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月の影 影の海 (十二国記)

小野不由美

最高(50点)
2006年8月31日
ひっちぃ

周りに気を使い、当たり障りのないように生きてきた女子高生・中嶋陽子が、あるとき異世界に引っ張り込まれ、過酷な現実と向き合い心の成長を遂げていく物語。三国志や水滸伝や封神演技などの古代中国のファンタジー世界を舞台にした人気シリーズの一作目。

アニメ化されNHKで放映され、日本だけでなくアメリカや中国でもヒットしたらしい。私はまずアニメを見てから感動し、原作が気になって読んでみた。なのでアニメとの比較を中心に論じる。

アニメでは現代日本から主人公を含めた高校生三人が異世界に飛ばされるが、原作である本書では主人公ただ一人である。アニメは内省的なところまでよく表現できていたと思うが、やはり一人ぼっちと三人とでは大きな違いがある。会話を成立させないとアニメとして難しいという思惑があったのかもしれないが、杉本がらみのエピソードはどれも空ろで余計なものとしか思えない。原作では余計な人間が出てこず、主人公の思考にどっぷり浸ることができて良い。

裏切られ裏切られるうちに、主人公の心がすさんでいくが、人は多かれ少なかれ互いに利用しあって生きている、その中に好意だって悪意だって見出せる、自分は自分で好きなようにやればいい、信じたいなら信じればいいじゃないか、と悟っていく展開に改めて胸が熱くなった。

ネタバレを避けるため敢えてぼかすが、アニメでの本章のクライマックスが原作に見当たらなかった。アニメを見ていて狙いすぎだなとは思ったが、アニメ化にあたって劇場的なシーンとして付け加えたのは良かったと思う。塙王がオウムとして頻繁に出てくるのも、原作ではほんの少しなのだが、映像的にうまく演出していた。

地味ながら、楽俊が主人公といったん距離を置いてから仲直りするシーンも、原作ではあっさりと描かれていたが、アニメではよく膨らませていた。

なんだかアニメ版について語っているようになってしまったが、アニメとの比較で総論を述べると、アニメは原作を十分に表現しつつ、まあまあ良い脚色をしていると思う。特に内省的な部分が、青猿の表現といい、かなりいい感じに表現されていたことが分かった。原作を読んで改めて分かったことはそんなに多くは無かった。

よく世界三大ファンタジーと言われる作品があり、それは「指輪物語」「ゲド戦記」「ナルニア国物語」なのだが、私はこの「十二国記」こそ入れるべきだと思う。欧米人にもこの新たな東洋のファンタジーが広がって欲しい。

ちなみにスラッシュドットというコミュニティである人が、世界三大ファンタジーとは「資本論」「毛沢東語録」「共産党宣言」のことだと書いていて思わず吹いた。

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