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BanG Dream! It's MyGO!!!!!

監督: 柿本広大, 原作: ブシロード

傑作(30点)
2023年9月18日
ひっちぃ

内気だが心の中に強い衝動を抱えた女子高生の高松燈は、中学の頃に幼馴染とバンドを組んでいたが仲たがいして解散していた。そんなことも知らない転校生の千早愛音は、自分がとにかくバンドをやりたかったので手近にいた彼女を誘うが、一生一緒にバンドをやってくれるかと言われて面食らう。メディアミックスでリアルとアニメでガールズバンドを展開するブシロードのBang Dreamシリーズから、迷走する少女たちの模様を描いたアニメ。

このシリーズは少女たちがバンドをするという自分好みのコンセプトなので一番最初の作品であるPoppin'Partyからアニメを見たのだけど、ろくにギターも弾けない初心者の女の子が友達の家においてある高価なギターをなし崩し的にもらおうと通い続けるというイヤらしい展開にうんざりしてすぐに見るのをやめてしまった。

その後、音楽に限ってはシリーズ二番目のRoseliaというグループのビジュアル系ロックバンド的なクサい歌が好きになり、バックバンドのメンバーが集まって結成されたRAISE A SUILENの曲もいい感じだったので、また興味を持つようになった。アニメではひさびさに見たこのMyGO!!!!!は、序盤からの鬱展開にひかれて見ていた。まあまあおもしろかった。

最初は能天気なピンク髪の千早愛音がファッション感覚でバンドをやろうとしていたのだけど、いきなり高松燈という地雷を引いてゴタゴタに巻き込まれるのがウケた。幼馴染とのバンドの解散という悲しい過去を持つ高松燈を気軽に誘ってくれるなよと、たまたまカフェのバイト店員としてその場にいた元ドラムの椎名立希がキレ散らかす。それを見た元ベースの長崎そよは、元のバンドの再結成のために新バンドを利用しようとする。というのも、新バンドの発起人である千早愛音はろくに楽器も引けず、衣装とかバンド名のことばかり気にするニワカだったから。

言い忘れたけれどストーリーを解説したいのでネタバレになってしまう点に注意してほしい。

そんなこんなで元のバンドと新バンドのメンバーとが絡み合ってギスギスして物語は進んでいき、超絶テクの新ギターの要楽奈が気まぐれに新バンドに参加するようになってようやく形になってきたと思ったら、そいつが気まぐれに元のバンドの曲を勝手に演奏し始め、元のバンドのことも忘れられない高松燈がそれを熱唱してしまい、見に来ていた元キーボードの豊川祥子がショックを受けて駆け出す。

元のバンドと新バンドとはメンバーが重なっちゃってるので絶対に両立はできない。この手の少女ものにありがちな円満なハッピーエンドはまず訪れない。少女たちの苦悩とか真剣さがとてもよかった。まあなにかあったらすぐに安易に駆け出しがちなんだけどw

主人公でリードボーカルをやってる高松燈が内気な女の子という設定がよかった。こういうバンドもののリードボーカルってみんなを引っ張っていく明るい女の子がやるものなのだけど、自分の言いたいことをはっきり言うのも苦手な女の子が必死で言葉を絞り出そうとする。こういうのっていまどきっぽいし共感も得られるんじゃないかと思った。つながりに永遠を求めてしまうところとか。そんな彼女だから元のバンドの再結成のほうを望むんじゃないかと思うところだけど、自分をもう一度バンドに誘ってくれた千早愛音の気持ちを選ぶのは彼女の成長なんだと思う。

千早愛音のほうは能天気な性格をしているけれどゴールデンウィーク前の不自然な転入には裏があった。こいつ中学の頃は生徒会長やってたのにどうしてこんなにバンドに関しては薄っぺらいんだろう。そんな彼女もまじめにギターを練習するようになり、ちゃんと弾けるようになるのだけど、衣装やバンド名にこだわろうとするところはあいかわらずだった。こいつほんとに成長したんか?

ドラムの椎名立希はほんとすぐに突っかかってくる沸点の低い女の子で、なかなか練習してこない千早愛音や気まぐれにしか現れない要楽奈といった新バンドのメンバーにすぐキレていたけれど、それなりに練習するようになった千早愛音のことを不器用に褒めたり、要楽奈の重い荷物を代わりに持ってやったりするようになる。

ベースの長崎そよは元のバンドを再結成させたら新バンドの二人を追い出そうとしていた腹黒な女だけど、元のバンドのメンバーに戻ってきてもらおうと必死なところがよかった。もちろん自分がよくないことをしている自覚はあったので失敗が決定的になると自ら新バンドを抜ける。仕方なく新バンドはヘルプでいったん別のベースを呼ぶのだけど、彼女じゃなきゃダメだということでまた呼び戻そうとする。

新ギターの要楽奈は気まぐれな女で、左右の眼の色が違う猫みたいなオッドアイをしているのが印象的なキャラ。ドラムの椎名立希から野良猫と呼ばれていたのがウケる。高松燈のことを気に入っていて、彼女が歌おうとするスタジオやライブにふらっと現れてアドリブでギターを奏でる。おばあちゃんっ子で、祖母の経営していたライブハウスにずっといたのだけどいまはもうなくなってしまい、新たな居場所を探していた。

絵が3Dアニメでモデルもハンコ絵のようなのでキャラの識別が最初難しかった。たぶん序盤は判別が追い付いていなくて一部ストーリーがよく分かっていなかったと思う。新バンドの五人だけだったらまだなんとかなったかもしれないけど、元のバンドのメンバーやそのクラスメイト、さらにはシリーズ内の別バンドのメンバーまで出てくるのでこんがらがる。

最終話がほぼほぼ最新バンドAve Mujicaの宣伝だった。元のバンドから抜けた二人が参加しているという体なのでストーリー的には関連がなくはないのだけど、特に二人の心情が深く描かれるわけでもなく、他メンバーのキャラ紹介みたいなこともやっていた。これってどうなんだろう。MyGO!!!!!のメンバーの物語はこれからも続いていくので終わった感じを出したくなかったのかもしれないけど、もう少し一区切り感のあるエンディングであってほしかった。

ブシロードはこれとは別にD4DJというシリーズもやっていて、ライブで楽器演奏するのではなくてあらかじめ作っておいたトラックをDJが流し、それに合わせてボーカルが歌いダンサーが踊り動画による映像表現を重ねるというスタイルでパフォーマンスを行うユニットを何組も作っている。バンド音楽じゃなくてそれぞれ個性的なEDM(電子ダンス音楽)をやっている。こっちも一部アニメ化されており、最初のHappy Around!はそれなりにおもしろくて完走できた。完走できたのは結局これだけだったけど。

もう一つブシロードは「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」というミュージカルを扱ったシリーズもやっていて、これもアニメでやっていたのだけど、こっちはすぐに視聴をやめた。ミュージカルは嫌いじゃないんだけどなんか見るにたえなかった。好みの問題かもしれないので合いそうなら見てみるといいと思う。

カードファイトヴァンガードというトレーディングカードをメインにやっていた会社がよくここまで本格的に音楽に乗り出したものだと思う。オープニングの音楽とアニメーションは毎回見たくなるほど良かったし、エンディングの曲もいいと思う。

近年はバンドものと言えば、はまじあき「ぼっち・ざ・ろっく」のアニメが覇権を取ったみたいだけど、自分は完走できなかった。たぶん自分は「ぼっち」つまりコミュ障(コミュニケーション能力の低い人)にはあまり共感できないんだと思う。エモいとされるシーンにもピンとこなかったし、ギャグもしょうもなく感じられた。

だからMyGO!!!!!の高松燈のコミュ障なとこ自体にはそれほど共感できなかったんだけど、彼女が一生懸命がんばっているのはとにかく伝わってきたし、他の登場人物の感情にも大なり小なり共感できた。

アニメ本編が終わったあとでピンク髪の千早愛音が天気予報を伝える小さな番組があるんだけど、毎回けだるげに「暑いよね~」で始まるのが地味におもしろかった。っていうかこの作品の主人公ってやっぱり千早愛音のほうなの?

というわけで、工業製品のような3DCGのハンコ絵がダメな人でも、このアニメは音楽のおまけではないので試しに見てみるといいと思う。

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