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グノーシア (Steam版)

開発: プチデポット, 販売: PLAYISM

傑作(30点)
2025年3月16日
ひっちぃ

星間航行中の宇宙船がグノーシアと呼ばれる人類の敵に襲われた。途中で寄港した惑星から侵入したそれは、人間に寄生して操り、襲ってきたのだった。世界的に有名なロシア発祥と言われている「人狼ゲーム」をベースにしたSFアドベンチャーゲーム。

まとめサイトかなにかでこのゲームの評判を聞き、いったん検索した覚えもあったのだけど、確かそのときは思ったより値段が高かったので買うのをやめたんだったと思う。そこまでしてやりたいゲームでもなかったし、どんなゲームなのかよくわかっていなかった。その後、2025年にこのゲームがアニメ化されるらしく、それをきっかけとしてホロライブの一条莉々華がプレイしていて、その配信を見て自分でもやってみたくなったので遊んでみた。おもしろかった。

【グノーシア】今年はいろんな名作をしゃぶりつくしたい。オススメあったら教えてー【一条莉々華/hololive DEV_IS ReGLOSS】
https://www.youtube.com/
watch?v=3WpR8qUoxs0


このゲームは人狼ゲームというもともと対人でプレイするボードゲームのシステムをベースにしている。会話ベースで進むゲームなので、これを一人用のゲームにできるのか、CPU相手にプレイして楽しいのか、すごく気になっていた。というのも実は自分も人狼ゲームを一人用のゲームとして作れないか実際にコードを書いてみたことがあって、いくつかのコマンドやパラメーターが必要だなと思っていたのだけど、途中で飽きて放置してしまった。

ゲームを始めると、すごい速さで説明の文章が流れてびっくりするのだけど、これはあくまで主人公が学習システムで学んでいるという演出なので読まなくていい。目を開けるとセツという女性が現れて、最初のステージへといざなわれる。ここは宇宙船の中で、五人の乗員がいてそのうちの一人が人類の敵グノーシア感染者なのだけど、それが誰かわからないのでどうしようという話になる。

そのうち話し合いをして怪しい人物を強制的にコールドスリープさせることになる。といっても誰が怪しいのか互いに思い思いのことを言うのでよくわからない。プレイヤーは誰が怪しいか疑ったり、こいつは大丈夫そうだとかばったりする。全員合わせて五回行動すると投票フェーズに入る。多数決で一番多く得票した人がコールドスリープさせられる。

このとき無事グノーシア感染者をコールドスリープさせていればステージクリアとなるのだけど、間違った場合はその日の終わりに他の乗員が一人襲われて消失させられる。次の日、いなくなった人を除き、また同じように話し合いが続いていく。

これだけだとジャンケンみたいな運ゲーに感じられるかもしれない。誰がグノーシア感染者なのか全然ヒントがないので(?)、みんなあてずっぽうで疑ったりかばったりしあうだけだから。とりあえず最初は基本的なルールを学ぶチュートリアルステージだと思ってやっていく。まあちゃんとこの時点でもゲーム性はあるのだけど。

グノーシア感染者と一対一になってしまうと、もはや投票によって決着をつけることができなくなり、どうせその日の終わりにグノーシア感染者に襲われて終わりになることが確定するので敗北となる。

敗北するとゲームオーバーかというとそうではなくて、また新たなステージに挑戦することになる。毎回グノーシア感染者は変わる。多元宇宙のループものという設定なので、一度消えた人は何度でもよみがえる。無事グノーシア感染者をコールドスリープさせて勝利となってもそれは同じで、ただ次のステージというかLoopへと進んでいく。

じゃあどうするとゲームがクリアになるのかというと、それはまあネタバレになるので言わないのだけど(!)、Loopを繰り返していくうちに主人公に知識がたまっていくほか、同じくLoopを繰り返している女性セツとの会話が進んでいく。

主人公も含めて最大15人のキャラクターがいて、その中から毎回ランダムで(?)選ばれてLoopが始まる。各キャラクターには役割が与えられていて、最初はただの乗員とグノーシア感染者だけなのだけど、ゲームが進むうちに特殊な役割が増えていく。一日に一人ずつ選択した人がグノーシア感染者かどうか分かるエンジニア(人狼ゲームで言うところの占い師)、みんなでコールドスリープさせた人がグノーシア感染者かどうか分かるドクター(同霊媒師)、グノーシアをあがめているAC主義者(同狂人)、第三勢力のバグ(同妖狐)。なおプレイヤーはグノーシア感染者になってプレイすることもできる。

各キャラクターが特定の条件を満たすことによって、対応したイベントが発生するようになっている。たとえば、あのキャラとこのキャラが参加していて生存していないと発生しないとか、あのキャラがグノーシア感染者として最後まで残ってプレイヤーが敗北すると発生するなど。多くのアドベンチャーゲームにはイベントツリーがあって、選択肢を選ぶことでルートを埋めて達成率を上げていくのだけど、このゲームではそれが人狼ライクゲームの各シチュエーションになっている。

各イベントはおもにそれぞれのキャラクターのエピソードになっている。個性豊かなキャラクターたちがそれぞれの素性を明かしていく。あっと驚く逸話を聞いて感動したり、ゲーム中の動きに合点がいったりしながら、最終的になぜ主人公がループを繰り返すのか謎を解いていく。

個人的にはジョナスのイベントが超ウケた。このちょっと濃いおっさんの正体は秘密にするとして、こいつの話がやたら長くて無駄に詩的で、それを一緒に聞いていたセツがあきれながら対応するのがかわいかった。すっとぼけたおもしろさがあった。あと、人狼ゲーム中に急にしげみちがステラに告白することがあるのもウケた。

ゲームのコツをここで解説したくてしょうがないのだけど、それを手探りしていくのがこのゲームのおもしろいところなので、ここはグッとこらえて書かないことにする。

ただ、ここだけは押さえておかないと楽しめないという点だけは説明しておくことにすると、このゲームは決して運ゲーではないということ。きっと最初は結構負けると思うし、勝ってもなぜ勝てたのかよくわからなかったりすると思う。

よくグノーシア感染者に襲われてしまうという人は、自分がグノーシア感染者でプレイしたときにどういう相手を襲いたくなるのか考えてみるといいと思う。それを避けるように行動すると襲われる頻度が下がると思う。投票でコールドスリープさせられがちな場合は、どういう人に投票したくなるかを考えてみる。

このゲームには各キャラクターにパラメーターがある。カリスマが高いと発言が他のキャラクターに影響を与えやすくなるし、直感が高いと相手のウソに気づきやすくなるし、かわいげがあると投票されにくく、ステルスが高いとグノーシア感染者に狙われにくくなるなど。うまいことできていると思う。ゲームをしていくと経験値がたまっていき、レベルを上げることができるようになり、レベルを上げると各パラメーターのうち1つだけ1増やすことができる。

また、イベントの中にはコマンドを覚えるものがあって、ゲーム中に特殊な行動をとれるようになる。コマンドには必要なパラメーターが設定されているので、そのコマンドを使うために対応するパラメーターを上げていく。自分はあまり意識しなかったけど、どのパラメーターを上げることでどういう戦略をとるのか考えるのもいいと思う。

本物の人狼ゲームを好きな人がAI相手にプレイしたいと思ってこのゲームをプレイすると、いくつか大きな違いがあってガッカリするかもしれないので、その点だけは説明しておくことにする。

一番大きいのは、自分がグノーシア感染者に襲われたり投票でコールドスリープさせられたりすると、その時点で敗北になること。普通の人狼ゲームだと、たとえば役割が村人(つまりこのゲームで言うところの乗員)だと、他の重要な役割の人が狙われないようあえて自分が捨て石になる戦略があるのだけど、このゲームだとそれができない。

自分が役割を明かしていないときに誰かがウソをついて役割を明かすと、自分も役割を明かさなければならない。…と聞いた気がするのだけど、役割を明かさないようにすることもできた。なぜだろう。ただ、本物はそういうときに役割を明かすものだという共通認識があるみたいで、本物が役割を明かさなかったら偽物が本物扱いされた状態でゲームが進んでしまい、誰も疑ってくれないのでとても不利な状態になる。

あくまでこのゲームはアドベンチャーゲームなので、人狼ゲームが始まると思ったら強制イベントが発生して突然そのループが終わることもある。まあそういうときはイベントが回収できてよかったねってことなんだけど、人狼ゲームを遊びたいと思っている人には納得できないかもしれない。

占い師ローラーと呼ばれる定番の戦術が実質使えない。エンジニアを名乗る人が複数現れたときに、じゃあそいつらを順に投票でコールドスリープさせていこう、というローラー戦術に誘導できない。代わりに、一気にそいつらを同時にコールドスリープさせようという提案を行うコマンドが用意されているのだけど、大抵反対されるのでなかなか成立しない。

自分は三十時間ちょっとでクリアした。定価が現在二千七百円ぐらいで、自分はSteamのセールで二千円ぐらいで買った。適度な値段で気軽に楽しめるいいゲームだと思った(最初に高いと思ったのはなにか見間違えた?)。本当はSwitch版が欲しかったのだけど、セールとやる気のタイミングが合わなかった。これ書いてる今ちょうどSwitch版のセールが始まったところなのでままならない。

これは余談なのだけど、自分は最初タレントが人狼ゲームをプレイしている番組を見て好きになり、ネットに上がっているものもいくつか見てみたのだけど、カジュアルにやっているとおもしろくないなと思った。ちゃんと真剣に話し合って考えて本気でやるからこそおもしろい。ただ、自分でもやってみたいと思いつつも、ボイスチャットは敷居が高いし、テキストベースのものもあるらしいけれど、そうまでしてやりたいゲームでもなかった。

ゲームのコツを書くと興ざめだと言った手前言いづらいのだけど、このゲームは現実の世界についてもハッと驚かされるような真実に気づかせてくれた。誰が敵かわからない状況で、自分が生き残るにはどうすればいいか?これを突き詰めると…?うーん、これ以上は言えないな。

とにかく頭を使うゲームが好きな人はやってみるといいと思う。

[参考]
https://playism.com/game/gnosia/

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