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無職転生 ~ロキシーだって本気です~

作:石見翔子 原作:理不尽な孫の手 キャラクター原案:シロタカ (KADOKAWA メディアファクトリーコミックス)

いまいち(-10点)
2021年8月11日
ひっちぃ

普段はテレパシー(念話)で会話する少数民族ミグルド族に生まれながらその能力を持たずに育った少女ロキシーは、たまたまやってきた冒険家から外の世界の話を聞き、親にも告げず一人村を出る。ファンタジー小説「無職転生」の女魔術師ロキシーを主役にしたスピンオフマンガ。

本編が大好きなのでこの公式同人みたいな作品を読んでみた。正直違和感ありまくりだし話もそれほど面白くなかったのだけど、それはそれで色々と書き残しておきたいことができたので感想を書くことにする。

村を出たロキシーは、本編でも触れられていたようにノコパラ(馬面)やブレイズ(豚面)たちとパーティを組み、普通に元気のある女の子といった感じで駆け出しの冒険者としてやっていく。外見が年相応に見られず子供扱いされるたびにプンプン怒り、親切にされると顔を輝かせてお礼を言う。何度か悲しい目にあい落ち込むけれど、そのたびに周囲の支えもあって立ち直っていく。

パーティが解散して魔大陸を出て人間の国に行くと、魔族である彼女が差別を受けるが、そんな中でも親切に接してくれる人もいる。旅の途中で盗賊の一人を殺してしまって少し悩んだり、ちょっと気になる渋い男にときめいてみたり、お忍びの王女様と一緒に小さな依頼をこなそうとしてトラブルにあったり、旅に出るきっかけとなった冒険家と再会して認識を改めさせられたりと、若いロキシーを揺さぶる事件が次々とおこり、揺れ動くロキシーを愛でる展開が続く。

魔法大学に入学してからは、偏屈な師と出会って交流を深めていく一方で、ルームメイトとなる一見怠惰なランレッタの世話を焼いたり、図書館から本を盗んだ濡れ衣を着せられるのでそれを晴らそうとして人情ものの話になったりする。

そうじゃない!そうじゃないんだよ!!

こじらせたファンみたいなことを言ってしまったけれど、作者は作者であの幼い外見なのに落ち着いている女魔術師ロキシーの少女時代の話を、本来は明るい性格をした一人の女の子だったという解釈で描いてみせているわけだから、もうそこは戦争…じゃなくて受け入れがたい溝があるということで読むのをやめればよかったのだろうか。

ロキシーが幼少期一人孤独だったことや、旅人の話に導かれるようにして村を出るところは良かったんだけど、にしては彼女の性格が明るすぎると思う。両親とはそれなりに明るく会話していたようなのだけど、村の人たちとほとんど普通に会話できていなかった子供があそこまで感情豊かに育つものなんだろうか。親にも告げずに家を飛び出すぐらいだから親との関係もそんなにうまくいっていなかったと思う。本編のロキシーの性格とつながらないように思えて違和感を持った。

やはりロキシーのことを主人公属性のある元気な女の子にしてしまった時点で問題があったんじゃないだろうか。

本編を見るとロキシーは出来ない人間には冷たいし(ルディと比較したあとだからか?)、田舎者なので王族なんてよく分かっていないはずだし、あんまり人の機微とか分からないからおせっかいをしてまで誰かを助けようみたいな情動は希薄だし、そもそも年を取って落ち着いたのではなくて元々あまり感情の起伏がなかったと考える方が自然じゃないだろうか。ミグルド族が滅びたところでせいぜい両親のことが気になるぐらいだと思う。

となると作者は今後、元気な女の子だったロキシーが落ち着いた性格になった事件とかきっかけみたいなものを描くつもりなんだろうか。それとも年月が自然とそうさせただけってことにするんだろうか。

ロキシーにとって最初の「ターニングポイント」は、最初に組んだパーティの解散だと思う。すごい安直な展開であっけにとられた。唐突にパーティのメンバーが死ぬ。あれは一種の事故だと思うんだけど、ノコパラはともかくブレイズまで臆病になってしまう。本編にも似たような若者のパーティが出てくるのだけど、仲間の死に面してとても堂々とした態度で歴戦の勇士ルイジェルドすらたじろがせ、主人公ルディの反省とともに強く印象に残っている。魔大陸ってのはそういう場所じゃないだろうか。

魔法大学に入ってからのルームメイトのランレッタは怠惰な上になんでもお金で解決しようとするちょっと面白いキャラだったのだけど、この物語の中では明らかに浮いていて違和感があった。ロキシーみたいなキャラとはあんまり濃く絡んではいけないキャラだと思う。このときのエピソードには他にも色んなキャラが絡むんだけど、それぞれのキャラはそれなりにしっかりと描かれているにも関わらず、全体として話を見るとぐっちゃぐちゃな感じがした。

というわけなので、なんでもいいからロキシーの話が読みたいという一部の熱狂的なファンでない限り、この作品は読まないほうがいいと思う。

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