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Tales of Vesperia: Definitive Edition

開発: ナムコ・テイルズスタジオ, リメイク: QLOC, 販売: バンダイナムコエンターテインメント

まあまあ(10点)
2025年1月26日
ひっちぃ

旧文明が作り出した魔導器と呼ばれる魔法の機械によって維持されている独特のファンタジー世界を舞台に、帝都の下町の人々をうるおしていた水の魔導器のエネルギー源が何者かに盗まれたため、騎士を辞めていた若者ユーリがその行方を追う。バンダイナムコによる王道コンピュータRPGテイルズシリーズの一つ。

自分はこのシリーズ、2作目にあたるテイルズ・オブ・デスティニーだけプレイしたことがあって、ストーリーもシステムもいまいちでもうこのシリーズはプレイしなくていいかなと思っていたのだけど、VTuber芸能事務所ホロライブの人気者である宝鐘マリンが昔このシリーズのファンだったと聞き、彼女が海賊キャラをやろうと思ったのは本作の登場人物である海賊パティに関係があるんじゃないかと思ってプレイしてみた。いまいちだった。ついでにいうと特に影響を受けたわけでもなさそうだった。

主人公は理由あって騎士をやめた若者ユーリで、ロングヘアのイケメンかつイケボ(CV: 鳥海浩輔)だった。落ち着いた感じのヤレヤレ系主人公で、軽くぼやき気味の語り口で物語が進められていく。

ユーリは犯人を追ってみたものの結局取り逃がし、逆にユーリ自身が貴族街で捕まり、王城の地下にある牢屋に入れられる。こいつのおもしろいところは、元騎士なだけあって騒ぎを大きくしたくなくて、どうせ拘留は短期間だろうと思って脱獄はしない。でも困っている人々をそのままにはできないため、一晩だけ抜け出して犯人を追おうとする。すると城内でなぜか兵士に追われているお嬢様がいたので彼女を助ける。彼女はどうやらユーリの親友である騎士フレンを探しているというので、犯人を追うために一緒に行動するようになる。

正直この時点でアレッて思うことがちらほらと出てきた。犯人を追うとなると一晩で済むわけがないし、お城の部屋のドアを壊したことをお嬢様が気にするので時間がないのにドアの修理をするし、騎士のデコとボコのコンビと茶番を繰り広げたりもする。まあこんなものかと思ってあまり気にしないで進めることにした。

この作品はXBox 360とのちにプレイステーション3で出ているので、その世代のハードの性能に合わせて作られている。キャラクターや建物のグラフィックスがアニメ調で、適度にデフォルメされていてとても完成度の高いローポリゴンのモデリングがいいなと思った。ちょっと見えない壁とかにぶつかって多少のストレスを感じることもあったけど、いまでもそれほど違和感なくプレイできた。

戦闘はシンボルエンカウント制で、フィールド上を動いている敵のシンボルと接触すると戦闘画面に切り替わる。円形のフィールド上を敵と味方とがそれぞれ動き回る。アナログスティックで自由に動き回れるのかと思いきや、左スティックを上に倒すとジャンプしてしまう。LTボタンをずっと押しているとフリーランと呼ばれるモードになって画面奥へ移動できるようになる。おそらく2Dだった頃のなごりだと思う。フィールド画面は左スティックだけで自由に動き回れるのに。それに戦闘であんだけジャンプできるんだったらフィールド画面でもジャンプさせろっていう。

最初のボス戦が城内であるのだけど、何度もやられまくった。操作が難しすぎる。早速攻略サイトの世話になった。どうやらフリーランを駆使して敵の背後に回り込むのが基本らしい。しかも本当に真後ろに回り込まないと割と反撃を受ける。それに加えてフリーランのままだと敵の方向を向いていないことがあって攻撃が空ぶりするので、いったんフリーランをやめてスティックを横に倒さないといけない。しんどい。やられると即ゲームオーバーでタイトル画面に戻され、セーブポイントからロードしてのやりなおしとなる。早速萎えた。せめて戦闘開始時に戻してほしい。

城内に食堂があってそこで何度でも回復できるポイントがあるので、開始早々だけど経験値稼ぎをすることにした。小一時間ほど戦闘しては回復を繰り返し、レベルが2ぐらい上がったんだけど、ボスの攻撃が強すぎて大して意味がなかった。

あまりに最初のボス戦が難しかったため、なにか見落としているんじゃないかと思い、動画サイトYouTubeで検索したら、にじさんじのVTuberニュイ・ソシエールがプレイしている動画があったので見てみたところ、割とうまくて一発でギリギリ倒していた。結構ガチャプレイだったと思うんだけど、自分とどう違うのかわからなかった。

【#01 テイルズ オブ ヴェスペリア / TOV 】「正義」を貫き通すRPG※ネタバレ注意【ニュイ・ソシエール / にじさんじ】
https://www.youtube.com/
watch?v=rMPIhWKWf58


この人の配信は割とおもしろかったので第一回だけは全部見てみた。なんかちゃんとゲームが好きなおねえさんって感じで、明るく楽しく時々軽いツッコミも入れながらも作品を尊重してプレイしていてちょっと好きになった。そのうち別のゲーム実況も見てみたい。

時々セーブポイントからボス戦まで長いときがあったり、ボス戦後にそこそこ長いイベントを経てセーブする間もなく次のボス戦がきてやられたりと、リメイクなのにプレイアビリティが低すぎて途中で投げ出したくなった。幸いなことにコンフィグで難易度を好きなときに変えられるので、そのときはあきらめて一時的にイージーに切り替えて乗り越えた。高難度アクションゲームを普通にプレイできる自分でもこれなのだから、詰んでやる気をなくす人も普通にいると思う。

帝都を抜け出してからも冒険は続き、次々といろんな仲間が入ってくる。主人公ユーリの相棒といえる忠犬ラピード、お城で出会ったお嬢様エステル、自分の傭兵団とハグレた少年カロル、天才魔導研究者リタ、少数民族の槍使いの女ジュディス、ギルド幹部の謎のおっさんレイヴン、海賊アイフリードの孫だという少女パティ、そして主人公ユーリの親友の騎士フレン。

声優がみんなよくて、特にジュディス役を久川綾がやっていて、この人は美少女戦士セーラームーンに出てくる水野亜美が一番の当たり役なんだろうけど、自分はセーラームーンをあんまり好きじゃなくてこの人の声をいままであまり聞いたことがなかったのですっかり魅せられてしまった。キャラも合っていて当て書き(この人ありきで書いた)なんじゃないかと思った。

主人公ユーリの役を鳥海浩輔がやっていて、自分はこの人をペルソナ3で知っていい声だなと思っていたんだけど、中二臭い主人公の中二臭くなりがちな振る舞いを抑え気味に(?)演じていて、プレイしていて大人の自分でも不快感なく楽しむことができた。序盤順調に物語に入っていけたのも、絶妙な脚本と演技だったからだと思う。

キャラ同士の掛け合いも楽しかった。正直、物語の筋はお粗末なので、物語の本筋に関することをしゃべっているときは興ざめだったのだけど、ちょっと本筋から離れたところでストーリーに沿って闊達なやり取りを繰り広げているときは、それぞれのキャラの個性が活き活きしていて楽しめた。ちょっとおっさん(レイヴン)がうざかったけど。

魔導器(ブラスティア)という魔法の機械を軸にストーリーが進んでいく。水の魔導器に依存していた帝都の下町の人々のほかに、村を守る結界を維持するための魔導器の調子が悪くなって困っている村人たちを助けたり、魔導器を研究している都市があって発掘するための遺跡が近くにあって探検したりする。

魔導器とそのエネルギー源となっているエアルが世界を動かしているんだけど、なぜかお嬢様エステルは魔導器やエアルを使わずに治癒の力を持っていることに気づく。彼女は一体どういう存在なのか?彼女を狙う「始祖の隸長(エンテレケイア)」の目的は?過去に起きた大戦の真相は?と物語が展開していく。

おそらくなんらかの文明批判みたいなものもあるのかもしれないけれど、正直よくわからなかった。たぶん筋を書いた人も大して考えていないと思う(断定)。

主人公ユーリの物語としては、騎士をやっていては人々を救えないと思ったから辞めて自分の道を突き進んでいる。で作中ついには法に反することをやってしまう。そこが見どころのはずなのに、あまり突き詰められないまま終わってしまった。それどころか自分で矛盾することを言っていたりする。

カロルはまだ小さいのに幼馴染の少女がいてもう既に脈なしなのがウケた。その少女はカロルのことをなんとも思っていなさそうなのに、カロルのほうは未練たらたらだった。またこいつは仲間のことを見捨てて自分だけ逃げ出してるのだけど、それについてはユーリたちがやさしいのか追及されていなかった。こんな未熟な描写があるのに、その後とくに成長物語もなかった。

こういう中途半端な要素がたくさんあって毎回スルーしてプレイし続けていたのだけど、物語的に一番盛り上がるヒロインの大ピンチがひどすぎて見ていられなかった。セルアニメまであるのでおそらく早いうちに見切り発車で企画して発注したんだろうけど、明らかに不自然な流れで浮いていた。いっそ物語が淡々と進んで欲しかった。

もうストーリー目当てでJRPGをプレイするのは自分には厳しいと思った。

システム面について言うと、装備や魔法や技はそれなりにバランスが取れていて悪くはなかった。難を言うと、装備がダンジョンにゴロゴロ落ちているのでありがたみが薄れたし、魔法は基本的にオートでAIが勝手に使ってくれるからあんまり把握できていなかったし、技はキー操作に設定しないと出せないので途中で面倒になって一部しか使わなくなった。

戦闘は集団戦でAIが割とかしこいのでちゃんとみんなで戦っている感じがしてよかった。魔法の詠唱を敵によって中断されると、フォローしろとAIがしゃべってくる。ほかにも味方が敵の集団にボコられそうになってる場合とかフォローしにいった方がいいのでそんなに単調にならずよかった。まあ結局やることは決まっているし繰り返しになるのでだんだん面倒になってきてあまり楽しめなくなっていった。途中で全部オートにしようと思ったほどだった。味方に指示を出すこともできるんだけど、チュートリアルもなかったしあんまり必要を感じなかったので結局やらなかった。

おもしろい趣向として、4人までプレイヤーが仲間を操作できる。たとえば友達を呼んで戦闘のときだけそれぞれのキャラを操作させられる。フィールド画面でのストーリー進行はメインプレイヤーしか操作できないけど、戦闘だけでも他の人が参加できるのはみんなでワイワイプレイできていいと思った。

フィールド画面では料理を作ってHPやTP(技や魔法を使うためのポイント)を回復させたりできて、即席の回復アイテムよりも安くついて効率的なのでやりくりが楽しかった。バカ食いできないよう戦闘を挟まないと連続で食事できないのもよかった。一方で、特定の料理を特定のキャラが調理し続けると新しい料理を思いつくんだけど、何度も繰り返し料理しつづけないとダメなのでこんなの手探りでやるのは無理だなと思った。攻略サイトを見てそのとおりにやってしまった。

戦闘中は味方も勝手にアイテムを使ってくれる。設定により技やアイテムを使わせないこともできる。雑魚戦でいちいち設定しなくても良かったので結局自分はノータッチだった。アイテムは一種類につき15個までしか持てないので、あまり使わないアイテムは特に終盤あふれた。序盤は敵のステータスを見破るためのスペクタクルズというアイテムがよくあふれた。少なくともこれだけはアイテムにする必要なかったと思う。人をイラつかせるだけのシステムだった。

テントなどを使うことで回復することもできてちゃんとチュートリアルで説明してくれているのだけど、どのタイミングで使えるのか結局理解できなかった。料理と同じタイミングで使えると説明されたのにまったく使えず、アイテム欄にたまっていくだけだった(笑)。使おうとしてもブブーとブザーが鳴るだけでなんの説明もなかった。

雑魚戦の大味さと、ボス戦のシビアさ、行動の重み、システムの複雑さ、それらがあまり噛み合っていないように感じた。戦闘がアクションなのでそっちに集中したいのに、いろんなシステムがあっても利用する気になれなかった。爽快感にも乏しかった。タイミングを見計らって特定のキーを押すと必殺技みたいなのが出るけど、タイミングがシビアすぎてストレスでしかなかったし、出たからといって大して効果がなかった。

クリアまでに自分は七十時間ちょっとかかった。セーブデータ上の時間は確か六十時間ぐらいだったので、十時間ぐらい虚空に消えたんだと思う(セーブしてから全滅までの間に)。

このゲームをプレイする前は、さあ腰を据えてRPGを楽しむぞという期待感があったけど、プレイし終えた今となっては、もうしばらくはRPGやりたくないなと思った。

いろいろと酷評したけれど、ちゃんとクリアまでプレイできたのは、キャラがそれなりに魅力的だったことと、なんだかんだで戦闘やシステムに最低限やりがいがあったからだと思う。グラフィックスもきれいだったし、音楽もよかったと思う。プレイしていて何度か、この曲いいなと思うことがあった。

というわけでこの作品は、日本のコンピュータRPGを積極的に楽しもうという気がある人ならプレイしてみてもいいんじゃないかと思う。

[参考]
https://tov10th.tales-ch.jp/

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