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フォーチュン・クエスト 主に1巻

深沢美潮 (角川スニーカー文庫)

傑作(30点)
2007年10月16日
ひっちぃ

現代風のテイストを加えた独自のファンタジー世界を舞台に、駆け出しの冒険者たちの最初はなんでもないようなしみったれた導入からいつのまにか大冒険になってしまう様子を、比較的平凡な女の子の視点で描いた人気シリーズの一作目。

たぶん私が今で言うライトノベルを初めて読んだ作品がこれだと思う。この本の作者があとがきで書いているが、私の世代はまず最初にコンピュータRPGのドラゴンクエストがあって、そこからファンタジー世界に興味を持つようになった。

そこから大きく二つに分かれると思う。同じコンピュータRPGでファイナルファンタジーのほうが好きになった人は、英雄たちのかっこいい物語を求めてロードス島戦記なんかを読むようになった。一方ドラクエのなりきり感が好きな人は、まあ普段はゲーム以外ではそんなに日常から逸脱しようとは思わない人がほとんどだろうけど、一部はこの妙に所帯じみたファンタジー小説に流れたんじゃないかなぁ。

このシリーズの一番の魅力は、庶民的な視点でファンタジー世界が描かれていることだろう。いきなり金欠でその日の生活に困る様子が描かれる。そしてしょぼいお使いを頼まれて一応冒険の旅に出る。そのうちなんだかんだで大冒険になってしまう。でも身の丈を超えるようなことは起きない。偶然や周りの人の助けで乗り越えていく。

多分この本を手に取る人は表紙を見てためらうと思う。私もそうだった。主人公の女の子が奔走している一コマがアニメタッチの絵で描かれている。オタクっぽさがプンプンする。

だが中身は少なくとも美少女のニオイはしない。作者がゲーム好きの女性で、多分自分の分身として主人公を描いている。一人称だし。美人でもなんでもない平凡でおっちょこちょいであわてんぼうなどこにでもいるような女性(ここまで感情豊かな人は限られるけど)。作中には美人や美少女も出てくるが、終始下から目線で羨んだり妬んだりしている。少なくとも最初のシリーズの8巻では確か主人公の恋愛っぽいものは描かれていない。パーティにいる他の若い男二人とは普通に友達みたいだし。

おっとこのペースで書いていると長くなりそうなので今回は1巻限定で話をして続きは次巻以降に回す。

1巻は、温泉で有名な村に来てみたらなぜか温泉が出なくなっていて、色々ななりゆきがあって山の洞窟を探検することになり、最後に謎を解いて戦ってなんだかんだでめでたしめでたしという話だ。結構内容を忘れていた。

読み返してみて驚いたのは、思っていたよりよく出来ていたことだった。思い出補正がだいぶ掛かってるんじゃないか、再読したらガッカリするんじゃないかと思っていたのだが、完成度が高くてびっくりした。文章が平易で読みやすく展開が速くて楽しめる。最後の方のオチも見事。ちょっと強引というか運命的な設定もあるのだけど(キットンとか)、あっさり描かれているのでそんなに気にならない。

登場人物が比較的多いのにみんな個性的だ。あとがきで作者が前から夢に出てきていたキャラばかりだと言っているだけのことがある。キャラ造形にオタクっぽい安易さがほとんどないと思う。

いま思うと、この作品は売り方を誤ったんじゃないかなと思う。うまくやればドラクエ級のメジャーさを獲得できたんじゃないだろうか。一番の誤りはイラストレーターの人選だったと思う。迎夏生という人の絵はいいと思うのだけど、メジャーな分野を狙うには向いていなかったんじゃないかなあ。

二番目の誤りは、表紙で目立っている主人公の女の子とエルフの幼女が一般人には拒否反応を招いてしまうだろうことか。主人公を一人称ではなくして、エルフの幼女もあからさまなひらがな言葉を抑えればよかったんじゃないだろうか。

あぁ、でも主人公の女の子の一人称がなくなってしまうとこの作品の魅力を否定することになってしまうかな?巻が進むにつれて、私としては主人公の女の子の性格にちょっとイヤな感じがするようになるのだが、その点も含めてこの作品の大きな魅力となっていると思うので、それを否定するつもりはまったくない。

ともかく私はおおげさながらハリーポッターになるかならないかというぐらい大きな可能性を秘めていたんじゃないかと今回読んでみて思った。

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