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ランド・オブ・ザ・デッド

ジョージ・A・ロメロ

まあまあ(10点)
2006年9月24日
芋愚

 ゾンビ界のオーソリティであるロメロの新作。
彼の代表作であるゾンビ(ドーン・オブ・ザ・デッド)が近年に
若い監督によってリメイクされたことが何か影響しているのかもしれない。

 感想は、イマイチ。

 新しい試みをしようとしているのは分かった。
本作では、「もし、ゾンビに知性が芽生えたら・・・」という仮説が
打ち立てられている。
 彼の描くゾンビは、他のどの作品よりも深くその存在についての考証が
試みられてきた。
 ドーン・オブ・ザ・デッドでは、ゾンビの行動様式には生前の習慣が影響を
及ぼしているということが巧く語られていた。
無人のショッピングモールにわらわらと集まるゾンビの姿や、
主人公の一人がゾンビ化して仲間の場所に行こうとして
アジトの場所がばれてしまう・・・など。
 死霊のえじき(ディ・オブ・ザ・デッド)では、少々マッドな科学者が
ゾンビの生態について研究していた。
電話機を与えると受話器を手にとって耳に当てる・・・や、
元軍人のゾンビが、自分より階級が上の軍人(人間)に向かって敬礼するなど。
 本作では他のゾンビよりもちょっぴり賢いゾンビが登場し、
咆哮などにより他のゾンビを指揮する姿が描かれていた。

 面白かったのは、
ゾンビという脅威から隔離された空間を作り出した人間が特権階級を形成していた
という設定。
高い塀に囲われた空間の中で、権威の象徴のような高層マンションがあり、
そこには特権的な立場で贅沢三昧する人たちが住み、
周囲に立ち並ぶバラックには負け組が生活し、
特権階級を目指そうとする野心家たちが、特権階級たちの手足となって
ゾンビが溢れる外界へ物資の調達などの危険な仕事をして稼ごうとする。
 野心家がいくら頑張っても既存の特権階級と入れ替わることはできず、
ただただ利用され尽くされるというところが、風刺を感じさせる。
「マンションは満室で君の入る部屋はまだないんだよ。」
ベトナム戦争時代のロメロが、必死で現代を描こうとしているのが
ヒシヒシと伝わった。

 もう一つ感じたのは、
ゾンビ同窓会!って感じ。
昔からのゾンビファンが小躍りするような、マニアックすぎなキャスティング。
 ドーン・オブ・ザ・デッドは、ホラー界3大スターが一同に会した作品だった。
監督のジョージ・A・ロメロ、脚本演出などにサスペリアで有名なダリオ・アルジェント、
特殊メイクにトム・サビーニ。

 サビーニは、ドーン・オブ・ザ・デッドにチョイ役者として出演していた。
クライマックスで主人公達に襲い掛かる強盗団の一員として。
自身の監督作品も多く、ゾンビ界のヒッチコック的な扱いをされることがある。
そのサビーニ御大が、今作でも元気に役者として登場していた。
ゾンビ通の末席に位置する私でも、突然のサビーニ登場で大喜びだった。
「キター!!」っていう感じだった。

 それと、今作のヒロインに、アーシア・アルジェントが起用されている。
苗字から察するとおり、、ダリオの娘である。
父親の映画では、レイプされたり殺されたりとヒドイ役ばかりしてきたが、
本作ではゾンビと柵の中で戦うショーに出演させられた娼婦役!
キチガイ親父とセクシー娘というところに、多くのホラーファンは
魅了されているのだが、うまく利用されてしまった。

 ホラーオタクが喜ぶような要素がムンムンだった。
だが、悪く言えば、古きよき過去にすがりつくような楽しさでもあった。
ロメロが提唱した新しいゾンビの解釈ってのがもっと衝撃的であれば、
そこに引き寄せられたのだろうが、、
ちょっと弱かった。。
残念ながら、古きよきゾンビ映画を懐古させられた・・・というのが
印象だった。

 まぁ、それなりに楽しめたのではあるが、
ゾンビファン以外には、あまり勧められない。

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