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黄泉のツガイ 3巻まで
文明から隔絶された東村で「夜と昼を別つ双子」が生まれるという伝承どおりに双子が生まれる。その双子は順調に育ち、妹アサは村のしきたりによりずっと座敷牢で生活し、兄ユルはそんな彼女を気に掛けながら狩りをして暮らしていたが、あるとき村が襲撃される。伝奇少年マンガ?

世界的ヒット作「鋼の錬金術師」や農業青春もの「銀の匙」で有名な荒川弘が新しく少年マンガを連載し始めたのは時々まとめサイトの広告で見ていて知っていたのだけど、なにやらアニメ化されるらしいとのことなので先にちょっと読んでみた。よくわからなかった。

いきなりネタバレ要素があるんだけど、ちょっと読んでいけばすぐ分かることなので少しだけ解説してしまうと、主人公の青年ユルが暮らしている一見平和で善良そうな人々の住む東村にはどうやら裏の顔があった。妹だと思っていつくしんでいた女の子が実は偽物で、本物の妹を名乗る女が別に現れるのだった。

こういう風にいきなり大転回が起きて序盤から怒涛の展開になる。襲撃者から身を守るため、商人のおっさんデラに言われて青年ユルは村の守り神である「ツガイ」の「左右様」と契約する。

題にもなっている「ツガイ」とは二体で一組の妖怪みたいなやつで、「左右様」に限らず弱いやつから強いやつまでいろんなのがいる。主要登場人物はみんな大体持っている。言ってみればこの作品は「ツガイ」を持った者同士の能力バトルみたいな感じだった。ただし、ツガイはその人固有のものではなくて契約により使役する。ツガイにも人格があって意志がある。雑魚にもそのへんのツガイと契約させて戦わせる程度のものだった。

故郷を出ざるをえなくなった青年ユルは、おっさんデラの導きにより地方都市のマンションに潜伏することになるが、小さい頃に生き別れた両親のゆくえを探るため、本物の妹を名乗る女が身を寄せている影森家に乗り込んでいく。

舞台が実は現代社会で、青年ユルは情報を隔絶されて育った田舎者だというのが主人公の大きな特徴となっている。いちいち文明に驚くところがちょっとおもしろい。

でも正直あんまりおもしろくないなと思った。

細かいツッコミどころが多いのはいったん置いておくとして、3巻まで読み進んだけどまだまだ全然話が見えてこなかった。青年ユルと同じように何もわからない状態で話が進んでいく。これからどんどんいろんな秘密が明かされていくんだろうけど、特に楽しみに思えなかった。

最初に村を襲ってくる能力者の中に「ガブちゃん」っていう少女がいるんだけど、こいつがツガイの能力を使って村人たちを容赦なく殺していく。こういうヤバい女ってことならいいんだけど、こいつが絶対的な敵にならずにおどけたキャラとして描かれ続ける。たぶん東村のほうがヤバいやつらなんだってことで問題ないことになってるんだろうけど、やっぱり読んでいて納得できなかった。ちなみにこいつの能力の使い方がチェンソーマンのアキと似てたけどガブちゃんのほうがかわいかった。そのぶんエグいんだけどw

影森家の人々のふるまいを見ると、たぶんこの作品は日本風のダークファンタジー的な感じでいきたいのかもしれないけど、絵的にもキャラ的にも全然しっくりこなかった。影森家の次期当主と目されるやつが太ったマンガ家なのはどう読んでいいのか混乱した。

敵も味方もなんだかんだで和気あいあい(?)というか甘えがあるところが自分は嫌いなんだけど、少年マンガには少なからずそういう要素はあるものだしその方がウケがいいんだと思う。ただ、ダークファンタジーでそれをやっちゃうと非常にいびつな感じがする。

なんだろう。新しいものを生み出すってのはこういうものなのかもしれなくて、自分はもうそれについていけない老害になってしまったんだろうか。

二体で一組のツガイというシステムにあまり意味を見出せなかった。ちょっと自分の期待が過剰なのかもしれないけど、やっぱりこういうのを作るからには人間の精神の中にある相反する何かを象徴していてほしかった。そうじゃなくても、せめて二体いる意味がもっと欲しかった。左右様には封と解という正反対の力がそれぞれあるみたいなんだけど、いまのところ純粋な能力でしかなかった。互いに反目しあっているわけでもなかった。

結局こういう王道バトルもの少年マンガって、強くてかっこよくて独自の能力を持ったいろんなキャラが戦っていれば人気が出るんだろうなあと思った。この作品が人気あるのかどうか知らないけど、そういうのを狙って作られているんだなあというのが透けて見えた。

いったん置いておいた細かいツッコミもすると、「左右様」っていうネーミングセンスは絶望的だと思う。何百年も人々が語り継いでいる存在につける名前とは思えない。それにこんな強いツガイを誰も契約せず放置するなんてことあるんだろうか。特別な双子じゃないと契約できないの?ユルが二体両方と契約したことが異常事態だと言っている描写があるんだけど、ツガイってそもそもそういうものじゃないの?アサが契約すべきだったってこと?

結局東村の人たちはユルをどうしたかったんだろう。アサが偽物なんだったらわざわざ座敷牢に入れておく必要なかったんじゃ。本物だったとしても小さいうちから育てていれば洗脳というか自分たちの言うとおりに育てられたはずだし。その点はきっと設定があるんだろうけど、それが明かされないんじゃあ読者としてもわけわからん。

本物の妹アサがあんな切迫した状況でブラコンぶりを見せるのもこの作品世界に入っていく妨げになった。ああこういうノリでいきたいんだなと思った。その点、ユルのほうはおどけずにまじめなので心強かった。まあこいつは真剣に天然ボケする役割を担っているからなんだろうけど。

こういう少年マンガって良くも悪くも行き当たりばったりな展開になるもので、逆にそこがおもしろいまであるんだけど、自分が年をとったのかそういうものを楽しめなくなってきた。せめて芯みたいな部分はしっかりあってほしかった。

もうちょっと楽しめると思ったけど自分は思ったほど楽しめなかったので広く勧めたくはない作品ではあるけど、王道バトル少年マンガが好きな人は気に入るかもしれないのでそういう人は読んでみるといいと思う。
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