしれない。しかし我々読者は、この本を読み始めることでこの世界と出会い、本を閉じることでこの世界と別れる。だから、多少わざとらしくても、本を閉じたときの余韻をもっと感じることができたらなと思った。それとも我々はこの作品の続編を期待してもよいということなのだろうか。

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