マンガ
シガテラ
古谷実 (講談社 ヤンマガKC)
まあまあ(10点)
2023年9月9日
平凡な高校生の荻野優介は、学校で不良の谷脇からパシり(使い走り)をさせられるなどイジメを受けていた。そんな彼の唯一のよりどころが、親に内緒でバイクの教習所に通い、いつかバイトでお金をためて自分のバイクを手に入れてツーリングに行くことだった。そんな彼が教習所でかわいい女の子と出会う。ギャグマンガの巨匠が描いた青春マンガ。
今年は古谷実の活動三十周年のあたる年で、そのせいなのかこの作品がテレビ東京系でドラマ化されたらしい。自分はそれとは関係なく最近古谷実の作品を再読したくなって順に読んでいっているのだけど、この作品は初読時にラストでびっくりしたのと作品全体に拍子抜けした記憶があったので、改めていま読んだらどんな感想を抱くのか楽しみで読んでみた。ある程度納得できた。
主人公の荻野優介は小柄でスポーツや勉強ができるわけでもなく、他にこれといって得意なこともない、平凡というよりはむしろ人より劣った高校生だった。そんな彼が教習所で南雲さんというかわいい女の子と出会い、彼女のツレの女の子から彼女の気持ちを聞かされる。半信半疑どころかまったく信じることのできなかった彼はもんもんとする。
でまあ少しネタバレすると荻野くんは南雲さんと付き合うことになる。この作品は単行本にして6巻分あるのだけど1巻で恋人同士になり、以降二人の交際が続いていくさまがずっと描かれる。自信のなかった荻野くんがだんだんと大胆になっていき、二人の仲が深まっていく。
一方で二人の仲とはあまり関係ないところでいろんなトラブルが起きてサスペンスな展開になる。たとえば、南雲さんのツレである田島さんが荻野くんの友達である斎藤くんに惚れて家に遊びに行ったところで睡眠薬を盛られるとか、荻野くんと一緒にイジめられていた高井のネット上の危ない知り合いが不良の谷脇を拉致ってヤバい映像を録ろうとしたり、南雲さんのバイト先の弁当屋の主任が言葉巧みに南雲さんの同情を誘ってあれやこれやしようとしてきたりする。正直このあたりは単なるエンターテイメントだと思うけど、まあ世の中にはいろんな欲望が渦巻いていてあの手この手で引き込もうとする輩がいるのだということを描いているんだと思う。
荻野くんはバイト先のコンビニにいた越くんと似たもの同士で仲良くなる。この越くんもまた荻野くん同様に冴えない外見をしているのだけど、実は彼は進学校に通っておりかわいい彼女までいる。しかもその彼女が自分勝手で迷惑しているのだという。荻野くんも最初は越くんの彼女への冷たい対応に引き、こんなにかわいい彼女がいるのに一体なにが不満なのだと思うのだけど、彼女と話をするにつれてだんだんこの二人の関係が分かってくる。
このように一歩踏み込んだ男女の描写がこの作品のウリだと思う。不良の谷脇にもアキコという彼女がいて二人の関係が描かれている。自分は初読時にこの作品が主に男女関係の描写だけで終わってしまったことに拍子抜けしたのだけど、これまで青年マンガであまり描かれてこなかったリアルで微妙な男女の描写は新鮮だった。って言葉では言うけれど、物語的に映えるわけでもないし地味な話ではあると思う。
でラストでびっくりした理由はさすがにネタバレになるので言わないでおくけど、要するに物語よりもリアルさに軸を置いた作品らしい展開があって割と唐突に終わる。この作品がどういう作品なのか、ある意味答え合わせにもなっていると思う。絵物語ではない本当の人生が描かれている。ああなった理由は一切描かれていないけれど、そこは重要ではないと思う。
というわけで素敵な恋の物語を読みたい人にはまったく勧められないんだけど、たとえばどこかでたまたま地味な男と知り合い、その男にそこそこかわいい彼女がいて、二人のなれそめとかどんな恋愛をしてきたとか知りたいなあというような感覚でこの作品を読んでみるといいと思う。そこにドラマチックな恋愛はないけれど、興味深い実体験を聞くような楽しみがあるかもしれない。
今年は古谷実の活動三十周年のあたる年で、そのせいなのかこの作品がテレビ東京系でドラマ化されたらしい。自分はそれとは関係なく最近古谷実の作品を再読したくなって順に読んでいっているのだけど、この作品は初読時にラストでびっくりしたのと作品全体に拍子抜けした記憶があったので、改めていま読んだらどんな感想を抱くのか楽しみで読んでみた。ある程度納得できた。
主人公の荻野優介は小柄でスポーツや勉強ができるわけでもなく、他にこれといって得意なこともない、平凡というよりはむしろ人より劣った高校生だった。そんな彼が教習所で南雲さんというかわいい女の子と出会い、彼女のツレの女の子から彼女の気持ちを聞かされる。半信半疑どころかまったく信じることのできなかった彼はもんもんとする。
でまあ少しネタバレすると荻野くんは南雲さんと付き合うことになる。この作品は単行本にして6巻分あるのだけど1巻で恋人同士になり、以降二人の交際が続いていくさまがずっと描かれる。自信のなかった荻野くんがだんだんと大胆になっていき、二人の仲が深まっていく。
一方で二人の仲とはあまり関係ないところでいろんなトラブルが起きてサスペンスな展開になる。たとえば、南雲さんのツレである田島さんが荻野くんの友達である斎藤くんに惚れて家に遊びに行ったところで睡眠薬を盛られるとか、荻野くんと一緒にイジめられていた高井のネット上の危ない知り合いが不良の谷脇を拉致ってヤバい映像を録ろうとしたり、南雲さんのバイト先の弁当屋の主任が言葉巧みに南雲さんの同情を誘ってあれやこれやしようとしてきたりする。正直このあたりは単なるエンターテイメントだと思うけど、まあ世の中にはいろんな欲望が渦巻いていてあの手この手で引き込もうとする輩がいるのだということを描いているんだと思う。
荻野くんはバイト先のコンビニにいた越くんと似たもの同士で仲良くなる。この越くんもまた荻野くん同様に冴えない外見をしているのだけど、実は彼は進学校に通っておりかわいい彼女までいる。しかもその彼女が自分勝手で迷惑しているのだという。荻野くんも最初は越くんの彼女への冷たい対応に引き、こんなにかわいい彼女がいるのに一体なにが不満なのだと思うのだけど、彼女と話をするにつれてだんだんこの二人の関係が分かってくる。
このように一歩踏み込んだ男女の描写がこの作品のウリだと思う。不良の谷脇にもアキコという彼女がいて二人の関係が描かれている。自分は初読時にこの作品が主に男女関係の描写だけで終わってしまったことに拍子抜けしたのだけど、これまで青年マンガであまり描かれてこなかったリアルで微妙な男女の描写は新鮮だった。って言葉では言うけれど、物語的に映えるわけでもないし地味な話ではあると思う。
でラストでびっくりした理由はさすがにネタバレになるので言わないでおくけど、要するに物語よりもリアルさに軸を置いた作品らしい展開があって割と唐突に終わる。この作品がどういう作品なのか、ある意味答え合わせにもなっていると思う。絵物語ではない本当の人生が描かれている。ああなった理由は一切描かれていないけれど、そこは重要ではないと思う。
というわけで素敵な恋の物語を読みたい人にはまったく勧められないんだけど、たとえばどこかでたまたま地味な男と知り合い、その男にそこそこかわいい彼女がいて、二人のなれそめとかどんな恋愛をしてきたとか知りたいなあというような感覚でこの作品を読んでみるといいと思う。そこにドラマチックな恋愛はないけれど、興味深い実体験を聞くような楽しみがあるかもしれない。