マンガ
彼女、お借りします 18巻まで
宮島礼吏 (講談社 講談社コミックス)
傑作(30点)
2020年12月2日
大学生の木ノ下和也は女の子に思い切って告白し、この子を一生幸せにすると誓ったがたった一か月でフラれてしまう。傷心を癒やし体面を取り繕うため有料で疑似的に彼女として振る舞ってくれるレンタル彼女というサービスを利用してしまうが、やってきた女の子があまりにかわいかったのでついつい現実を見失ってしまう。少年マンガ。
アニメ化されたので見てみたら案の定とてもつらい話(?)だったので三話でいったん見るのをやめてしまったのだけど、人気作みたいだし1巻がAmazonで無料だったので読んでみたらだんだん楽しくなってきて既刊読了した。
主人公の和也は思い切って告白する勇気があり、女の子を楽しませるために必死で努力する根性もあるのだけど、ただ運悪く相手の女の子がとびっきり性格の悪い子だったせいで病んでしまう。元カノ麻美ちゃんの悪女っぷりがキツい。アメリカでは担当した声優さんがこのアニメのファンから嫌がらせを受けるほどだったという。日本では悠木碧という人気声優がやっていて、この人の声が大好きな私ですら本当に腹が立ってくるぐらい演技がすごかった。
レンタル彼女の水原千鶴は美人でスタイルがいい上に振る舞いも完璧で、和也に対しても最高の彼女を演じてみせたが、心を病んでいた和也はついつい彼女に対してレンタル彼女の虚構をあげつらってしまう。そんな和也の態度を見てプロに徹し切れていない彼女もまたキレてしまい和也は反省する。その後、まったくの偶然からオフのときの彼女とも接点ができ、なんだかんだで定期的にサービスを受けながらもオフのときのキツい彼女とも接するようになり、だんだん本気で惹かれていくのだった。
序盤は和也の友達や家族が千鶴のことを本当の彼女だと思っているのでどうにかしてごまかすのかに腐心する。特に元カノ麻美ちゃんにとっては自分に捨てられたはずの和也にこんな美人で素敵な彼女が出来たことが面白くなくて揺さぶってくる。また、家族とくに一家の中心である祖母が彼女のことを非常に気に入ってしまうため、和也と千鶴はごまかすのに苦労することになる。
このあとさらにまったく性格の異なる二人(三人?)のサブヒロインが加わって和也の生活をかき乱していく。押しが強くて和也にグイグイくる更科るかと、千鶴の後輩でレンタル彼女のくせに人見知りでほとんど人と話せない桜沢墨。自分は千鶴よりも彼女たち特に更科るかのほうを好きになった。墨ちゃんのほうはスピンオフが始まったのでやはり人気があるのだと思う。
強気な美少女の更科るかがなぜしょぼい和也のことを好きになるのかというと、生まれつき脈拍が低い彼女は体を動かすとすぐに息が切れる上に何事にも淡泊になってしまいがちで、そんな自分を変えたくてレンタル彼女をやって気持ちを高ぶらせたいと思っていたがそう簡単にはいかず、そんな中で和也と出会い彼がレンタル彼女に必死になっているのを見てドキドキしてしまう。小道具で常に自分の脈拍を測っているのがとても印象的で良かった。
それからの彼女は強引に和也の彼女(仮)におさまり、教科書的に一歩一歩和也に迫っていくが、元カノやレンタル彼女のことを諦めきれない和也にかわされていく。それでもめげない彼女が強引に迫っていく元気な姿と、ついに糸が切れて泣き出してしまう一生懸命さがとてもよかった。
というわけで序盤さえ越えれば気兼ねなく楽しめるようになってくるのだけど、読んでいてそこまで全開で楽しめない自分がいた。
一番の理由は、ヒロインの回し方が割と雑なところだと思う。
メインヒロイン(?)の千鶴の気持ちがうっすらと微妙にしか描かれていない。自分がいままでに見た名作と呼ばれる作品だとヒロインの好意が増したり一歩引いたりする一進一退の気持ちをはっきりと描いていたと思うのだけど、千鶴の場合は基本的に和也のことをナシと考えているけれどひょっとしたら的なほのめかしがちょこちょこあるだけなので非常にもやもやして気持ちが入っていけなかった。
更科るかが和也の「彼女(仮)」になってしまっているのがなんというか非常に不誠実でいたたまれない。アプローチ中とかならまだいいんだけど、仮ながら彼女ということになっているのが彼女にとっても和也にとっても微妙な関係になっていて素直に楽しめなかった。まあ良く言えばこれはラブコメの新たな様式を作ったんだと言えるかもしれないけれど、やっぱり自分にはなじめなかったのだった。
一方で桜沢墨ちゃんとの距離感は絶妙なので割と気兼ねなく楽しめたけれど、それでも和也が意図して鈍感主人公をやっているシーンにはちょっと引いてしまった。
悪女の麻美ちゃんがいまいち突き詰めきれていなくて単なるお邪魔キャラになっちゃっているうえに、扱いにくいと思ったのかだんだん空気になっていく。それでも思い出したかのようにちょっと出てきたりもする。こいつをもっと掘っていけるんじゃないかと思うんだけど難しそう。
和也が千鶴に制服デートを持ち掛けるところは読んでいて心の中でとてもニンマリしてしまった。こういうのはヒロインに強制させるのが一番だと思うのだけど、逆に千鶴がプロの余裕で普通に受け入れるところもこれはこれで良かった。
千鶴が女優を目指しているという展開が始まったときは正直ちょっと期待が下がったのだけど、その後の流れはいまの時代を切り取った読みごたえのある話が楽しめて良かった。
千鶴のオフのときの地味なメガネ姿もかわいい。千鶴に限らず絵も全般的に自分の好みだった。手間が掛かるだろうに素足をよく描いてくれるので嬉しかった。
レンタル彼女というものに対しては男性読者も女性読者も大なり小なり引いてしまうと思うんだけど、そこから始まる普通のラブコメなので敬遠せずに手に取って欲しい。
アニメ化されたので見てみたら案の定とてもつらい話(?)だったので三話でいったん見るのをやめてしまったのだけど、人気作みたいだし1巻がAmazonで無料だったので読んでみたらだんだん楽しくなってきて既刊読了した。
主人公の和也は思い切って告白する勇気があり、女の子を楽しませるために必死で努力する根性もあるのだけど、ただ運悪く相手の女の子がとびっきり性格の悪い子だったせいで病んでしまう。元カノ麻美ちゃんの悪女っぷりがキツい。アメリカでは担当した声優さんがこのアニメのファンから嫌がらせを受けるほどだったという。日本では悠木碧という人気声優がやっていて、この人の声が大好きな私ですら本当に腹が立ってくるぐらい演技がすごかった。
レンタル彼女の水原千鶴は美人でスタイルがいい上に振る舞いも完璧で、和也に対しても最高の彼女を演じてみせたが、心を病んでいた和也はついつい彼女に対してレンタル彼女の虚構をあげつらってしまう。そんな和也の態度を見てプロに徹し切れていない彼女もまたキレてしまい和也は反省する。その後、まったくの偶然からオフのときの彼女とも接点ができ、なんだかんだで定期的にサービスを受けながらもオフのときのキツい彼女とも接するようになり、だんだん本気で惹かれていくのだった。
序盤は和也の友達や家族が千鶴のことを本当の彼女だと思っているのでどうにかしてごまかすのかに腐心する。特に元カノ麻美ちゃんにとっては自分に捨てられたはずの和也にこんな美人で素敵な彼女が出来たことが面白くなくて揺さぶってくる。また、家族とくに一家の中心である祖母が彼女のことを非常に気に入ってしまうため、和也と千鶴はごまかすのに苦労することになる。
このあとさらにまったく性格の異なる二人(三人?)のサブヒロインが加わって和也の生活をかき乱していく。押しが強くて和也にグイグイくる更科るかと、千鶴の後輩でレンタル彼女のくせに人見知りでほとんど人と話せない桜沢墨。自分は千鶴よりも彼女たち特に更科るかのほうを好きになった。墨ちゃんのほうはスピンオフが始まったのでやはり人気があるのだと思う。
強気な美少女の更科るかがなぜしょぼい和也のことを好きになるのかというと、生まれつき脈拍が低い彼女は体を動かすとすぐに息が切れる上に何事にも淡泊になってしまいがちで、そんな自分を変えたくてレンタル彼女をやって気持ちを高ぶらせたいと思っていたがそう簡単にはいかず、そんな中で和也と出会い彼がレンタル彼女に必死になっているのを見てドキドキしてしまう。小道具で常に自分の脈拍を測っているのがとても印象的で良かった。
それからの彼女は強引に和也の彼女(仮)におさまり、教科書的に一歩一歩和也に迫っていくが、元カノやレンタル彼女のことを諦めきれない和也にかわされていく。それでもめげない彼女が強引に迫っていく元気な姿と、ついに糸が切れて泣き出してしまう一生懸命さがとてもよかった。
というわけで序盤さえ越えれば気兼ねなく楽しめるようになってくるのだけど、読んでいてそこまで全開で楽しめない自分がいた。
一番の理由は、ヒロインの回し方が割と雑なところだと思う。
メインヒロイン(?)の千鶴の気持ちがうっすらと微妙にしか描かれていない。自分がいままでに見た名作と呼ばれる作品だとヒロインの好意が増したり一歩引いたりする一進一退の気持ちをはっきりと描いていたと思うのだけど、千鶴の場合は基本的に和也のことをナシと考えているけれどひょっとしたら的なほのめかしがちょこちょこあるだけなので非常にもやもやして気持ちが入っていけなかった。
更科るかが和也の「彼女(仮)」になってしまっているのがなんというか非常に不誠実でいたたまれない。アプローチ中とかならまだいいんだけど、仮ながら彼女ということになっているのが彼女にとっても和也にとっても微妙な関係になっていて素直に楽しめなかった。まあ良く言えばこれはラブコメの新たな様式を作ったんだと言えるかもしれないけれど、やっぱり自分にはなじめなかったのだった。
一方で桜沢墨ちゃんとの距離感は絶妙なので割と気兼ねなく楽しめたけれど、それでも和也が意図して鈍感主人公をやっているシーンにはちょっと引いてしまった。
悪女の麻美ちゃんがいまいち突き詰めきれていなくて単なるお邪魔キャラになっちゃっているうえに、扱いにくいと思ったのかだんだん空気になっていく。それでも思い出したかのようにちょっと出てきたりもする。こいつをもっと掘っていけるんじゃないかと思うんだけど難しそう。
和也が千鶴に制服デートを持ち掛けるところは読んでいて心の中でとてもニンマリしてしまった。こういうのはヒロインに強制させるのが一番だと思うのだけど、逆に千鶴がプロの余裕で普通に受け入れるところもこれはこれで良かった。
千鶴が女優を目指しているという展開が始まったときは正直ちょっと期待が下がったのだけど、その後の流れはいまの時代を切り取った読みごたえのある話が楽しめて良かった。
千鶴のオフのときの地味なメガネ姿もかわいい。千鶴に限らず絵も全般的に自分の好みだった。手間が掛かるだろうに素足をよく描いてくれるので嬉しかった。
レンタル彼女というものに対しては男性読者も女性読者も大なり小なり引いてしまうと思うんだけど、そこから始まる普通のラブコメなので敬遠せずに手に取って欲しい。
(最終更新日: 2020年12月28日 by ひっちぃ)