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球詠 19巻まで

マウンテンプクイチ (芳文社 まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

傑作(30点)
2026年5月17日
ひっちぃ

中学生の頃に地元のクラブで野球をやっていた武田詠深は、小さい頃に一緒に野球をしていた山崎珠姫と高校でたまたま再会する。野球部はいじめ問題で活動停止があけたあとだったが、野球をやりたい人間が集まってくる。かわいい女の子の作品がメインの雑誌で連載中のスポーツマンガ。

2020年にアニメ化されたのを見て、よくある美少女ものっぽい感じで始まったものの、割と本格的に野球をはじめたのでおもしろかった覚えがあった。いつか原作を読んでみてもいいなぐらいにしか思っていなかったんだけど、新刊が出ていたのが目に入り気になったので読んでみた。おもしろかった。

近年の野球ものとしては、たぶん寺嶋裕二「ダイヤのA」が一番ヒットしてそうなんだけど、自分はまったく見たことがない。一般小説としては、あさのあつこ「バッテリー」が累計一千万部を超えているらしいけど、もうだいぶ前の作品だし自分は2巻で脱落した。やたらプライドの高いピッチャーの中坊が周囲とぶつかる内容だった。

一番読んだのはひぐちアサ「おおきく振りかぶって」で、内気なピッチャーとそいつの実力を発揮させたいキャッチャーの二人を軸に少年たちの友情を野球で描いていておもしろかったけど、展開が遅くなって途中で飽きてしまいもう追っていなかった。あだち充作品も読んだ事があった。

この作品の特徴として、まずピッチャーの武田詠深が宇宙人タイプなことか。ピッチャーだし球を投げることに特化しているので打つほうのバッティングは大したことないんだけど、バッターボックスに入るときに「ホームラン打つぞー」と何の考えもなしにのんきに言うところがウケた。髪型はツインテールというかツーサイドアップらしいんだけど、割と身長もあって体格がしっかりしている。

それに対するキャッチャーの山崎珠姫は小柄でかわいい感じの女の子だった。中学まで強豪チームでキャッチャーをしており、球を取るのもリードするのもうまい。この二人の名前から作品のタイトルが取られているので(字が違うから球のほうは違うかも)、たぶんこの二人が主人公なんだと思う。

武田詠深のピッチャーとしての特徴は、バッターの頭に当たるんじゃないかっていう軌道からのエグい変化球が得意なことだろうか。美少女もの作品としてはなかなかに攻めた設定だった。でもそのせいでこの球を取れるキャッチャーがおらず、いままであまり活躍できなかった。そこへ捕球のうまい山崎珠姫が出てきて、なんとかしてやりたいと思うようになる。

この作品は芳文社のまんがタイムきらら系の、かわいい女の子がかわいいことをする作品ばかり載っている雑誌で連載されており、実際出てくる女の子たちはみんな萌え系ばかりだった。作中まったく説明はないのだけど、女の子が男の子と同じように高校野球に打ち込み、人によってはプロ選手になる架空の日本の埼玉を舞台にしている。審判も全員女性だった。

導入部では博多弁をしゃべる小柄でかわいい女の子の中村希が真ん中にいてギャグ要員になっていた。こいつはそれまで九州の強豪チームで活躍していて、親の仕事の都合により埼玉に引っ越してきたんだけど、よく知らないで強豪校のつもりで高校を選んだら野球部がロクに活動していなかったという残念な子だった。野球推薦でもなんでもないんだけど、強い選手を越境入学させてる強豪校を見て博多弁丸出しで文句言ったらおまえもそうだろみたいに言われてて笑った。

一方で選手としての実績はないものの大の野球好きの川口姉妹という双子がいて、姉の息吹は選手のモノマネが得意でいろんな選手のコピーができる代わりに非力で、妹の芳乃は野球の知識を活かして選手ではなくマネージャーというか監督として采配を振るうことになる。

ここまでが最初に野球をやろうと言い出した一年生メンバーなんだけど、野球部の様子を見に行ったら二年生が二人だけ残っていて細々と活動を続けていた。のちにキャプテンとなる岡田怜とそんな彼女に惹かれて入っていた藤原理沙で、どちらも先輩風を吹かさない控えめなタイプだった。

やっぱ運動部って先輩がいて厳しく指導されるのが当たり前の世界なんだけど、あさのあつこ「バッテリー」ではプライドの高い主人公をなまいきだと言って叩き潰そうとしたのに対して、逆にひぐちアサ「おおきく振りかぶって」では新設校という設定でまったく先輩がいなかったので、ちゃんと先輩がいてまともな人間関係を築いているのが新鮮だったw

あと特徴的なキャラとして剣道で全国優勝した経験のある大村白菊が入ってくるんだけど、当たれば一発が大きいという設定はあったもののそうそううまくはいかず、なかなか当たらないし守備もうまくないというところが納得できる設定でよかった。

というわけで、いじめ問題が起きる前は強豪校として知られていた新越谷高校で、ほぼまったく新しいチームとして始動した彼女たちは、野球部のOBでもある顧問の藤井杏夏のフォローもあって練習試合や公式戦の地方予選を戦っていく。

この作品のおもしろいところって、なんといってもちゃんと試合が白熱していてスピーディなことだと思う。ひぐちアサ「おおきく振りかぶって」では回が進むにつれて展開が遅くなっていて読むのをやめちゃったんだけど、この作品は巻が進んでも割とサクサク進む。いいか悪いかはともかくw

やっぱ野球っておもしろいなあと思う。試合の状況がわかりやすくて盛り上がるのがよかった。サッカーやバスケはわかりにくい。小林有吾「アオアシ」なんか現代サッカーがすごくわかりやすく描かれていて楽しめたんだけど、アイコンタクトとか選手の起用法とかいまいち納得できない点も残った。バスケは自分は井上雄彦「SLAM DUNK」とあとアニメで藤巻忠俊「黒子のバスケ」ぐらいしか見たことなかったけど、うまさの表現が通りいっぺんしかないように思えたし、黒子のほうは存在感を消すなんていう超次元的なことをやっていて説得力がなかった。

ただ、野球の硬球を投げてそれをバットで打つというのは正直あまりスポーツっぽくないなと思う。サッカーもバスケも選手は試合中走り回っているけれど、野球は打ったあととか守りで球が飛んできたときぐらいしか走らない。ゴルフよりはマシかなというぐらい。ピッチャーの比重がやたら大きいし。

人間ドラマはあんまり描かれない。まったくないわけじゃなくて、選手としての弱点克服からの成長だとか、過去のトラブルからこじれた人間関係の修復、スランプや辞めたい気持ちなんかも描かれていてよかったんだけど、ちょっと弱いかなと思った。でもあまり押しつけがましくなくてサラリと描かれているのは作品全体の雰囲気もあっていいと思う。部活動の青春感もよかった。

主人公の武田詠深がエースつまり一番手の投手ではあるんだけど、のちに途中で加入する二年生の川原光というまた違ったタイプの投手も出てきて、こいつはこいつで安定していていいピッチャーだと言われていた。主人公が突出して強いわけじゃないってところもいいと思う。まあエースってだけあって勝負強さでは一番なんだろうけど。

展開が早いので新入生が入ってきて新たな関係が生まれている。なかでも一年生捕手の渡邉詩織は、詠深の球が取りにくくて詠深の力を十分に発揮させることができなくて苦悩したり、逆にこれまで詠深とバッテリーを組んできた珠姫が嫉妬したりするのがよかった。投手にも一年生の斉藤小町という自信家でヒトクセあるキャラがいて楽しい。

キャラクターデザインは、みんな顔はかわいいけど体はしっかり鍛えられている感じがしてよかった。あからさまにムキムキってわけじゃなくて、脚とかちゃんとスポーツしてる感じに太い。もうちょっと細くても不自然には思わなかったんだろうけど、しっかりと太いのが逆に魅力的だった。

強い選手がそうそうかわいいわけないのがリアルなんだろうし、スポーツは違うけれど柔道の村岡ユウ「もういっぽん!」やサッカーの新川直司「さよなら私のクラマー」なんかにはちゃんとイカツい女の子も出てきてそれはそれで魅力的に描かれていたんだけど、この作品に関しては大体みんな普通にかわいく描かれている。スポーツものとしては違和感を感じるんだけど、これはこれでアリだなと思った。

かわいい女の子たちがわりとガチでスポーツをするという微妙に食い合わせが悪い感じではあるけれど、一生懸命がんばる女の子たちを見るのが好きならぜひ読んでみるといいと思う。

[参考]
https://houbunsha.co.jp/comics/detail.php?p=%B5%E5%B1%D3

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