| ひとりでしにたい 11巻まで |
美術館の学芸員として働く35歳独身女の山口鳴海は、憧れだったキャリアウーマンの叔母の孤独死を見て、しかし結婚相手を探すのではなく一人で平穏に死ぬにはどうすればいいのかを考えはじめる。年老いた親とやがて老いる自身に降りかかる様々な問題を扱ったマンガ。
去年NHKでドラマ化されたらしいけど、自分は完全にノーマークだった。なんで急にこの作品を手に取ったのかわからないけれど、たぶんネットの広告に誘導されたんだと思うw
亡くなる前は一人で悠々と生活していたはずの叔母だったんだけど、そういえば近頃は疎遠になっていたことに気づく。その理由は、鳴海の母親と仲が悪くなったからだった。家庭に追われる母親に対して叔母はマウントを取り続けていたが、孫ができたあたりから立場が逆転していた。とまあこういう人間の機微が描かれる。ちなみに孫というのは鳴海の弟が結婚しているから。
だから孤独死を避けるには普通は結婚となるところなんだけど、この作品ではそうはならない。職場で同僚と騒いでいる彼女を見て、官庁から出向で来ているだいぶ後輩の那須田くんが突然話しかけてくる。結婚してても孤独死するのが今の世の中なのだと。
こいつがすごく辛辣に鳴海のことをイジりながらいまの世の中について講釈を垂れてくる。まだ若い那須田くんにとって、独身のまま35歳になって急に慌て始めた鳴海なんてイジりがいのあるオバさんでしかなかった…わけではなくて、実は那須田くんは前々から鳴海のことが気になっていて仲良くなるタイミングを見計らっていたのだった。
じゃあなんで素直になれないのかというと、身勝手な親に育てられたせいで性格が歪んでいたからだった。この作品にはこのあと何人も登場人物が増えていくのだけど、その人の生まれ育った環境による性格や考え方の違いみたいなことに踏み込んでいく。
そもそも主人公の鳴海のほうが実は特異で、そもそも美術館の学芸員として働いている時点で変わっているのだけど、本人にはそれがわかっていない。自分はごく普通の家庭に育って自分なりにやりたいことを考えて生きてきたと思っている。しかしそれが那須田くんに言わせれば恵まれた家庭環境ゆえのことだという。
ヒロインの鳴海はなにげにすごく頭のいい人間だと思う。飼い猫に魯山人と名づけるぐらいだし。一流大学の文系院卒っぽいけど具体的な記述はなかった。実家の飼い猫の名前が山頭火だし、両親も割と教養レベルが高そう。描かれ方は普通のおじさんおばさんなんだけど。ちなみにうちの母親は猫にポタと名づけていた。ポタポタと歩くからw
保険契約を見直そうとしたとき、そういえばこの保険は当時付き合っていた男から勧められたものだったことを思い出す。自分はなんとなく気が乗らなかったので別れちゃったのだけど、もしかしたらヨリを戻すキッカケになるかも?と久しぶりに会うのだったが…。
なんか意外とネタバレを踏みそうなのであまり解説しないことにするけれど、要するにこの作品は老後問題と人間関係の機微の二本立てと考えれば大きく違っていることはないと思う。それらがギャグふんだんに描かれており、コメディとして見てもおもしろかった。
で、老後問題についての答えは大してネタバレではないため言ってしまうと、自分より年下の人との人間関係を大事にしましょうってことだった。たしかにそうだ。3歳下とか5歳下とかぐらいじゃ自分と大して違わないので、十歳ぐらい下のほうがいい。あるいは、年上の人と家族ぐるみで付き合ってその子供と仲良くなるとかか?
鳴海には弟夫婦がいて子供つまり甥っ子もいるので正直そんなに心配しなくてもいいのかもしれない。がっつり介護は無理にせよ、見守りぐらいはしてくれそう。あとはこの夫婦と友好関係を保って子供の世話もしてやれば…まあ弟とは仲が悪いんだけどw
独身者の問題だけでなく、子供を作らないと決めていた共働き夫婦の問題も扱っているし、弟夫婦の人間関係についても深掘りしている。取材に基づいているんだろうけど、ほんとこの作者の深い洞察に驚かされた。
ちなみに作者は結婚しているらしいw 東村アキコが「東京タラレバ娘」を描いたようなものか。
有吉佐和子「青い壺」を勧めてきた母親にこの作品を勧め返しておいた。
絵はギャグマンガやエッセイマンガとしてよくあるレベルの画力で、時々雑な感じがしたんだけどみんな表情豊かでおもしろかった。ヒロインは澄ましていると割とかわいい。管理職の小柄な女性がなんか好みだった。見た目だけの話だけど。
人生の問題に深く踏み込み、人間の奥深さに触れられる名作なので、ぜひ読んでみてほしい。
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