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機動戦士GUNDAM SEED

サンライズ、毎日放送

最高(50点)
2005年9月24日
ひっちぃ

現実的な世界観と心理描写が特徴のもっとも有名なロボットアニメシリーズ・ガンダムの最近の作。遺伝子操作により生まれながらに優れた人間を作ることが出来るようになった人類が、遺伝子操作された優れた人間と遺伝子操作されていない普通の人間とに分かれて戦う時代に、戦火に巻き込まれた若者たちが相対し殺しあう中で理解しあい自分たちの進むべき道で戦っていく物語。

私はこの作品がテレビ初放映となった時に、第一話だけ見た。そして駄作だと判断して、これ以上見ないことにした。今となってはもはやその当時の詳しい感想を覚えていないのだが、あまりにあざとい脚本と、ファーストガンダムらに類似した展開に、だいぶ呆れていたのだと思う。中立コロニーにある高い技術力を持った企業の工場で高い性能の兵器が作られていて、それを奪取しようと敵が襲い掛かってきて、たまたま居合わせた少年少女たちが巻き込まれる。成り行きでそのまま新造戦艦の乗務員になる。筋だけ書けばファーストガンダムと同じだ。それに加えて本作では、男装で感情的な美少女が出てきて意味不明の理由で泣き出す、たまたま強襲場面で主人公が幼馴染の少年兵と遭遇して戦慄する、早くも襲う側からの視点が入る、と見苦しい要素満載でいて、第一話では何も分からないまま終わってしまう。要するに私にとってこの作品は『つかみ』が悪すぎた。

いま、ようやく思い立って、インターネット上に違法に流れているファンサブと呼ばれる動画ファイル、海外のアニメファンたちが日本で入手した映像に独自の字幕を付けたもの、を手に入れてシリーズ全てを見終えたところである。結論からいうと、私の中でこの作品は私が見たすべてのガンダムシリーズの中で一番よく出来ているのではないかと思った。

まず本作について語る前に私自身の立ち位置について述べておこう。私はファーストガンダムおよびその続編であるZガンダムが一番好きだといういわゆるオールドタイプのガンダムファンである。ただしZZの軽いノリも好きだし、VやXやWや∀などにもそれぞれいいところがあると考える、わりと寛容なファンのつもりだ。

ガンダムシリーズで一番大きなキーワードと言えば『ニュータイプ』だ。原作者の富野由悠季によれば、当時SFが流行っていたのでそれっぽい概念を作れといわれてしょうがなく作ったのがこの言葉なのだそうだが、この概念はちょっと分かりにくかった。宇宙で生まれた子供の中から、地球に縛られない感覚を持った者が生まれ、そんな彼らがニュータイプと呼ばれた、という設定だ。しかしニュータイプはなぜか戦闘にも強いだとか、新しい感覚を感じている主人公たちの描写が意味不明のサイキックなものになっていたりと、視聴者は結構置いていかれていたと思う。私はニュータイプという概念自体は非常に面白いと思っているし、非常にリアリティのある設定のように思う。たとえば小学生の頃から携帯電話を持つようになった現代の子供たちは、既に私のような世代の人間とは異なる感覚を持っているだろうから、世界観だとか人と人との付き合い方の感覚から違ってきていると思う。しかしだからこそなかなか理解しにくい仕組みとなっているのだ。

本作ではニュータイプという概念をほとんど捨て去ってしまった。代わりに、遺伝子的な優位という特別な人間としてのニュータイプと、戦闘力としてのニュータイプである高度な空間認識能力と、クローン対被クローン(正確には違うけど)での互いに存在を感知しあう力としてのニュータイプに分解してしまった。特にこの中で遺伝子操作された人間、作中で『コーディネーター』と呼ばれる存在は、私たちに色々なことを考えさせてくれる。まあ使い古されたテーマではあるし、作中では消化不良なところが露呈するが、多くの人々に向けて送り出される作品にうまいこと入れたなというのが私の感想である。たとえば身近に親しい友人として、遺伝子操作されているがゆえに頭がよく運動能力に優れ容姿まで端麗な人間が存在していたら、そしてそんな人間と異性を取り合うことになったとしたらどう思うだろうか、ということを目の前に突きつけてくる。

第一話で男装の美少女が出てきたのに加え、本作では国家的アイドルのピンク髪の少女が出てくる。この二人はかなりあざといキャラだ。この二人のおかげで本作は完全なオタクアニメになったと言っていいぐらいだ。この二人の少女が嫌いになったら、まず本作を好きになれないだろう。あまりに不自然なキャラたちなのだが、見方によっては楽しみようもある。少女の魅力的な部分を凝縮しすぎているだけなのだ。こういう一人の少女がいると考えるのではなく、少女のエッセンスが発露していると考えれば良い。少なくとも私はこの二人のキャラクターに対して人格を認めうることが出来ないが、だからといって楽しめないわけではない。

一方、女性の艦長と副艦長というのはうまくいっていたと思う。女性艦長ラミュー・ラミアスは、声優に三石琴乃という、いやがうえにもエヴァンゲリオンとつなげようというあざとさを持った配役がされているが、性格設定は独特で良い。副艦長のナタル・バジルールのほうも今までにないタイプで、二人とも強さと弱さを持った魅力的なキャラクター(人格)を持っている。

さて主人公は、キラ・ヤマトというコーディネーターながらナチュラル(⇔コーディネーター)の味方をする少年だ。自分の友人たちを守りたい、しかしそのためにかつての幼馴染と戦わざるをえない、それに友人の中から自分を非難するものが現れてしまい、そんなこんなでボロボロになってしまう。あらためて振り返ってみると、割とつかみ所のないキャラクターだった。基本的におとなしくて内に秘めるタイプの人格だったからだろう。悪くないキャラだと思うが、主人公には向いていないように思う。感情移入できないし。

ムー・ラ・フラガはかつてのスレッガーを思わせる大人の男キャラだが、よりモダンな人格付けとなっている。楽観主義者だが真面目な一面を持ついい男だ。オタク臭さがないところが一番ポイント高い。ちょっと完璧に近いのが難点と言えば難点か。

敵役も良くも悪くも駒を揃えてある。バルドフェルドはファンたちが語るごとくまさにファーストガンダムでのランバ・ラルだ。四人のザフト軍エリート兵の若者たちは誰も性格付けが丁寧でよく出来ている。

だんだん語ることに飽きてきたのでまとめに入る。後日また付け足すことになるだろう。

キャラクターの絵のデザインは、デザイン協力としていのまたむつみの名前があり、なるほどなーと膝を打った。この人の描くヒロイン像の顔はみんな同じに見えたが、本作ではそのズバリのキャラはいなくて、みんなちゃんと描き分けられている。ちょっと顔が似てたりするけど。あと脇役は違う人がデザインしたんだろうな。分業してるように思った。

音楽は全体的にいい感じだった。ちょっと古さを感じたと思ったら微妙にハズしてあって、一流の仕事だと思う。オープニングとエンディングのテーマもどれも悪くなかった。特にSee-Sawという歌手の歌うエンディングテーマは楽曲と歌い方が素晴らしい。

本作の前には、テレビシリーズとして∀ガンダムがあった。私は∀ガンダムがとても好きで高い評価をしていて、特に序盤の風と共に去りぬの時代を思わせるアメリカをモデルにした世界観はとても魅力的だった。しかし終盤になるにつれてストーリーが破綻してきてガッカリさせられた。その点このSEEDは、終盤ちょっと強引な展開ではあるが、ちゃんと物語を盛り上げて幕を引いてくれて、鑑賞後の印象は全然良かった。製作者が言いたいことは大体伝わった。結局放置されたテーマもあるが、それは次のSEED Destinyに引き継がれた。

核兵器について語られているところには非常に好感を持った。核攻撃の部隊がワシントンを母艦としていて、現実世界とのアナロジーをつけさせている。この作品を見たアメリカ人はどう感じているのだろうか。海外のBBSを見れば分かるのだろうが、膨大な英語を読むのは時間が掛かるので、どこかにまとめてくれていないのだろうか。ともかく、現実の広島・長崎に対する日本人の答えを、この作品は代表してくれているように思う。

新しいガンダムシリーズが出てくると、こんなのはガンダムじゃない!というファンの声が起こるのはいつものこととなっている。このSEEDについても議論が活発に行われたようだ。私は本作を一番よく出来たガンダムシリーズだと位置づける。その最大の理由は、ちゃんとガンダムの土台を引き継いでいるからだ。過去の蓄積なしには生まれなかった作品だ。そしてちゃんと独自の要素を追加して、しっかり新たなファンも獲得している。商業的な成功の事実以上に、本作は成功している。まだ未見だが、外伝もしっかり管理されて人気を博しているらしい。本シリーズは、かつてファンだった人たちが、大切に育てている。

という事実を踏まえると、原作者である富野由悠季が新作に否定的なのは非常に残念なことだ。そう考える私は、ガンダム世代に縛られた視野の狭い人間なのだろうか。

[参考]
http://ja.wikipedia.org/wiki/
%E6%A9%9F%E5%8B%95%E6%88%A6%E5%A
3%AB%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%80%
E3%83%A0SEED

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