マンガ
ゴールデンカムイ
野田サトル (集英社 ヤングジャンプコミックス)
いまいち(-10点)
2022年5月17日
日露戦争帰りの元軍人・杉本佐一は、戦死した同郷の親友から目の悪い奥さんのことを託され、彼女の手術代を稼ぐために北海道へ砂金を取りに行ったところ、自然とともに暮らすアイヌ民族の埋蔵金の噂を耳にする。青年マンガ。
2018年にアニメ化されたので見てみたのだけど、最初は面白かったもののだんだんしょうもなく思えてきて途中で見るのをやめてしまった。今回2022年のゴールデンウィークに作品完結を記念して期間限定でなんと全巻無料で読めるというので読んでみた。やっぱりいまいちだった。
埋蔵金の隠し場所のヒントは24人の囚人に掘られた入墨なのだけど、それをめぐって陸軍第七師団の鶴見中尉の一派や戊辰戦争で死んだはずの土方歳三の一味との奪い合いになる。脱走した囚人が手掛かりなので行方を追っていれば自然とライバルたちとかち合うのだけど、毎度毎度バカみたいに遭遇しては戦うことの繰り返しでうんざりしてしまった。
ヒグマに襲われたところをアイヌの少女アシリパに助けられた杉本は、なんだかんだあって山に潜伏することになり、彼女からアイヌの狩猟生活について教わり仲良くなる。そして彼女の死んだ父親がその埋蔵金に関わっていたことを知り、彼女の父親の死の真相をさぐるため一緒に埋蔵金を追うことになる。
アシリパさんかわいい。まだ13歳だけど、父親から狩りの方法など一通りのことは受け継いでいる。瞳が青いのは大陸の血が混じっているらしい。父親が死んでから一人で生きてきたためか非常に大人びているのだけど、杉本が携帯していた味噌を見て「オソマ(うんこ)」と言ってはやし立てるなど年相応に子供っぽいところも見せる。
色んな登場人物が出てきて敵になったり味方になったりどっちか分からなかったりする。良く言えば非常にダイナミックな人間模様なのだけど、なんというか物語づくりに節操がない感じがする。
脱獄王で一攫千金を夢見るお調子者の白石、戦争が終わって故郷に帰って猟師に戻ろうとする谷垣、第七師団長の妾腹で凄腕のスナイパーの尾形、アシリパの父親の友人だったという謎多き男キロランケ、などなど色んな登場人物が出てくるのだけど、自分はいまいちこの作品のことが好きになれないので詳しく紹介する気になれない。
シリアスな展開が盛り上がっているときでも平気でギャグを放り込んでくるのが結構おもしろいんだけど、そのせいで物語自体がバカバカしく思えてしまう。
今回この原作マンガを読んでいて何度も本を置きたくなったのだけど、明治という時代とアイヌの描写が素晴らしいので結局読み進めることにした。
杉本とアシリパという二人のラブロマンス(?)として見ても中途半端で、お互いを大切に思う気持ちはある程度伝わってくるのだけど、それ以上の何かを読み取ることができなかった。
というか杉本のキャラがいまいちよく分からなかった。親友に女を譲った(?)過去を持ち、その女のために危険を顧みずに埋蔵金を追い求める男。日露戦争で大活躍し「不死身の杉本」という二つ名までもらったほどの勇猛さを持つ一方で、たった13歳のアイヌの少女に対して真剣に向き合い、まったく子供扱いせずに教えも乞う。まだ24歳で家族はもういない。
アイヌの孤児の少年チカパシの独り立ちのエピソードがすごく感動できそうだったのに、読んでいて全然盛り上がらなかった。ここに来るまでにこいつは随分空気になっていたし、心の動きも全然描写されていなかったので無理もないと思う。
アイヌ民族というのは多くの日本人にとっては未開の民族だという先入観があるはずで、どこかバカにしたような見方をしてしまいがちのように思えるのだけど、この作品に出てくる人々にはまったくそのようなところがない。取材したアイヌの人々との距離が近すぎて配慮したんじゃないかと思えてくる。まあでも逆に差別を露骨に描写するといやらしくなってしまうので、これでよかったのかもしれない。
自分は小学生の頃に3年間北海道の札幌に住んでいたので、修学旅行のときにアイヌの観光用の村に行ったことがある。いまでもかすかに映像として記憶に残っているし、ムックリという口琴の音は非常に印象に残っている。でもさすがに狩猟とか調理とかまでは見学できないので、マンガの力って大きいなと思った。実写映画化されるらしいけど、実写にするのもたぶん無理だと思う。
陸軍第七師団の鶴見中尉の描写がいまいちで、一貫していないというかつかみどころがないというか理解の難しいキャラだった。部下思いの人なのかと思いきや人を駒のように扱う人だし、取ってつけたように家族思いだという描写が入るし、埋蔵金を手に入れたらみんなに報いると言いながら部下を簡単に死地へと追いやるので、ただ物語の筋書きに従って動かされているようにしか思えなかった。もう一方の土方歳三もなぜここまで金に執着するのか理解できなかった。
2022年4月時点で累計1,900万部も売れている大ベストセラーらしいからあえて言うけれど、自分はこの作者の作品が今後また話題になったとしても二度と読まないと思う。
自分には合わなかったけれど、あまり深く考えずにアクション映画とか楽しめる人にはハマるのかもしれない。
2018年にアニメ化されたので見てみたのだけど、最初は面白かったもののだんだんしょうもなく思えてきて途中で見るのをやめてしまった。今回2022年のゴールデンウィークに作品完結を記念して期間限定でなんと全巻無料で読めるというので読んでみた。やっぱりいまいちだった。
埋蔵金の隠し場所のヒントは24人の囚人に掘られた入墨なのだけど、それをめぐって陸軍第七師団の鶴見中尉の一派や戊辰戦争で死んだはずの土方歳三の一味との奪い合いになる。脱走した囚人が手掛かりなので行方を追っていれば自然とライバルたちとかち合うのだけど、毎度毎度バカみたいに遭遇しては戦うことの繰り返しでうんざりしてしまった。
ヒグマに襲われたところをアイヌの少女アシリパに助けられた杉本は、なんだかんだあって山に潜伏することになり、彼女からアイヌの狩猟生活について教わり仲良くなる。そして彼女の死んだ父親がその埋蔵金に関わっていたことを知り、彼女の父親の死の真相をさぐるため一緒に埋蔵金を追うことになる。
アシリパさんかわいい。まだ13歳だけど、父親から狩りの方法など一通りのことは受け継いでいる。瞳が青いのは大陸の血が混じっているらしい。父親が死んでから一人で生きてきたためか非常に大人びているのだけど、杉本が携帯していた味噌を見て「オソマ(うんこ)」と言ってはやし立てるなど年相応に子供っぽいところも見せる。
色んな登場人物が出てきて敵になったり味方になったりどっちか分からなかったりする。良く言えば非常にダイナミックな人間模様なのだけど、なんというか物語づくりに節操がない感じがする。
脱獄王で一攫千金を夢見るお調子者の白石、戦争が終わって故郷に帰って猟師に戻ろうとする谷垣、第七師団長の妾腹で凄腕のスナイパーの尾形、アシリパの父親の友人だったという謎多き男キロランケ、などなど色んな登場人物が出てくるのだけど、自分はいまいちこの作品のことが好きになれないので詳しく紹介する気になれない。
シリアスな展開が盛り上がっているときでも平気でギャグを放り込んでくるのが結構おもしろいんだけど、そのせいで物語自体がバカバカしく思えてしまう。
今回この原作マンガを読んでいて何度も本を置きたくなったのだけど、明治という時代とアイヌの描写が素晴らしいので結局読み進めることにした。
杉本とアシリパという二人のラブロマンス(?)として見ても中途半端で、お互いを大切に思う気持ちはある程度伝わってくるのだけど、それ以上の何かを読み取ることができなかった。
というか杉本のキャラがいまいちよく分からなかった。親友に女を譲った(?)過去を持ち、その女のために危険を顧みずに埋蔵金を追い求める男。日露戦争で大活躍し「不死身の杉本」という二つ名までもらったほどの勇猛さを持つ一方で、たった13歳のアイヌの少女に対して真剣に向き合い、まったく子供扱いせずに教えも乞う。まだ24歳で家族はもういない。
アイヌの孤児の少年チカパシの独り立ちのエピソードがすごく感動できそうだったのに、読んでいて全然盛り上がらなかった。ここに来るまでにこいつは随分空気になっていたし、心の動きも全然描写されていなかったので無理もないと思う。
アイヌ民族というのは多くの日本人にとっては未開の民族だという先入観があるはずで、どこかバカにしたような見方をしてしまいがちのように思えるのだけど、この作品に出てくる人々にはまったくそのようなところがない。取材したアイヌの人々との距離が近すぎて配慮したんじゃないかと思えてくる。まあでも逆に差別を露骨に描写するといやらしくなってしまうので、これでよかったのかもしれない。
自分は小学生の頃に3年間北海道の札幌に住んでいたので、修学旅行のときにアイヌの観光用の村に行ったことがある。いまでもかすかに映像として記憶に残っているし、ムックリという口琴の音は非常に印象に残っている。でもさすがに狩猟とか調理とかまでは見学できないので、マンガの力って大きいなと思った。実写映画化されるらしいけど、実写にするのもたぶん無理だと思う。
陸軍第七師団の鶴見中尉の描写がいまいちで、一貫していないというかつかみどころがないというか理解の難しいキャラだった。部下思いの人なのかと思いきや人を駒のように扱う人だし、取ってつけたように家族思いだという描写が入るし、埋蔵金を手に入れたらみんなに報いると言いながら部下を簡単に死地へと追いやるので、ただ物語の筋書きに従って動かされているようにしか思えなかった。もう一方の土方歳三もなぜここまで金に執着するのか理解できなかった。
2022年4月時点で累計1,900万部も売れている大ベストセラーらしいからあえて言うけれど、自分はこの作者の作品が今後また話題になったとしても二度と読まないと思う。
自分には合わなかったけれど、あまり深く考えずにアクション映画とか楽しめる人にはハマるのかもしれない。