フィクション活字
ファンタジー
乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… 4巻まで
山口悟 (一迅社 一迅社文庫アイリス)
傑作(30点)
2019年10月7日
8歳の公爵令嬢カタリナ・クラエスは、わがまま放題に育ち性格のねじ曲がった大貴族の娘だったが、転んで石に頭をぶつけたショックで前世の記憶を思い出した。この世界は前世で日本の女子高生をやっていたときに熱中していた乙女ゲー「FORTUNE・LOVER」であり、自分は主人公をいじめた結果悲惨な最後を遂げる悪役令嬢に転生していることを知る。元々小説投稿サイトで発表されたライトノベル。
題で話が面白そうだったので読んでみた。とてもおもしろかった。二巻までは。
とにかく話の筋が面白い。乙女ゲー(女性向けの恋愛ゲーム)は魔法学園に入る15歳からスタートするのだけど、その前から破滅の足音が迫っている。額に出来た傷がもとで第三王子ジオルドと婚約することになり、ゲームでは婚約者であることを振りかざしたせいで逆に王子に殺されてしまうので、必死になって婚約解消をしようとするのだけどうまくいかない。もし殺害を免れたとしても国外追放になる可能性が高いので、追放されても生きていけるよう公爵邸の広大な庭の一角に畑を作って農業を始めてしまう。
王子の婚約者になったことで一人娘である彼女が王家に嫁ぐことになったため、家を継がせるために分家から魔力の強いキース少年を養子に迎える。前世の記憶をたどった彼女は、ゲームではキースがやたら性格のねじくれた危うい美形として出ていたのを思い出し、なんとかこいつがグレないよう手を掛けて面倒を見る。
前世は女子高生とはいっても元々木登りが大好きな野生児で、オタクの友達あっちゃんの影響で乙女ゲーにハマったという恋愛経験ゼロの女なので、食い意地が張っていたり空気が読めなかったりと天然ぶりを発揮する。一人称小説なので当人と周囲とで意識のズレがあるのが面白い。
2巻から魔法学園に入学していよいよゲームの時空に突入する。入学してくる「主人公」の存在におびえる主人公。ジオルド王子を始めとした攻略対象キャラが軒並み「主人公」の魅力に惹かれていくのではないかと心配する。
異世界転生ものだと大抵主人公の能力がチート(いかさま)級に高いものなのだけど、この作品の場合公爵家の娘という血筋の優位以外には特に何もなく、容姿も頭脳も魔力も平凡なので知恵を絞るしかない。まあ実際には主人公の能天気な性格が人を惹きつけていくことになるのだけど、そんなことは知らない主人公はこざかしい知恵を絞って読者や周りの人間を失笑させる。
2巻までで物語はいったん完結というか作者的にはこれで終わりのつもりだったらしいけれど、読者なのか編集なのか分からないけれど望まれて続きを書くことになったとのこと。
3巻では主人公が誘拐される。それなのにのんきな主人公。
4巻では今度は義弟キースが誘拐される。自分に愛想をつかして出ていったと勘違いする主人公。
すごく楽しめるのは2巻までで、3巻もまあそこそこ。4巻はさすがにちょっと飽きてきた。ジオルド王子の求愛行動が進んでいくという展開はあるのだけどその程度だろうか。5巻は短編集とのことで少し読んでみたけれど、同じような話が語られるのでいったんもういいやと本を置いた。6巻あたりから新展開になるんなら続きを読みたいんだけど。
前に言ったようにこの作品は一人称小説なのだけど、主人公だけじゃなくて周囲のいろんな人が一人称をとって語りだす。一つの事件を二つ以上の視点でもう一度語るような構造になっていて、視点の違いによって行き違いの妙を楽しめるようになっているのだけど、だんだんくどく感じてくる。
出てくる人たちがみんな主人公に惚れてしまうのはどうにかならないんだろうか。みんなそれぞれの理由で主人公のことが好きになり、その理由付けというか話の内容はとてもよく出来ていて気持ちいいのだけど、さすがにうまくいきすぎだと思う。母親にはたびたび説教されるのだけど。
あっちゃんは一体どうなったのだろう。
書こうかどうか迷ったけど「土ボコ」がすごいウケた。主人公は魔力が低く、かろうじて土を少しだけ盛り上けることができるのだけど、本当に使えない魔法なので自虐を込めて「土ボコ」と呼んでいる。これに限らずギャグ全般が非常に面白かった。
女性向けの恋愛ゲームの世界を扱っているものの誰でも楽しめる間口が広くて気楽に読めるとても面白い作品なので、ぜひ読んでみてほしい。
題で話が面白そうだったので読んでみた。とてもおもしろかった。二巻までは。
とにかく話の筋が面白い。乙女ゲー(女性向けの恋愛ゲーム)は魔法学園に入る15歳からスタートするのだけど、その前から破滅の足音が迫っている。額に出来た傷がもとで第三王子ジオルドと婚約することになり、ゲームでは婚約者であることを振りかざしたせいで逆に王子に殺されてしまうので、必死になって婚約解消をしようとするのだけどうまくいかない。もし殺害を免れたとしても国外追放になる可能性が高いので、追放されても生きていけるよう公爵邸の広大な庭の一角に畑を作って農業を始めてしまう。
王子の婚約者になったことで一人娘である彼女が王家に嫁ぐことになったため、家を継がせるために分家から魔力の強いキース少年を養子に迎える。前世の記憶をたどった彼女は、ゲームではキースがやたら性格のねじくれた危うい美形として出ていたのを思い出し、なんとかこいつがグレないよう手を掛けて面倒を見る。
前世は女子高生とはいっても元々木登りが大好きな野生児で、オタクの友達あっちゃんの影響で乙女ゲーにハマったという恋愛経験ゼロの女なので、食い意地が張っていたり空気が読めなかったりと天然ぶりを発揮する。一人称小説なので当人と周囲とで意識のズレがあるのが面白い。
2巻から魔法学園に入学していよいよゲームの時空に突入する。入学してくる「主人公」の存在におびえる主人公。ジオルド王子を始めとした攻略対象キャラが軒並み「主人公」の魅力に惹かれていくのではないかと心配する。
異世界転生ものだと大抵主人公の能力がチート(いかさま)級に高いものなのだけど、この作品の場合公爵家の娘という血筋の優位以外には特に何もなく、容姿も頭脳も魔力も平凡なので知恵を絞るしかない。まあ実際には主人公の能天気な性格が人を惹きつけていくことになるのだけど、そんなことは知らない主人公はこざかしい知恵を絞って読者や周りの人間を失笑させる。
2巻までで物語はいったん完結というか作者的にはこれで終わりのつもりだったらしいけれど、読者なのか編集なのか分からないけれど望まれて続きを書くことになったとのこと。
3巻では主人公が誘拐される。それなのにのんきな主人公。
4巻では今度は義弟キースが誘拐される。自分に愛想をつかして出ていったと勘違いする主人公。
すごく楽しめるのは2巻までで、3巻もまあそこそこ。4巻はさすがにちょっと飽きてきた。ジオルド王子の求愛行動が進んでいくという展開はあるのだけどその程度だろうか。5巻は短編集とのことで少し読んでみたけれど、同じような話が語られるのでいったんもういいやと本を置いた。6巻あたりから新展開になるんなら続きを読みたいんだけど。
前に言ったようにこの作品は一人称小説なのだけど、主人公だけじゃなくて周囲のいろんな人が一人称をとって語りだす。一つの事件を二つ以上の視点でもう一度語るような構造になっていて、視点の違いによって行き違いの妙を楽しめるようになっているのだけど、だんだんくどく感じてくる。
出てくる人たちがみんな主人公に惚れてしまうのはどうにかならないんだろうか。みんなそれぞれの理由で主人公のことが好きになり、その理由付けというか話の内容はとてもよく出来ていて気持ちいいのだけど、さすがにうまくいきすぎだと思う。母親にはたびたび説教されるのだけど。
あっちゃんは一体どうなったのだろう。
書こうかどうか迷ったけど「土ボコ」がすごいウケた。主人公は魔力が低く、かろうじて土を少しだけ盛り上けることができるのだけど、本当に使えない魔法なので自虐を込めて「土ボコ」と呼んでいる。これに限らずギャグ全般が非常に面白かった。
女性向けの恋愛ゲームの世界を扱っているものの誰でも楽しめる間口が広くて気楽に読めるとても面白い作品なので、ぜひ読んでみてほしい。
(最終更新日: 2020年6月14日 by ひっちぃ)