マンガ
ファンタジー
メイドインアビス 5巻まで
つくしあきひと (竹書房 BAMBOO COMICS)
駄作(-30点)
2020年10月11日
文明がいまより進んだあとで衰退した空想未来の地球で、人類は「アビス」と呼ぶ巨大な縦穴のそばに街を作り探索を続けていた。その穴の中では不思議な自然法則が働き、危険な生物たちが独自の生態系を営んで人類を拒んでいた。偉大な探検家だった母親が行方不明となった少女リコは自分も探検家になりたいと思っていたが、あるときその母親からの手紙らしきものが届けられ、少年型ロボットとともに大人たちに内緒で探検の旅に出る。ダークファンタジーマンガ。
いつだったかアニメ化されたのを見て、その不思議な世界観にちょっと惹かれたのだけど、途中に出てきたベテラン探検家の行動や言動が意味不明すぎて見ていられなくなったので視聴をやめた。その後、ステマブログ(?)が劇場版アニメ上映のタイミングで興味をかきたてるような記事を書いていたのので気になってしまいこの原作を読んでみた。後悔した。
この作品、世界観が宮崎駿「風の谷のナウシカ」に近いと思う。巨大な虫が出てきたり、少なくなった人類が不衛生な環境で生き延びていたり、限られたモノをめぐって奪い合いや殺し合いが起きたりしているところが。
主人公の少女リコは、孤児院に引き取られて暮らしながら探検家見習いとして縦穴「アビス」の低層で発掘作業を手伝っていて、見つけたものをみんなに得意げに自慢している。序盤は縦穴「アビス」がいかに不思議で魅力あふれる場所か、そして少女リコが「アビス」に対してどれだけ情熱を持っているのかが主に描かれる。
リコたちは非常に精巧な少年型アンドロイド(ロボット)を拾う。「アビス」の奥からやってきたという記憶喪失の彼のことをレグと名付け、大人たちに内緒で学校に通わせたり探検見習いに入れたりする。こいつは腕をワイヤーで飛ばして自在に機動したり手から謎の強力なビームを出したりできることから、いざというとき頼りになる存在として受け入れられていく。
あるときリコは行方不明となった母親からの手紙を受け取る。「アビス」の奥に来いというシンプルな文面を見て、いてもたってもいられなくなったリコは、子供同士で相談し大人たちに内緒で「アビス」の奥へ行くことを決心する。少年型ロボットを連れていけばいくらか安全だろうと思って。
こんな危険な場所に9歳ぐらいの子供がたった一人+一体で何日も旅をすることがそもそも信じられないし、食料が現地調達なのはいいとして少ない装備で本当にやっていけるのかという以前に、あれだけ「アビス」に情熱を持っていた少女が母親からの手紙ぐらいで無謀な探検に出かけるのだろうかと首を傾げた。要するにリコの「アビス」好きは母親のことを無意識に求めているがゆえらしい。と思ったら物語が進むと別の理由も示されるのでよくわからない。
アニメを見ていて途中でやめたところ(監視基地のオーゼン)はやはり胸糞悪かったし改めて意味不明で理解できなかったのだけど、マンガなのでサラッと読み進めることが出来た。
で問題のボンドルド卿の話まで来たのだけど、さらに胸糞悪くて意味不明な話だったので今度こそ読むのを止めることができた。
でも一部の人たちに刺さりそうだなとは思った。
多分作者は身勝手な大人たちによって暴力を受けたり取り返しのつかないことをされたりした子供たちの姿を描きたかったんだと思う。現実世界の話として描くと難しくなったり退屈になったりするので、ダークファンタジーとして誰でも分かりやすいような残虐描写で。
作者はもともとこの話を同人作品として描く予定だったというし、たぶんそのほうが良かったと思う。どうやら商業的にもそれなりに成功(?)しているようだけど、多くの人が見て楽しむような作品ではないと思う。
自分は割と恵まれている方だし大人から虐待されたとはまったく思っていないのだけど、中高生の頃よく腹が痛くてしょうがないことがあって、大人になってからそれがピロリ菌のせいだと分かったのだけど、ちょっと胃に何か入れればだいぶマシになったのに親に何度言っても何もしてもらえず、じっと我慢して授業を受け続けていた。これいま思い返してみると立派な虐待だと思う。親だけの話じゃなくて、授業中は席について黙って授業を受けろという大人社会の。
たぶん私だけじゃなくて多くの人が大なり小なりこういうことは経験していることで、こういう無意味な暴力についてどうしても気になってしまうというか、自分がかつて受けた暴力と共鳴するようなところがこの作品にはあるんじゃないだろうか。
世界中に残る多くの神話や民話なんかでも理不尽な目にあう人々の物語がいっぱいあって、果てしない時を超えてそれらの物語が残っているということはそれだけ人々の琴線に触れてきたということなのだから、きっと大きな需要があるのだと思う。
まあそれはそれとして、そういったものをより露骨で過激な形として描き出すことの是非を考えると、やっぱりそれは一部の人のためのものであって、同人作品なりアングラ芸術なりであるべきだと思う。
重要なことを言うのを忘れていたけれど、なによりこの作品はつまらない。
作者が作り出した「アビス」という未知の世界を進んでいくところはちょっとワクワクするし、描き込まれた生物や背景や小道具なんかが魅力的な世界を支えていてその点は素晴らしいと思う。でも、非情な世界なのに少女リコ自身の性格がお花畑すぎるし、大人たちの行動原理がよく分からなくて全然楽しめなかった。ハボさんみたいにやさしくて子供たちのことを尊重してくれるいい大人もいるのだけど、こいつですら何か普通じゃない感じがする。子供視点だと大人ってこんなものかもしれないけど。
「アビス」の謎のほかに、リコ自身がなんなのかという恐ろしい爆弾がこの先どうなるのか見届けたい気持ちはあるのだけど、いままで読んできた内容からして大して面白くならなさそうだと思う。リコ自身の謎について私なりに勝手に結論を出すと、人が将来何をしたいと思うようになるかなんて案外些細なことから生じているものなのだし、リコの生い立ちなんて大した問題ではないと思う。
というわけで、ここまで書いておいてなんなのだけど、この作品がちょっとでも気になっている人は放念することを勧めるし、まったく触れたことのない人はなるべく目に入らないようにしたほうがいいと思う。
いつだったかアニメ化されたのを見て、その不思議な世界観にちょっと惹かれたのだけど、途中に出てきたベテラン探検家の行動や言動が意味不明すぎて見ていられなくなったので視聴をやめた。その後、ステマブログ(?)が劇場版アニメ上映のタイミングで興味をかきたてるような記事を書いていたのので気になってしまいこの原作を読んでみた。後悔した。
この作品、世界観が宮崎駿「風の谷のナウシカ」に近いと思う。巨大な虫が出てきたり、少なくなった人類が不衛生な環境で生き延びていたり、限られたモノをめぐって奪い合いや殺し合いが起きたりしているところが。
主人公の少女リコは、孤児院に引き取られて暮らしながら探検家見習いとして縦穴「アビス」の低層で発掘作業を手伝っていて、見つけたものをみんなに得意げに自慢している。序盤は縦穴「アビス」がいかに不思議で魅力あふれる場所か、そして少女リコが「アビス」に対してどれだけ情熱を持っているのかが主に描かれる。
リコたちは非常に精巧な少年型アンドロイド(ロボット)を拾う。「アビス」の奥からやってきたという記憶喪失の彼のことをレグと名付け、大人たちに内緒で学校に通わせたり探検見習いに入れたりする。こいつは腕をワイヤーで飛ばして自在に機動したり手から謎の強力なビームを出したりできることから、いざというとき頼りになる存在として受け入れられていく。
あるときリコは行方不明となった母親からの手紙を受け取る。「アビス」の奥に来いというシンプルな文面を見て、いてもたってもいられなくなったリコは、子供同士で相談し大人たちに内緒で「アビス」の奥へ行くことを決心する。少年型ロボットを連れていけばいくらか安全だろうと思って。
こんな危険な場所に9歳ぐらいの子供がたった一人+一体で何日も旅をすることがそもそも信じられないし、食料が現地調達なのはいいとして少ない装備で本当にやっていけるのかという以前に、あれだけ「アビス」に情熱を持っていた少女が母親からの手紙ぐらいで無謀な探検に出かけるのだろうかと首を傾げた。要するにリコの「アビス」好きは母親のことを無意識に求めているがゆえらしい。と思ったら物語が進むと別の理由も示されるのでよくわからない。
アニメを見ていて途中でやめたところ(監視基地のオーゼン)はやはり胸糞悪かったし改めて意味不明で理解できなかったのだけど、マンガなのでサラッと読み進めることが出来た。
で問題のボンドルド卿の話まで来たのだけど、さらに胸糞悪くて意味不明な話だったので今度こそ読むのを止めることができた。
でも一部の人たちに刺さりそうだなとは思った。
多分作者は身勝手な大人たちによって暴力を受けたり取り返しのつかないことをされたりした子供たちの姿を描きたかったんだと思う。現実世界の話として描くと難しくなったり退屈になったりするので、ダークファンタジーとして誰でも分かりやすいような残虐描写で。
作者はもともとこの話を同人作品として描く予定だったというし、たぶんそのほうが良かったと思う。どうやら商業的にもそれなりに成功(?)しているようだけど、多くの人が見て楽しむような作品ではないと思う。
自分は割と恵まれている方だし大人から虐待されたとはまったく思っていないのだけど、中高生の頃よく腹が痛くてしょうがないことがあって、大人になってからそれがピロリ菌のせいだと分かったのだけど、ちょっと胃に何か入れればだいぶマシになったのに親に何度言っても何もしてもらえず、じっと我慢して授業を受け続けていた。これいま思い返してみると立派な虐待だと思う。親だけの話じゃなくて、授業中は席について黙って授業を受けろという大人社会の。
たぶん私だけじゃなくて多くの人が大なり小なりこういうことは経験していることで、こういう無意味な暴力についてどうしても気になってしまうというか、自分がかつて受けた暴力と共鳴するようなところがこの作品にはあるんじゃないだろうか。
世界中に残る多くの神話や民話なんかでも理不尽な目にあう人々の物語がいっぱいあって、果てしない時を超えてそれらの物語が残っているということはそれだけ人々の琴線に触れてきたということなのだから、きっと大きな需要があるのだと思う。
まあそれはそれとして、そういったものをより露骨で過激な形として描き出すことの是非を考えると、やっぱりそれは一部の人のためのものであって、同人作品なりアングラ芸術なりであるべきだと思う。
重要なことを言うのを忘れていたけれど、なによりこの作品はつまらない。
作者が作り出した「アビス」という未知の世界を進んでいくところはちょっとワクワクするし、描き込まれた生物や背景や小道具なんかが魅力的な世界を支えていてその点は素晴らしいと思う。でも、非情な世界なのに少女リコ自身の性格がお花畑すぎるし、大人たちの行動原理がよく分からなくて全然楽しめなかった。ハボさんみたいにやさしくて子供たちのことを尊重してくれるいい大人もいるのだけど、こいつですら何か普通じゃない感じがする。子供視点だと大人ってこんなものかもしれないけど。
「アビス」の謎のほかに、リコ自身がなんなのかという恐ろしい爆弾がこの先どうなるのか見届けたい気持ちはあるのだけど、いままで読んできた内容からして大して面白くならなさそうだと思う。リコ自身の謎について私なりに勝手に結論を出すと、人が将来何をしたいと思うようになるかなんて案外些細なことから生じているものなのだし、リコの生い立ちなんて大した問題ではないと思う。
というわけで、ここまで書いておいてなんなのだけど、この作品がちょっとでも気になっている人は放念することを勧めるし、まったく触れたことのない人はなるべく目に入らないようにしたほうがいいと思う。