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絶望系 閉じられた世界
一人の少年のもとに天使と悪魔と死神と幽霊が突如現れ、その不可解な現実にもう一人の少年に助けを求めるが、珍妙な会話が繰り広げられるだけだった。ようやく解決の糸口を見つけるが、その先には不気味な姉妹の影がちらついていた。不条理系エログロナンセンス小説。

この小説は正直意味不明だが、なぜか楽しんで読めた。このレビューを書くために本作を分析したいのだが、うまくいくのか分からない。

序盤は不条理な状態から始まり、壮大でわけのわからない会話だけで進んでいく。本作のほとんどの場面は一人の少年の自室で繰り広げられる。シチュエーションコメディなのかもしれない。登場人物は絞られており、荒唐無稽だがちゃんと一人一人のキャラが決まっていて、彼らは彼らの立場や考え方で発言する。彼らの言っていることは少年たちを混乱させ、ほとんど何一つ理解できない。

まず死神。これはほぼ全裸の幼女の姿で光臨している。しかもなぜか少年に乱暴されたがっている。少年は理性で拒絶する。おそらくこれは逆手にとって幼女を乱暴したいという欲望とその抑制を描いていると思われる。

次に天使。なぜか金髪美女のユカタ姿で光臨している。名前なんてどうでもいいがどうしてもというならユカタエルと呼べばどうだと言うところで脱力して笑った。登場人物の中で比較的まともなことを言って司会進行のようなこともやるが、本質的に少年とは遠い自分の考え方を語り続ける。

展開としては幽霊がなぜ生前殺されたのか調べることで進んでいくが、私にはよく分からない結末を迎えて物語が終わってしまう。少なくとも私からすれば本作は物語を楽しむような小説ではない。「なんじゃこれは」という言葉が喉元まで来るが、もうちょっと考えてみよう。

作者の谷川流が他の作品の中では書けなかったいくつかの彼にとっての重要な要素が、本作にはある程度ナマのまま描かれていると見ることが出来ると思う。だから、谷川流が書きたいと願った要素を十分に堪能できる反面、物語としての構成が犠牲になっている。

私が個人的に感心したのは、SMの要素が含まれていることだった。しかもそれがごく内々的に秘められたものとして、そして通常の感覚を壊すものとして描かれている。これとあとほかに殺人や狂気といったテーマは、本作のような「実験作」(と少なくとも編集者が言う)でしか扱えないものだ。

正直な感想として、やはり作家個人の妄想のようなものは、自分と感覚がマッチすれば非常に味わいのあるものだけど、そうでないものは微妙あるいは嫌悪さえ抱いてしまう。殺人は私には生理的に受け入れられなかった。だからといってそれを理由にして本作を断じてしまうのは間違っていると思う。

よくまあここまで妄想の断片的なものをコメディタッチでミステリー風に一つの物語に編み上げたものだと思う。この点については、普通の個人ではなく優れた作家だからこそ出来た仕事であり、その仕上がりには感心する。

ただ一方で、こういうものは直接的にではなく間接的に描けるものなんじゃないかとも思う。たとえば殺人なんかだったら探偵モノでも扱える。読者の中には純粋なミステリーを楽しむ以外に猟奇的な事件そのものも味わっている人は私の想像以上に多いのではないかと思う。

だから本作のような露骨な妄想話は、普通の作品では描けなかったものを描いた異色作だという思いのほかに、フィクションの方向性として間違っているのではないかとの思いも私にはある。だいいち話がつまらないし反社会的だ。

それでもこういうナマの妄想に触れるのは楽しい読書経験だった。
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