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少女革命ウテナ テレビアニメ版

監督:幾原邦彦

傑作(30点)
2007年4月29日
ひっちぃ

幼い頃に不幸な目に会い王子のような人物に慰められた少女ウテナは、王子様を求める余り自分が王子のなりをして男の子のように振舞うようになり、女生徒たちに大人気の学園生活を送っていた。ところがあるとき姫宮アンシーという女生徒を助けたことがきっかけとなり、「世界の果て」の指示で動く生徒会役員メンバーから次々と決闘を申し込まれていき、永遠を求める謎に巻き込まれる。

ヒロイン数人による戦隊モノの作品として世界的に大人気の「美少女戦士セーラームーン」のアニメのメインスタッフだった幾原邦彦という人が、少女漫画家のさいとうちほとともに少数精鋭でスタッフを集めて製作したのがこの作品らしい(Wikipediaより)。

主人公の天上ウテナがかっこよすぎ。ピンクの長い髪をしたかわいい女子学生なのだが、男ものの制服を身につけて男まさりのことばかりしている。自分のことを「僕」と呼んでいるが、ベタな僕っ子じゃなく独特の強くて誇り高い性格をしている。

決闘という分かりやすい図式のおかげで一話一話がきれいにまとまっている。1シーズン目の12+1話までは、生徒会役員メンバーたちそれぞれの決闘にいたるまでの物語がどれもよく出来ていて引き込まれる。想う人をその手にするため、奇跡を信じて裏切られた過去の自分を否定するため、主人公の少女ウテナに自分の物語を受け入れさせるため。14〜24話では生徒会役員メンバーの周辺の生徒たちが、御影草時という若き天才に深層心理を突かれて決闘に追い立てられていく。25〜32話で最後の黒幕に導かれた人物たちが決闘を行い、33話の総集編+αで転換点を向かえ、34〜39話で決闘とはなんだったのかが説明される。

決闘シーンは本当に絵になっている。決闘者は大体西洋風の剣を持っているが、剣道部主将の西園寺と生徒会長の桐生冬芽は日本刀で戦う。この日本刀がめちゃめちゃかっこいい。決闘の開始時と終了時に鳴る鐘の音、戦闘中の変わったBGM、戦闘中に交わされる言葉、どれもとても印象的だ。展開が進むにつれて演出過剰で空虚になっていくけど。

特に20話手前ぐらいまでの脚本が素晴らしいが、この作品を良いものにしている理由の多くは演出にある。前衛な演出がアニメに合った形で使われており、突飛で変わった映像の数々に引き込まれる。これは文章では伝わりにくいので実際に観てもらうしかないだろう。実のところ脚本の中で本当に優れたものはそんなにないと思うのだが、決闘でなんだかんだいううちにきれいにまとめてしまうところが大きい。

決闘中に使われる音楽は、怪しい神話や形而上学の言葉の数々が使われる詞が、少年少女合唱団みたいなのでテクノ風のロックの曲をバックに歌われ、一度聞いたら耳に残ってしまうほど強烈な印象を植え付けられる。私はついついCDまで買ってしまった。

七実まわりのギャグ100%の脚本はどれもとても素晴らしいが、あまりにベタな話がこっけいなまでに丁寧に演出されているからこそ笑いを誘われる。この作品は演出家が一番エラいと思う。ただ、シリーズ後半になって演出が暴走してだんだん虚ろになってくるのが問題だ。

今回私は初めて全話を観た。1997年4月から放映された作品なのでかれこれ十年前になる。最初にリアルタイムで見たときは、三十数話でつまらなくなって観るのをやめた。今回改めて観なおしてみても、十数話あたりで正直飽きてしまったのだが、全部観てみてようやくこの作品が何を言いたいのかがなんとなく分かった。

以下は私がこの作品をかなり想像で補った上での解釈だ。

題名にある「少女革命」とは、少女の夢の世界をひっくり返すことだ。少女にとって一番の夢とは、白馬に乗った王子様が迎えに来て幸せな日々を送ることで、主人公の少女ウテナもそんな少女の一人だった。これ以外にも人はいろんな夢を持つ。好きな人を手に入れる夢。決闘とはそんな夢と夢を戦わせてどちらが強いのか白黒はっきりさせることだ。ウテナが最強なのは、白馬の王子という夢が最も原始的で強力だったからだろう。

一方かつて王子だった男がいた。彼は王子様幻想の中で苦しんだ。その苦しみを取り除くために「薔薇の花嫁」が彼を王子でなくさせた。ところが現実に生きるようになった彼はそこでも悩み、逆に幻想の力こそ自分を導いてくれるものなのではないかと考えるようになる。そこで彼は黒幕として決闘ゲームを主催し、強い幻想を持つ者を捜し求め、自分を打ち負かしてくれるよう仕向ける。だからこそ彼はウテナとの最後の戦いで卑怯な真似をして、ウテナが現実に勝てるかどうかを試した。

一番解釈が難しいのが「薔薇の花嫁」(以下花嫁)だ。私はこれを世界と考えた。物語開始時の花嫁の所持者・西園寺は、花嫁を恋人だと考えた。花嫁は西園寺の恋人として振舞った。西園寺を決闘で倒して花嫁を手に入れたウテナは、花嫁を友達だと考えた。花嫁はウテナの友達として振舞った。他人の投影する幻想のとおりに動く花嫁はまさしく世界だ。もっとも強い幻想を持ったものが世界のありようを与える。

ウテナが最初に敗れたとき、ウテナの中で「自分が王子」という幻想が「女の子は王女」という幻想に負けてしまった。負けて打ちひしがれるウテナは本作を通じて一番魅力的だ。しかしすぐに自分らしさ(?)を取り戻し、決闘で勝利して花嫁(世界)を自分の幻想の支配下に置きなおした。ところが花嫁にとってウテナも西園寺らも自分に幻想を押し付けてくる存在でしかなかった。

真実の花嫁がどんなことを考えているかはこの作品では語られない。ただ禁忌を冒している描写だけがある。本当の花嫁の姿はこの世界の幻想(物語)から逸脱した存在だという暗示だろう。最後、花嫁がウテナに心を開いた(?)理由は、花嫁がウテナの幻想を裏切っても、それでも変わらずウテナが花嫁のことを(ウテナの幻想とかかわりなく)気遣ったからだろう。

ウテナは不道徳(幻想から逸脱したこと)な花嫁を責めようとする。しかしウテナも禁忌をやぶっている。そこをウテナは突かれるが、それでも禁忌を破った花嫁と自分を両方責めようとする。それが幻想・世界・殻に縛られた人の姿をあらわしている。

というような解釈をすると、製作者にとっては幻想こそ革命しなければならないものだということになる。ただ西園寺は、桐生冬芽に一度手ひどく裏切られているにも関わらず、再び彼との友達という幻想に戻る。戻ったというか新たな関係を結んだということだろう。西園寺以外には脇役ぐらいしか似たようなケースが描写されないので、製作者はあまりこのことを重視していないようである。

この作品のモチーフの一つ「永遠なるもの」とは昔の思い(思い込み)であり、そんな思い込みや型にはまった幻想(恋人や友情や禁忌など)に固執しすぎるのはよくないというのがテーマであるように思う。

ここから批判に移る。

まず薔薇の花嫁こと姫宮アンシーが異様すぎる。物語をぶちこわすほど意味不明な振る舞いをするので、観ていて常にイライラさせられた。構成上彼女は物語(幻想)をぶちこわす役割(魔女)を持っているのだから当然といえば当然なのだが、彼女の役割が分かる三十数話までのあいだ、意味不明な動きをするキャラにイライラさせられるのは納得がいかない。少なくとも12話までの展開は自分らしさを失わない物語のはずだ。24話までは「薔薇の花嫁に死を!」が決闘の枕詞に使われているが、決闘者は脇役の数々であり姫宮アンシーとはほとんど関わりがない。

その14〜24話の御影草時編が一番よく分からない。記号を駆使すれば解釈できるのかもしれないが、二度観て理解できないストーリーに何の意味があるのだろうか。少なくとも私にとっては意味を見出せなかった。訳の分からない記号がバラまかれるだけ。結局彼も自分の幻想の中の女性に裏切られた一人というだけのことなのだろうか。ただ、幻オチはとても良かった。幻想の持つ寂寥感がいい。

25話以降は黒幕以下の男がやたら無意味に裸体をさらすところがうっとうしい。やりすぎ。

なにやら本作では友達幻想とか恋人幻想とかが大部分否定されていて、真実の愛とか思いやりみたいなものが存在するかのように描かれているが、そんなものがあると製作者が考えているのであれば青いなと思う。私は人間とは幻想の中でしか生きられないものだと思っている。

黒幕が結局決闘ゲームで何をしたかったのかについて、私は自分で勝手に解釈してそれを幻想と現実の止揚のようなものと見た。しかし黒幕の言動から考えると、彼は幻想の無力さを自分に言い聞かせているだけに思える。ウテナの幻想の力によって生み出された王子の剣が扉(現実?)に対して無力だったことを当たり前のように確認している。一方で最後に扉を開けるなと叫ぶ。一体何をしたいのだろうか。最終話で彼が見捨てられるところからすると、彼は主体ではないのだろう。こうして色々と考えてはみるが、結局よく分からない。

本作は色んな意味で優れたところの多い作品なのだが、私は一回目に観たときは途中で投げ出し、二回目の今回も途中で半ば義務感に駆られて見たこともあり、正直まずこの作品自体そんなに面白い作品ではないと思う。難解さよりもむしろ面白くないことがこの作品の最大の欠点だ。よく比較される一世を風靡した作品の新世紀エヴァンゲリオンは難解でくだらないところもあったがとても面白かった。

しみじみ思うのは、やはり物語の力は強いのだということ。この作品のようなアンチ物語は歴史に埋もれてしまうだろう。

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