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FX戦士くるみちゃん 1巻
リーマンショックにより母親がFX(外国為替証拠金取引)で多額の損失を出し、家のお金にまで手を出して破滅したのを見た中学生の女の子・福賀くるみは、そのお金をFXで取り返すんだと決意してひたすら勉強し、成年になってから満を持して始めたのだが…。原作者のFXでの体験をもとに女子大生くるみちゃんの物語として再構成したマンガ。

前からネットの一部で話題にあがっていてずっと気になっていたので読んでみた。おもしろかったけど、これはたぶんサスペンスに分類される作品で、話の筋やらキャラの豊かさなんかで楽しむような作品じゃないと思うので、自分は一巻だけでいいやと思った。

といいつつ導入部のストーリーにはすごく引き込まれた。いきなりすごい表情をしたくるみちゃんが神に祈りながら荒い息で画面を凝視しているシーンから始まる。そこから物語は六年前にさかのぼり、普通に生活を送っていた女子中学生のくるみちゃんの平凡な日々が終わったときのことが語られる。

一応FXの説明をしておくと、外国為替証拠金取引つまり海外の通貨を自分の手持ちのお金以上の額で売り買いして儲けようとする投機のこと。安い時に買って高くなったときに売って儲けるだけでなく(ロング)、高い時にその通貨を借りて売って安くなってから買い戻して返す(ショート)こともできるんだけど、普通の取引だったらうまくいってもいかなくても売り買いした通貨の差額だけが損益になるのに対して、FXは証拠金を出すことによりレバレッジといって手持ちの金額の何倍もの取引ができる。要は通貨の上げ下げに掛けるギャンブルだと思っていい(?)。まあたぶん市場の安定化みたいな役割があるみたいなんだけど。

日本では昔流行ったことがあり、小金持ちの主婦が大勢取引に参加して値動きを左右しているのではと言われて海外では「ミセス・ワタナベ」と呼ばれるほどだった。当時から破滅する人がいたので正直いまさら感もあった。

くるみちゃんはしっかりと勉強済みだという設定なので、相場の値動きもある程度は想定していて、もちろん必ず勝てるわけじゃないけどそれなりには勝てるつもりで取引している。負けるまで続けるからダメなんだと、目標を定めて勝ち逃げしようとするところがとても理にかなっている。

自分はよく知らないけど実際の過去の値動きや金融イベントがもとになっていて、それらの背景までちゃんと説明してくれているので勉強になった。こういうことが起きたら必ずこういう値動きをするというわけではないけれど、ある程度は因果関係があってセオリーがある。投資家の心理を説明する理論なんかも解説してくれていておもしろかった。

いわゆるローソク足と呼ばれる相場独特の棒グラフがマンガ表現で上がったり下がったりしててウケた。

くるみちゃんが相場に一喜一憂する様子がとてもよかった。一喜一憂なんていう生易しい言葉じゃなくて、地獄のような生きた心地のしない場面で女の子とは思えない表情でもがきくるしんだかと思ったら、窮地を脱して大儲けして歓喜するといった、福本伸行の作品をも凌駕するかもしれない感情のダイナミクスがあった。

投資家の心理状態の描写がとても解像度高くておもしろかった。原作者が自分で体験したことを書いているからこそのリアリティだけど、ちゃんとここまで言語化し映像化しているからこそのおもしろさだと思う。

もう十年以上前だけど、FXやってる先輩と隣同士でぺちゃくちゃしゃべりながら仕事をしていたことがあって、俺は会社の給料以上をこれで稼いでると言っていたけれど、どうなったんだろうか。辞めていったのでよくわからない。あんまり具体的な話は聞かなかったけど、勝てるやりかたがあると言っていたw

エンタメとして楽しめるだけでなく勉強にもなるし、ネットをより楽しむ上で教養(?)にもなってくれるので、試しに読んでみるのもいいかもしれない。
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