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IDOL×IDOL STORY! 1巻だけ
大学生女子の渚ミミはかつてマイナーなアイドルをやっていたが既に引退し、普通の会社に就職しようと思ってバイト生活を送っていた。それでもアイドルを応援するのは好きで、最近のお気に入りである七種イブキのチェキ会に参加したところ、彼女はミミのことを知っていて一緒に大型オーディションに参加しようと誘われるのだった。マンガ。

作者の得能正太郎は、ゲーム会社に就職した女の子が業界にもまれながら仲間とがんばる作品「NEW GAME!」を描いた人で、芳文社の美少女系レーベルにありがちなかわいい女の子たちがかわいいことをやる作品の中にあって、それだけではなくいろんな障害に立ち向かっていく涙あり笑いありの読み応えのあるストーリーだったので、きっと次の作品もおもしろいだろうと思って読んでみたんだけど、自分にはまったくハマらなかった。

ストーリーは伝説の女性アーティストが次の新星を求めて大型オーディションをするのでその中でヒロインたちが戦っていくという感じらしい。TBS「水曜日のダウンタウン」の中でクロちゃんがやっていた企画を思い出した。

自分はアイドルというものが好きじゃない。最近ホロライブという自称アイドルのVTuberつまりアニメ絵をかぶって配信しているグループが大好きでよく見ているんだけど、自分は彼女たちのことを「ゲームをする変な女たち」または「歌とトークがうまくて声がかわいい女たち」と思っており、アイドルとは思っていないw

ぶっちゃけアイドル好きって、かわいい女の子に熱狂的に入れ込むための方便なんじゃないかと思う。彼女たちがかわいいから好きなんじゃない、一生懸命がんばっていて輝いているから好きなんだ、と自己欺瞞しているとしか思えない。その証拠に、どんなにがんばっていてもブスには見向きもしないw それに一流のアスリートのほうががんばってると思う。

女性アイドルを女性ファンが好きになるのはまだわかる。ただ見た目がかわいいだけじゃなくて一生懸命がんばって素晴らしいパフォーマンスをして、みんなから愛されてやりたいことを次々と実現させていくのを見て、ああ自分もこういう人になりたいなあとあこがれるんだと思う。

だから自分はこの作品に出てくるアイドルの女の子たちをアイドルとしては好きになれなかった。じゃあ読むなよって話かw そこは作者の得能正太郎先生がどんだけおもしろい作品にしてくれるんだろうっていう勝手な期待があった。

というわけでここからはアイドルが嫌いな人間が突き放した目で分析していくことになるんだけど、この作品はいろんな点で魅力に欠けていると思う。

主人公を元アイドルで一度挫折した女の子にしたのはいったいどういった狙いがあったんだろう。ポテンシャルがすごいんだったら、秘められた能力で無双していく爽快さがあると思うんだけど、すでになまっているしどんな魅力があるのかもよくわからなかった。努力だけは誰にも負けないみたいなのは、もう一人の女の子である七種イブキのほうが担っている。ちなみにイブキの方は意識高い系でトガっていて仲間とのトラブルも抱えていてかわいい。

一度挫折を経験した主人公が読者の共感を呼ぶことを狙っているのだとしたら、すでに一度アイドルをやっていて最低限の成功をおさめている時点で微妙だと思う。前作のヒロインである高卒のド新人である涼風青葉とはなにからなにまで違う。

主人公がなぜアイドルをやめてしまったのか。そしてなぜ再び火がついたのか。この重要な二つの点において自分はまったく納得できなかった。

アイドルはすごいということがこの作品の前提になっているけれど、AKB48とかモーニング娘。とかおニャン子クラブとかが出てきた時点で崩れてきて、安室奈美恵の引退とともに完全に終わったと思う。

アイドルの質が落ちたのって、芸能事務所が自分たちの言うことを聞く人間をアイドルに仕立て上げるようになったからだと思う。圧倒的な原石を発掘して磨き上げても制御が効かなくなったりどこかへ逃げられてしまうリスクがあるから、自分たちがマネジメントすることでなんとかアイドルとしてやっていける程度の人間を使うようになったんじゃないだろうか。そのぐらいの人間だったら、どこかの金持ちの子女を使うことでお金を引っ張ることもできそうだし。

絵はとてもよかった。CGを思わせる美麗で現代的なタッチでかわいい女の子たちがポンポン描かれているのを見ると、マンガとして望みうる最高クラスの品質だと思う。まあ絵から匂い立つような色気とか独特の魅力とかには欠けるような感じではあるけれど、表情は豊かでよかったと思う。

というわけでこの作品は、アイドルの黄金期を知る人がその理想の姿を求めて作られた数々の虚構の一つとして想像力で補いながら楽しむにはいいと思うのだけど、そういうものに大して興味がない想像力に乏しい人間にはまったく楽しめない作品だった。アーメウ☆
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