ハードウェア
オーディオ・ビジュアル
Qudelix-5k
Qudelix
まあまあ(10点)
2020年12月13日
EarStudio es100というとても小さなBluetoothレシーバーをクラウドファンディングで金を集めて作ったオーディオ会社RADSONEの開発者が独立して作った製品。まだ普通のメーカーが採用していない最新のSoCを使用して驚異の省電力を実現したほか、ESSのDACの性能を素直に引き出したという音質が特徴。平たく言うと普通の有線イヤホンをワイヤレス化できるめっちゃ小さくて音がそこそこよくてバッテリーが長持ちする機器。
世界的に一年で一番モノが安くなるブラックフライデーセールが日本でも一部で定着しつつある中で、今年は海外のも含めてポータブルオーディオでは大したセールもなかったなあと思っていたら、日本のアマゾンでこいつが二割引になっていたので一万円ちょっと出して買ってみた。今年はコロナのステイホームで意外と売れ行きが良かったからセールが渋かったのかも。
自分はこの手の製品の元祖であるEarStudio es100をShure KSE1200の外出時に使っていて、というのもKSE1200は静電容量式イヤホンと専用アンプのセットなので音を出すにはこいつをさらにデジタルオーディオプレイヤーかなにかにつなげる必要があって、そうするとケーブルがこんがらがるので無線にして一緒にポケットに入れようということになり、そのためには超小型のBluetoothレシーバーが必要なのだった。es100は最高の役割を果たしてくれたのだけど、さすがにこのサイズだけあって音はそこまで良くはなかった。その後KOWON PLENUE Sという高級なデジタルオーディオプレイヤーを買ったことによりKSE1200とes100は通勤では二軍落ちし、一週間か二週間に一回ぐらいしか持ち出さないようになってしまった(とにかくフラットなので家では他のDACにつないでリファレンス機として使ってるけど)。
それから時は流れ、各社から似たようないくつかの製品が出た。es100自体にmk2が出たほかFiioのBTR5やBRT3KやShanlingのMP4といったライバル機が生まれた。しかしmk2はわざわざ買い替えるほど進化したわけではなく、BTR5やMP4はちょっと大きくてKSE1200のアンプ部と一緒にポケットに入れるには厳しかった。で、今年になってこのQudelix-5kが出たのだった。同じ開発者が作っているだけあってサイズ感や基本的な機能はes100と非常によく似ている。
元のRADSONEも小さな会社みたいだけどどういった経緯からかそこからさらに独立してさらに小さな会社になり、確か販路も海外の直販サイトから買うしかなかったし、最初のうちは買った人も少なくてなかなか評判が聞こえてこなかったのだけど、徐々に良いという声が上がってきて、日本のアマゾンでも売られるようになった。それでもまだ自分には買う動機が薄くて、他になにかいいイヤホンやデジタルオーディオプレイヤーなんかがセールで出てこないかなと探していたのだけどめぼしいものがなかったため、何か買いたいなあと思っていたらアマゾンのブラックフライデーで二割引になったところでようやく背中を押されて買うに至った。
買うまでの話が長くなってしまったのでここからは簡潔に書くと、音質に関しては確実に一回り良くなっていると思った。音の密度感が上がったように感じた。比較対象のes100がAKMの安価なグレードのDACチップを使っているのに対してこっちはポータブル向けではあるけれどESSの音質を追求したグレードのDACチップES9218Pを二機搭載している上にアナログ回路も良くなったからだろう。ただし残念ながらバランスじゃないと二機使ってくれないらしい。アンバランスで使いたい人は二機使ってくれるShanling UP4も検討するといい。
コーデックはソニーが開発したLDACを使用した。母機はLG style3 (L-41A)という普通のスマホに買い替えた。それまで使っていたOnkyo Granbeatはバッテリーが弱ってきていたしAndroid 6なのでaptX HDまでしか使えなかった。Granbeatは割といいデジタルオーディオプレイヤーだったけど、Atlasで聴くときしか使っていなかったし、スマホとして使うにはそんなに不満はなかったけれど重くて少し不便だった。型落ちとはいえ一線級のスマホに買い替えてみて改めて普通のスマホの性能ってすごいなと思った。
本機の設定を遠隔でスマホから変更できる専用ソフトがあるのだけど、なんとAndroid 8以上じゃないと動かない。まだまだAndroid 6とか7までのスマホを使っている人もいるだろうにこの割り切りはちょっと早いと思う。特にAndroidを使っているデジタルオーディオプレイヤーなんかはスマホほどOSをバージョンアップしないので厳しいと思う。そこで自分はLG style3を買う前はiPadで専用アプリを動かして設定変更を行った。タブレットの画面サイズには対応していなかったので小さく表示されたけれど普通に使えた。
バッテリーが長持ちする。Qualcommの最新SoCであるQCC5124を使っているからみたいだ。es100だと通勤の往復と昼休みでバッテリーが40%ぐらい減り、二日使うと確実に充電する必要があったのだけど、このQudelix-5kだと一日使っても残り80%ぐらいだった。まあバッテリーは残量を多く見せかけることも出来るので実際使い続けるとどうなるか分からないのだけど、そのあと使い続けても残量がガクンと減ることもなかった。といっても結局全部使い切ったことはないのでよく分からない。
本機にはボタンが二つついていて、それぞれが上と下に押せるようになっているので実質ボタン操作を四つ行えるのだけど(長押しとか同時押しとかは除く)、両脇についているので片側のボタンを押そうとするとついついもう片方のボタンも一緒に押してしまう。慣れないと気を使う。しかもこのボタンが割と軽く、ちょっと触れるとすぐ押されてしまう。es100の場合は爪でボタンを押すぐらいの感覚だったので押しにくかったけれど、まず誤操作はしなかった。
使っていて何度か接続が切れた。接続に関してはスマホの問題もあるかもしれないのでなんともいえない。家では切れたことがないので、ボタンの誤操作か電波の問題だと思う。
es100と同じように服に止めるためのクリップがついているのだけど、金属製なのかKSE1200のアンプ部と触れてカチカチと鳴った。そんなに気にしなくていいと思うのだけど、細かいキズが付かないか心配なので、ポケットにちゃんと挟むようにしないといけないのかなと思った。まあそのうち気にしなくなりそうだけど。
10cmぐらいのケーブルが二本付いてくるのが地味にうれしい。USBのType-Cが両端についているものと、片方が普通のType-Aになっているもの。本機にはType-Cがついているので、片方がType-AになっているケーブルでPCやモバイルバッテリーにつなげられるし、両端がType-Cのケーブルは最近のスマホに有線でつなげるのにちょうどいい。有線だと普通にUSB DACとして機能する。ただし標準的なドライバで24bit 96khzまでしか対応していない。フルスペック32bit 384khzやネイティブDSDが使いたければFiio BTR5を候補に入れるといい。
aptX LLという低遅延用のコーデックに対応しておらず、代わりに最新のaptX Adaptiveというのに対応している。しかし肝心のスマホ側がほとんど対応していないので使いにくいほか、aptX LLよりもやや遅延するらしい。遅延が気になる人は実質的に有線で接続するしかない。自分はそういう使い方をしないので全然気にならないけど。
自分が使わない機能には全然興味もわかないのだけど、イコライザがついていてスマホで自在に調整できるし、コーデックの選択とかボタン同時操作のカスタマイズができる。
分かり切っていることを言うと、一万も出せば普通の人なら十分満足できるレベルのワイヤレスイヤホンが手に入るし、一万出してこいつを買って数千円程度のイヤホンを中途半端にワイヤレス化しても意味がない。こいつをつけてもスマホから線がなくなるだけでポケットからは線が出ている状態になる。それなりにいい有線イヤホンを持っていて有線でも無線でも使い分けたい人に向けた機器だから、欲しい人は限られていると思う。
ちなみに自分はいままでGranbeatという「スマホにデジタルオーディオプレイヤーがついたような機種」を使っていたので有線イヤホンはこいつに挿せばそこそこいい音で聞けたのだけど、いまは普通のスマホに乗り換えてしまったのでこのQudelix-5kの出番が出てくるかもしれない。しかし普段はPLENUE SがあるしSE100も買ってしまった(!)ので、よっぽど身軽に出かけたい時以外はこいつを使わないと思う。やはり自分にはKSE1200と組み合わせて使う以外にないんじゃないだろうか。自分みたいな使い方をしている人は少なそうなのでみんなどうやって使っているのか知りたい。Bluetoothのついていない硬派なポータブルヘッドホンアンプと組み合わせているんだろうか。
というわけで誰に勧めるのも難しい製品なのだけど、夏場なんかに身軽にスマホと組み合わせて高級な有線イヤホンで少しでもいい音で音楽を聴きたいなどの目的があるなら買ってみてもいいと思う。
世界的に一年で一番モノが安くなるブラックフライデーセールが日本でも一部で定着しつつある中で、今年は海外のも含めてポータブルオーディオでは大したセールもなかったなあと思っていたら、日本のアマゾンでこいつが二割引になっていたので一万円ちょっと出して買ってみた。今年はコロナのステイホームで意外と売れ行きが良かったからセールが渋かったのかも。
自分はこの手の製品の元祖であるEarStudio es100をShure KSE1200の外出時に使っていて、というのもKSE1200は静電容量式イヤホンと専用アンプのセットなので音を出すにはこいつをさらにデジタルオーディオプレイヤーかなにかにつなげる必要があって、そうするとケーブルがこんがらがるので無線にして一緒にポケットに入れようということになり、そのためには超小型のBluetoothレシーバーが必要なのだった。es100は最高の役割を果たしてくれたのだけど、さすがにこのサイズだけあって音はそこまで良くはなかった。その後KOWON PLENUE Sという高級なデジタルオーディオプレイヤーを買ったことによりKSE1200とes100は通勤では二軍落ちし、一週間か二週間に一回ぐらいしか持ち出さないようになってしまった(とにかくフラットなので家では他のDACにつないでリファレンス機として使ってるけど)。
それから時は流れ、各社から似たようないくつかの製品が出た。es100自体にmk2が出たほかFiioのBTR5やBRT3KやShanlingのMP4といったライバル機が生まれた。しかしmk2はわざわざ買い替えるほど進化したわけではなく、BTR5やMP4はちょっと大きくてKSE1200のアンプ部と一緒にポケットに入れるには厳しかった。で、今年になってこのQudelix-5kが出たのだった。同じ開発者が作っているだけあってサイズ感や基本的な機能はes100と非常によく似ている。
元のRADSONEも小さな会社みたいだけどどういった経緯からかそこからさらに独立してさらに小さな会社になり、確か販路も海外の直販サイトから買うしかなかったし、最初のうちは買った人も少なくてなかなか評判が聞こえてこなかったのだけど、徐々に良いという声が上がってきて、日本のアマゾンでも売られるようになった。それでもまだ自分には買う動機が薄くて、他になにかいいイヤホンやデジタルオーディオプレイヤーなんかがセールで出てこないかなと探していたのだけどめぼしいものがなかったため、何か買いたいなあと思っていたらアマゾンのブラックフライデーで二割引になったところでようやく背中を押されて買うに至った。
買うまでの話が長くなってしまったのでここからは簡潔に書くと、音質に関しては確実に一回り良くなっていると思った。音の密度感が上がったように感じた。比較対象のes100がAKMの安価なグレードのDACチップを使っているのに対してこっちはポータブル向けではあるけれどESSの音質を追求したグレードのDACチップES9218Pを二機搭載している上にアナログ回路も良くなったからだろう。ただし残念ながらバランスじゃないと二機使ってくれないらしい。アンバランスで使いたい人は二機使ってくれるShanling UP4も検討するといい。
コーデックはソニーが開発したLDACを使用した。母機はLG style3 (L-41A)という普通のスマホに買い替えた。それまで使っていたOnkyo Granbeatはバッテリーが弱ってきていたしAndroid 6なのでaptX HDまでしか使えなかった。Granbeatは割といいデジタルオーディオプレイヤーだったけど、Atlasで聴くときしか使っていなかったし、スマホとして使うにはそんなに不満はなかったけれど重くて少し不便だった。型落ちとはいえ一線級のスマホに買い替えてみて改めて普通のスマホの性能ってすごいなと思った。
本機の設定を遠隔でスマホから変更できる専用ソフトがあるのだけど、なんとAndroid 8以上じゃないと動かない。まだまだAndroid 6とか7までのスマホを使っている人もいるだろうにこの割り切りはちょっと早いと思う。特にAndroidを使っているデジタルオーディオプレイヤーなんかはスマホほどOSをバージョンアップしないので厳しいと思う。そこで自分はLG style3を買う前はiPadで専用アプリを動かして設定変更を行った。タブレットの画面サイズには対応していなかったので小さく表示されたけれど普通に使えた。
バッテリーが長持ちする。Qualcommの最新SoCであるQCC5124を使っているからみたいだ。es100だと通勤の往復と昼休みでバッテリーが40%ぐらい減り、二日使うと確実に充電する必要があったのだけど、このQudelix-5kだと一日使っても残り80%ぐらいだった。まあバッテリーは残量を多く見せかけることも出来るので実際使い続けるとどうなるか分からないのだけど、そのあと使い続けても残量がガクンと減ることもなかった。といっても結局全部使い切ったことはないのでよく分からない。
本機にはボタンが二つついていて、それぞれが上と下に押せるようになっているので実質ボタン操作を四つ行えるのだけど(長押しとか同時押しとかは除く)、両脇についているので片側のボタンを押そうとするとついついもう片方のボタンも一緒に押してしまう。慣れないと気を使う。しかもこのボタンが割と軽く、ちょっと触れるとすぐ押されてしまう。es100の場合は爪でボタンを押すぐらいの感覚だったので押しにくかったけれど、まず誤操作はしなかった。
使っていて何度か接続が切れた。接続に関してはスマホの問題もあるかもしれないのでなんともいえない。家では切れたことがないので、ボタンの誤操作か電波の問題だと思う。
es100と同じように服に止めるためのクリップがついているのだけど、金属製なのかKSE1200のアンプ部と触れてカチカチと鳴った。そんなに気にしなくていいと思うのだけど、細かいキズが付かないか心配なので、ポケットにちゃんと挟むようにしないといけないのかなと思った。まあそのうち気にしなくなりそうだけど。
10cmぐらいのケーブルが二本付いてくるのが地味にうれしい。USBのType-Cが両端についているものと、片方が普通のType-Aになっているもの。本機にはType-Cがついているので、片方がType-AになっているケーブルでPCやモバイルバッテリーにつなげられるし、両端がType-Cのケーブルは最近のスマホに有線でつなげるのにちょうどいい。有線だと普通にUSB DACとして機能する。ただし標準的なドライバで24bit 96khzまでしか対応していない。フルスペック32bit 384khzやネイティブDSDが使いたければFiio BTR5を候補に入れるといい。
aptX LLという低遅延用のコーデックに対応しておらず、代わりに最新のaptX Adaptiveというのに対応している。しかし肝心のスマホ側がほとんど対応していないので使いにくいほか、aptX LLよりもやや遅延するらしい。遅延が気になる人は実質的に有線で接続するしかない。自分はそういう使い方をしないので全然気にならないけど。
自分が使わない機能には全然興味もわかないのだけど、イコライザがついていてスマホで自在に調整できるし、コーデックの選択とかボタン同時操作のカスタマイズができる。
分かり切っていることを言うと、一万も出せば普通の人なら十分満足できるレベルのワイヤレスイヤホンが手に入るし、一万出してこいつを買って数千円程度のイヤホンを中途半端にワイヤレス化しても意味がない。こいつをつけてもスマホから線がなくなるだけでポケットからは線が出ている状態になる。それなりにいい有線イヤホンを持っていて有線でも無線でも使い分けたい人に向けた機器だから、欲しい人は限られていると思う。
ちなみに自分はいままでGranbeatという「スマホにデジタルオーディオプレイヤーがついたような機種」を使っていたので有線イヤホンはこいつに挿せばそこそこいい音で聞けたのだけど、いまは普通のスマホに乗り換えてしまったのでこのQudelix-5kの出番が出てくるかもしれない。しかし普段はPLENUE SがあるしSE100も買ってしまった(!)ので、よっぽど身軽に出かけたい時以外はこいつを使わないと思う。やはり自分にはKSE1200と組み合わせて使う以外にないんじゃないだろうか。自分みたいな使い方をしている人は少なそうなのでみんなどうやって使っているのか知りたい。Bluetoothのついていない硬派なポータブルヘッドホンアンプと組み合わせているんだろうか。
というわけで誰に勧めるのも難しい製品なのだけど、夏場なんかに身軽にスマホと組み合わせて高級な有線イヤホンで少しでもいい音で音楽を聴きたいなどの目的があるなら買ってみてもいいと思う。