アシガール |
足が速いことだけが取り柄のおかっぱ頭の女子高生・速川唯が、弟の発明したタイムマシン(!)を誤って起動し、戦国時代にタイムリープしてしまう。そこの若君様に一目ぼれした唯は、戦乱に巻き込まれる若君様に近づくため足軽となる。少女マンガ。
作者はテレビドラマになって大ヒットした「ごくせん」の原作者である森本梢子。この作品も数年前にNHKでテレビドラマ化された。「ごくせん」は一巻だけ読んでもういいやと思ったけど、「高台家の人々」はすごくおもしろかったし、直球のダジャレに一本取られたので読んでみた。とてもおもしろかった。
負け戦で落ちのびていく足軽隊の中に唯がまぎれこむところから話に引き込まれる。当然周りから怪しまれるのだけど、唯がおかっぱ頭で少年みたいな外見をしていたのと、たまたま似ていた若い男が行方不明になっていたのでそいつということになり、足軽(日本の戦国時代の雑兵)の装束を着ることになる。臭がるところといい、なんだかんだで受け入れられるところといい、妙にリアルで引き込まれた。
ここから先はやはりちょっとネタバレも含んでしまうので、楽しめそうならもうこの作品を読んでしまった方がいいと思う。なるべく興を削がないよう最低限この作品の魅力を伝えるべく、以下あらすじの説明を続ける。
唯はその後、なんとか足軽隊にまぎれて故国へ行くのだけど、家族ということになっている人と対面させられたらバレてしまう。どうしようか考えているうちに、母親ということになっている女性と会ってしまい、もうダメかと思ったら、なんと彼女は何も言わずに受け入れるのだった。その戦争には彼女の夫と子供が参加していたらしいのだけど、おそらくそのどちらも死んでいるだろうとのこと。
こうして農民の一家に受け入れられた唯は、現代へ戻るカギは次の満月の夜だということで、農民として戦国時代で過ごしながら、したたかにも途中偶然会って一目ぼれしたイケメンの若君様に近づこうとする。
で、なんだかんだで次の満月に現代に戻った唯だったが、改めて自分の飛んだ戦国時代のことについて聞き、なんとイケメンの若君様とその家はその後ほどなくして滅びてしまうことを知る。若君様をなんとかしたい。唯の思いは唯を再び戦国時代へと向かわせるのだった。と、歴史改変モノっぽいところも見せる。
若君様の名前が羽木九八郎忠清で、黒羽城というところを根城にしている。戦国時代に詳しい人なら誰をモデルにしてるのかわかるのかもしれないけど、自分はよくわからなかった。小垣城という城が出てくるのでこれは大垣城のことかなとなんとなく思っていた。その後、織田信長の脅威のことが出てくるので中部地方には違いないはず。
唯の行動力がすごすぎる。とにかく足が速いので、それきっかけでのし上がっていく。自分は時代考証とかあまりよく知らないけど、戦国時代の描写が細かいところまで割とリアルな感じがしてよかった。ちなみに当時の日本人は走り方が洗練されていなかったので足は遅かったと言われている。
でも、普通に考えたら現代人の唯は当時の農民なんかと比べたら圧倒的に肌がきれいなはずなので、最初の夜はともかく明るくなったらバレそう。あ、足軽装束を全身に身にまとっていたからなんとかなったのか?
男と間違われてそれを利用するというのはTSものっぽい感じがする。女の子なのに普通に男の子扱いされたり、女でしたってことになったときの周りの人々の反応なんかが楽しかった。
なんとか若君との距離を縮めようとして、寝所にて「閨チャレンジ」と称して若君に抱かれようとするも、そのたびに日和るのがウケた。大好きな若君と夜を共にしたい気持ちはあれど、いざ事に及ぼうとするとおじけづいてしまうのがかわいい。
先の「閨チャレンジ」の語感からもわかるように、ギャグもおもしろかった。農民の子供がチンチン丸出しなの見てゲラゲラ笑うところとか、行動力はあっても頭が悪いので短絡的なところとか、それで思うように事が運ばなくて何度も失敗するところとか何度も笑った。
そういうのがありつつ、唯の一途な思いと戦争の描写からシリアスな話に持っていき、恋愛も一進一退しつつ最終的に成就するという王道の展開になるのが本当にすごいと思う。
ただ、今回自分は再読で、初読のときはこれほどの名作はないと思って読んでいたのだけど、再読してみたらそれほどでもなかったのが意外だった。どっちかというとエンタメ大作って感じの路線なので、繰り返し読んで味わうというような作品ではなかったんだと思う。筋を忘れるぐらい間隔を開けていればよかったのかもしれないけど。
あまり読む人を選ばず広く楽しめる作品なので、ぜひ読んでみてほしい。
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