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GRANBEAT (DP-CMX1)

オンキョー

まあまあ(10点)
2018年8月4日
ひっちぃ

日本の音響機器メーカーのオンキョーが2017年初頭に出した高音質なスマートフォン。ミドルレンジぐらいのデジタルオーディオプレイヤーと同等クラスの高音質な音楽再生が可能な上に、最新ではないものの普通のスマートフォンそのもののスペックを持った唯一無二の端末。DACチップとアナログ段を二系統持っており、フルバランス出力できる。

前々から気にはなっていたのだけど、発売当初は八万ぐらいで売られていたので買う気になれなかった。そのうちFiio X7 mk2が発売されてアリババのセールで安かったので買ってしまい、もうこのクラスのデジタルオーディオプレイヤーはこれ以上必要ないと思っていたのだけど、このGRANBEATが思ったほど売れなかったのか五万を切る値段で投げ売りされだしたので、ネットの直営店で衝動買いしてしまった。

いまどきのスマートフォンにしてはちょっと分厚くてデザインもそれほどかっこよくはないのだけど、割と手堅いデザインで質感も悪くない。

なにはさておき音質について言うことにすると(まず外見に触れちゃったけど)、Fiio X7 mk2 + AM5と比べると引き締まった音を出す。オンキョーはパイオニアブランドでは元気で軽快な音にし、オンキョーブランドではいかにもオーディオといった落ち着いたしっとりした音にしている、とネットで言われていたとおりだった。総合的な音の良さで言うとFiio X7 mk2 + AM5のほうがいいんじゃないかと思うけれど、このGRANBEATのスッキリした質の高い音を聴くとひょっとしてX7 mk2の音は高周波成分の雑味でごまかしているんじゃないかとさえ思えてくる(といってもX7は実際に心地よい高周波成分がよく出ているわけだけど)。

バランス出力のほうはパイオニアブランドのXDP-30Rと比べてやや上かなというぐらいで、本当に気のせいなのか分からないほんの少しの違いしかないように感じられた。バランス出力でのアップグレードを考えているならもっと上の機種を買わないとダメだと思う。一方でアンバランス出力はさすがにXDP-30Rがヘボすぎたので聴いてすぐに違いが分かった。

再生ソフトは、実質フリーで配布されているOnkyo HF Playerとほとんど同じ専用ソフトが入っていて、操作方法は多分同じだと思う。自分はプレイリストを使わないのでアルバムを選んで上から順に聴いていっているのだけど、しばらく他のアプリを使っていると再生ソフトがメモリから追い出されてしまうのか、いままで聴いていた位置がリセットされてしまう。この程度の情報は保持していて欲しい。そのせいで使い勝手が非常に悪い。

ハイレゾがどこまで聴けるかという点については、自分はあまり興味がないのでよく知らない。いま調べたら、内部的には384MHz / 32ビットまで再生できるけれどそれはUSBで外に出すときだけで、実際に再生できるのは192MHz / 24ビットまでだった。まあ自分の場合は96MHz / 24ビットが再生できれば問題ないのだけど、クラシックなんかをすごい音源で聴く人だと困るかもしれない。

普通のスマホとの違いは、ボリュームがダイアル式であること、そして再生と曲送り用に三つボタンがついていること。ボリュームノブが軽すぎて、胸ポケットから出し入れするたびにボリュームが変わってしまう。ちょっと実際に使ってみればすぐに分かるような欠陥なのであきれる。また、ボタンも大きさや質感がどれも同じなので、最初は電源ボタンを押そうとして間違って曲送りボタンを押してしまうことがよくあった。

普通にスマホとして使ってみた場合、ゲームはやっていないので除くとして、普通にネットサーフィンしたりする分にはパフォーマンスはまったく問題なかった。Snapdragon 650なのでミドルレンジクラスだと思う。画面の解像度も1920 x 1080とフルハイビジョンサイズなので言うことがない。タッチパネルの動きも申し分ない。製品の戦略としてもっと廉価なスペックにすることも考えられたと思うのだけど、メインで使うならこのぐらいないと不便だと思うので、スマホ兼というコンセプトなら自分はこれで正解だと思う。

内蔵メモリは128GBと意外にある。さらにここからマイクロSDカードで増設できる。自分はちょっと高かったけれど400GBのカードを差したので余裕がある。

自分は五万円以下で買ったのだけど、これだったら七万ぐらいなら出しても良かったかもと思った。五万のデジタルオーディオプレイヤーに二万でスマホ機能と考えれば割と妥当な気がする。でも実際には七万ぐらいに値下がりしたときには買おうとは思わなかった。いま考えてみると、デジタルオーディオプレイヤーとしての音質をまだ信じられなかったからだと思う。専用機のDP-X1やDP-X1Aもあるのだけど、店頭で触ったときに安っぽいプラスチック感と微妙にサイズが大きすぎるので所有欲が湧かなかった。

純粋にデジタルオーディオプレイヤーとしてみた場合、このGRANBEATはFiio X7 2nd + AM3Aよりも音がいい上に使い勝手もだいぶ上だと思う。メインでたとえばiPhoneを使っている人でも、音楽プレイヤーとしてこのGRANBEATを買って、格安SIMでも入れておけば、ネットもできるのでいいと思う。

自分の場合は、夏場にスマホとデジタルオーディオプレイヤーの二台を持ち歩くのはかさばりそうなので一台にしようと思ったことが購入の決め手となった。しかしこうして夏を迎えた今、普通に二台持ちしているのでこの判断は間違っていた。それと、実際に一台で運用したとき、スマホからイヤホンのコードが伸びているというのがわずらわしく感じられた。Bluetoothによるワイヤレス接続(送信)にも対応していて、LDACには対応していないがaptXとaptX HDとAACとSBCに対応している。いまメインで使っているShure KSE1200 + EarStudio ES100はLDACに対応しているので、LDACが標準搭載されているAndroid 8以降の普通のスマホのほうがよさそう。

想定していなかった良い点として、メインのスマホとして使うことで、常に電源の入った状態になっているので、すぐにイヤホンなりヘッドホンなりをつないで音楽を聴けるのが地味にいい。最近のAndroidベースのデジタルオーディオプレイヤーはスタンバイ時にそれなりにバッテリーを食ってしまうので聴きたいときにバッテリーがあんまりなかったり、逆にバッテリーの消費を抑えるために頻繁に電源を落としてしまう。電源をオンにしても起動に時間が掛かる。

ネットだとジャックがモロくてすぐ壊れるという悪評が広まっている。自分はまだ半年しか使っていないのでなんともいえない。製造は中国でやっていて、設計もスマホ的な部分は中国でやっているらしい。

後継機の話はまだない。代わりになぜかタブレットを出すとかなんとかいう話題が挙がっていた。どんな人が使うのかとネットがざわついた。オンキョーは存続が危ぶまれるほど赤字が続いているらしい。オーディオ業界がそもそもローエンドばかりになってしまい、ちょっとでもいい音で聴こうという人たちが少なくなっているので、仕方ないのかもしれない。自分も安いウォークマンで音楽を聴いていた時は特に不満がなかったし。でも最近になってフルワイヤレスのイヤホンが注目を浴びているらしい。まあメーカーが売りたいだけのステマなのかもしれないけれど、ヨドバシとかを見てもそれなりに人がいる。

デジタルオーディオプレイヤーの製品としての最大の弱点は、もはや一人一台持っていると言っていいスマートフォンと機能がかぶっている点だと思う。だから、スマホありきで製品を開発していかないと厳しいと思う。その点、フルワイヤレスイヤホンは身軽に使えるという明らかなメリットがあるので比較的受け入れられているのだろう。身軽さより音質にこだわる方向であれば、一万円以下で分かりやすく音のいいワイヤレスイヤホンなりヘッドホンなりがあればヒットしそうなのに、そういうわけでもないのだろうか。FinalだったらE2000かE3000のワイヤレスを一万円以下で出せそう。あ、音が分かりやすくないか。Beatsの重低音やSONYの移動中聴きやすい中低域やaudiotechnicaの軽快な中高域なんかが最初の一歩としてはいいのかも。実際電車の中でよく見かけるし。

結構在庫処分が進んだと思ったけれど、まだまだ五万から六万ぐらいで売られている。細かい使い勝手が気になったり、少しでもいい音で聴きたいというわけでもなければ、この機種は高いコスパと総合力で満足感が得られる良い買い物になると思う。でもAndroid OSのバージョンアップをしてくれそうにないので、いまから勧めるのもなんだろうなあ。

[参考]
https://www.jp.onkyo.com/
audiovisual/smartphone/granbeat/

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