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戦争の常識

鍛冶 俊樹 (文春新書)

まあまあ(10点)
2005年3月17日
ひっちぃ

軍隊についての入門書。軍隊についてアレルギーを持っていてまったく知識のない人に向けても書かれた本のようなので、内容は浅く易しい。

正直私にはちょっと物足りなかった。それは本書の目的からすれば仕方のないところだろう。ただ、それでも半分ぐらいはためになった。読みやすいのもとてもよかった。

士官の説明がされている。階級の高い若い士官が、階級の低い年配の下士官に支えられるシーンが映画なんかで出てくる。一本の直線のように階級は定められているが、そもそも士官と下士官とでは求められるものが違うのだという。おおざっぱに言えば、全体を指揮するのが士官で、現場を取り仕切るのが下士官なのだ。だから、下士官の経験が高くてもそれだけでは優秀な士官になれないし、士官は階級が高いからといって下士官の仕事もこなせるわけではないという。

大企業で言えば、大佐が部長級で、将官が役員クラス、という説明もまあ常識的だがちゃんと押さえてある。

軍服とか捕虜とかのルールについても言及している。私としてはもっと踏み込んで欲しかった。軍服というとマニアや酔狂が好むものであるという印象があるが、まったくそうではない。あれは自らを戦闘員であるとアピールし、自分はいつ攻撃されても文句は言わないからその代わり民間人は攻撃するなという覚悟を表しているのだ。

パキスタンの大統領ムシャラフがもともと軍隊の総参謀長で、クーデターを起こして政権をとったということも書かれていた。軍隊と政治の関係についても述べられている。

週刊文春の書評でも取り上げられていて、軍事評論家がこの本をレビューしていた。良書であるとホメていたが、作者が航空自衛隊出身であることを挙げた上で、陸海軍についての記述に多少の誤りが見られたと書いていた。具体的な箇所はどこだか書いていなかった。私にもあまりよく分からなかった。たぶん近現代兵器についての説明のあたりではないかと思う。私は以前、軍事史的には騎兵が戦車に進化したと何かで読んだ覚えがあったのだが、この本では騎兵が消えたとあったので少しアレっと思った。航空機の歴史はさすがに作者の専門だけあってやや詳細に説明されていてためになったが、攻撃機は有人で再利用可能で命中精度の高いミサイルと同じというこれまた何かで読んだことは出てこず、見方によって違うのかとも思った。

もうちょっとがんばればもっと良い本になったと思う。読んでいると、もっと説明を入れたかったんじゃないかと思えるような箇所がいくつもある。素人相手に話してもしょうがないことを削ったというのもあると思う。結局本当に言いたかったのはどこなのだろうか。作者が特別熱を入れようとしたところがどこだったのか、私にはわからなかった。読者に分かってもらえるように、易しく書くことを第一に考えていたのだろうが、それだったらより多くの国民に理解してもらいたいという熱い想いをにじませて欲しかった。

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