マンガ
学園もの
ご近所物語
矢沢あい
傑作(30点)
2004年4月27日
一風変わった主人公の少女実可子が、幼なじみでマンションの真向かいに住んでいるツトム君を意識しはじめてから付き合うようになるまでの、周囲を巻き込んだラブコメディ。美術専門学校を舞台に、豊富な登場人物が一つの物語を組み上げている。
今まで友達のように一緒に遊んでいたツトム君が、最近テレビで人気のある音楽グループのヴォーカルに似てると言われ始めて人気者になり、ついには学園一のナイスバディを持つという軽そうな女まで接近してくる。そんなこんなもあって、実可子はツトムのことをこれまでとは同じ目で見られなくなり、自分の感情に気づいていく。と書くとありきたりな話のように見えるかもしれない。
主人公の性格設定が面白い。小柄で不思議少女っぽいズレた感覚の持ち主。チャームポイントはたらこくちびるか。いつも明るいが、周りの環境の変化に耐えられなくなると、突然派手なファッションを始めるという痛ましい部分もある。私はこの主人公が好きになれた。
スキの無い登場人物はいないっていうぐらい、それぞれの登場人物の長所と短所を描いている。これは非常にわたし的に満足だ。特にリサ様の弱いところはグッときた。キラキラ星人も結局やりなおしたわけだし。
何組かのカップルが生まれたり消えたりする。実は第三の主人公なんじゃないかというぐらい大活躍しているロンゲでワイルドな外見ながら繊細で人を気遣う勇介の存在が、悪く言うとこの作品自体を別の話にしてしまうんじゃないかというぐらい大きくて影響力がある。と思う。読者投票で一位になるんじゃないかと思ったが、さすがにそれは無かったらしい。
青春。この作品のテーマは青春なんだろうと思う。恋愛話はあくまでもその中の一つ。そういう見事なバランスがある。あと学園生活。こういう学園でこんな仲間と過ごしたい。そう思わずにはいられない魅力がある。学園万歳。私の嗜好にバッチリハマッた。
法司というおやじ管理人おとぼけキャラが読者にも作者にも人気があったようだが、私から見ると不可解だった。別に大したことやってないし、本当にチョイ役なんだけど…。平凡なキャラが安心できるんだろうか。
脇役といえば、ピーちゃんという、本当に美術系の学生として存在しそうな地味系のキャラも配していたところに、作者の奥の深さを感じた。主要な登場人物は大体いい感じ。
読後に全7巻を思い返してみると、どこが山場だったのかなー、という疑問も浮かばなくはないが、まとまりがあってよい作品だと思う。どこか欲求不満を感じるところがある。
何が欠けているのだろうか。
リアルな内面描写に傾きすぎているのだろうか。バディ子のどっちつかずの心情はとてもリアルだと思うのだが、そのために終盤ストーリーがぶれている。終盤のバディ子はよくわからん。だけどこのあたりが現実に近いのだろう。そう考えると逆に、話をうまくまとめることを選ばなかった作者の上手さを感じずにはいられない。
主人公実可子の心情も、私にはハッキリとは伝わってこなかった。
というわけで、私にとってこの作品は、極上とは言いがたい。
にしても、作者の矢沢あいの画力には驚嘆すべきものがある。作品ごとにタッチをここまで変えてしまえるとは。しかもただ変えるだけでなく、どれも確立させている。この作品は、とてもポップな線で描かれている。シンプルな線で、特に歩のような魅力的なキャラを、作品の途中から投入できるあたりなんか、ただただ驚くしかない。私は最近記憶力が悪いので自信はないが、矢沢あいは私が知る限り最も画力のあるマンガ家なんじゃないかと思う。
今まで友達のように一緒に遊んでいたツトム君が、最近テレビで人気のある音楽グループのヴォーカルに似てると言われ始めて人気者になり、ついには学園一のナイスバディを持つという軽そうな女まで接近してくる。そんなこんなもあって、実可子はツトムのことをこれまでとは同じ目で見られなくなり、自分の感情に気づいていく。と書くとありきたりな話のように見えるかもしれない。
主人公の性格設定が面白い。小柄で不思議少女っぽいズレた感覚の持ち主。チャームポイントはたらこくちびるか。いつも明るいが、周りの環境の変化に耐えられなくなると、突然派手なファッションを始めるという痛ましい部分もある。私はこの主人公が好きになれた。
スキの無い登場人物はいないっていうぐらい、それぞれの登場人物の長所と短所を描いている。これは非常にわたし的に満足だ。特にリサ様の弱いところはグッときた。キラキラ星人も結局やりなおしたわけだし。
何組かのカップルが生まれたり消えたりする。実は第三の主人公なんじゃないかというぐらい大活躍しているロンゲでワイルドな外見ながら繊細で人を気遣う勇介の存在が、悪く言うとこの作品自体を別の話にしてしまうんじゃないかというぐらい大きくて影響力がある。と思う。読者投票で一位になるんじゃないかと思ったが、さすがにそれは無かったらしい。
青春。この作品のテーマは青春なんだろうと思う。恋愛話はあくまでもその中の一つ。そういう見事なバランスがある。あと学園生活。こういう学園でこんな仲間と過ごしたい。そう思わずにはいられない魅力がある。学園万歳。私の嗜好にバッチリハマッた。
法司というおやじ管理人おとぼけキャラが読者にも作者にも人気があったようだが、私から見ると不可解だった。別に大したことやってないし、本当にチョイ役なんだけど…。平凡なキャラが安心できるんだろうか。
脇役といえば、ピーちゃんという、本当に美術系の学生として存在しそうな地味系のキャラも配していたところに、作者の奥の深さを感じた。主要な登場人物は大体いい感じ。
読後に全7巻を思い返してみると、どこが山場だったのかなー、という疑問も浮かばなくはないが、まとまりがあってよい作品だと思う。どこか欲求不満を感じるところがある。
何が欠けているのだろうか。
リアルな内面描写に傾きすぎているのだろうか。バディ子のどっちつかずの心情はとてもリアルだと思うのだが、そのために終盤ストーリーがぶれている。終盤のバディ子はよくわからん。だけどこのあたりが現実に近いのだろう。そう考えると逆に、話をうまくまとめることを選ばなかった作者の上手さを感じずにはいられない。
主人公実可子の心情も、私にはハッキリとは伝わってこなかった。
というわけで、私にとってこの作品は、極上とは言いがたい。
にしても、作者の矢沢あいの画力には驚嘆すべきものがある。作品ごとにタッチをここまで変えてしまえるとは。しかもただ変えるだけでなく、どれも確立させている。この作品は、とてもポップな線で描かれている。シンプルな線で、特に歩のような魅力的なキャラを、作品の途中から投入できるあたりなんか、ただただ驚くしかない。私は最近記憶力が悪いので自信はないが、矢沢あいは私が知る限り最も画力のあるマンガ家なんじゃないかと思う。