| 図南の翼 (十二国記) |  
    古代中国をモデルに独自なファンタジー世界を舞台にした人気シリーズ十二国記のうち、供の女王・珠晶が登極するまでを描いた外伝。 
 
珠晶は本編にも出てきており、祥瓊に冷たい仕打ちをする、幼い外見ながら道理のある女王として描かれている。十二歳で大人を食ったような性格をしている小生意気なガキがどうやって王になったのか、本編を見ただけでは嫌なイメージしかないのだが、素直な一面を見せながら成長していくさまが描かれる。 
 
本シリーズは毎回ひとの心の成長が描かれる。本作では、草食動物の厳しい論理と、立場の異なる人同士の理解しえない境目が描かれており、私の中ではシリーズ中一番考えさせられる作品となった。 
 
草食動物の論理とは、肉食動物から身を守るために、集団で固まることにより、どれか一匹がやられたらそれを利用して残りの個体が逃げて生き残るというものだ。人間は力を合わせて困難に対処できる生き物だが、厳しい状況に置かれたとき、人間の身にもこのような状況が生まれる。そのとき彼らはどうするのか。 
 
沢山の人々が、昇山という目的のために固まって行動する。それは最初は互いに関係なくただ人と人が固まっているだけだった。その中で自然とリーダーが生まれ、境遇や考え方の似通ったいくつかの集団となって行動を共にするようになる。それらの集団の間の力学がまた面白い。 
 
このような文学的な主題が、幼くて小生意気だが利発で素直で殊勝な少女・珠晶の耳目を通じて描かれるところが、実に小気味のいい作品となっている。 
 
なぜかこの作品はシリーズ中にあってアニメ化されていない数少ない作品だ。私はこれを映画化すべきだと思う。長さ的にもちょうど良いだろうし、本シリーズが再評価されるきっかけにもなると思う。「千と千尋の物語」よりずっと分かりやすくて良い作品だ。本作品を読んでいてなぜか私はトールキンのホビットの冒険を思い出した。ファンタジーとは元々人間ドラマなんて描くジャンルじゃないと言われればそれまでだが、本シリーズと比べるとホビットの冒険は非常につまらない作品のように思う。 
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